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2024/04/17

COLUMN

道具鍛冶研究者・加藤淳さんの「研究室から街へ、世界へ」

~研究者漫画 AIST RESEARCHER MANGA~ #科学技術週間

取材・構成 産総研広報 、漫画 篠原 彬

    これは科学解説漫画ではない。研究者の人生の物語だ。

    すべての発明は、研究者たちが日夜手を動かし、数多の壁を乗り越えた先に生まれる。
    そばで研究者を支える職員として、成果だけではなく研究という「人の営み」を伝えたいと思いました。
    同じ研究所の職員だからこそ聞ける、純度100%の“研究にかける想い”。
    取材をもとに構成された、ノンフィクションの漫画を産総研広報・完全内製でお届けします。

     

    漫画1P
    漫画2P
    漫画3P
    漫画4P
    漫画5P
    漫画6P
    漫画7P
    漫画8P

     加藤さん・取材こぼれ話

    In the Wild:整理された研究室も、課題だらけの現実も

    野生のコミュニティの中で人と課題に向き合う

     現場を大切にする道具鍛冶研究者 加藤さん。最近は“In the Wild”が活動のキーワードだそう。整理された無菌環境のような研究室だけではなく、複雑で多様な人がそれぞれのやり方でツールを使う、そんな現実のコミュニティでの研究も進めています。

     「一度現場にツールを提供すると『わたしの創作に使ってたこの機能、なんで勝手に変えちゃったの!?』なんて怒られたりすることもあります」

     道具を作る側と使う側には緊張感もあり、いつ結果が出せるかもわからない。そんなwildな環境ならではの大変なこともたくさんあるんだそう。それでも人やコミュニティに深く入りこんで研究を続ける原動力は「技術は力で、責任を伴う」そんな価値観から生み出されています。

    アニメ監督の絵コンテづくりを支えるアプリ Griffith

     漫画では紹介しきれなかった“In the Wild”な研究成果のひとつが、アーチ株式会社で兼業しながら進めたプロジェクト「Griffith*1」。学生時代の縁で出会ったあるアニメ監督の明確な課題と厳しい要求に応えて研究開発が続けられているアプリです。研究室の外に出て、一人のクリエイターである監督と密に人間関係を作りながら、お互いに作りたいもののイメージと欲しい機能をすり合わせてきました。

     「『そんなんじゃ現場で使い物にならないよ』と厳しい言葉をかけられることもありますが、プロの人たちの創造性は見ていてすごく面白いです」創作する“人”が好きで、その人らしいこだわりを垣間見るとすごく嬉しくなるんだとか。「結局、人に興味があるんですよね」と、加藤さんははにかみます。

    作業風景
    Griffith:アニメ制作で「設計図」の役割を果たすと言われる絵コンテのための、Webベースの制作・活用支援ツール。

    人や文化を学ぶのは、技術の影響の大きさを知っているから

     加藤さんは研究を進める時に、人や文化を学ぶ姿勢を大切にしています。例えば、アニメーション制作は日本の商業アニメのスタジオと海外の大手スタジオでは作り方が全く違うので、クリエーターコミュニティの文化が異なり、それを支えるツールに必要な技術も異なります。漫画を例にとると、長年原稿用紙とペンを使ったアナログ作画を続けてきた漫画家が、技術の進展でデジタル化が進み制作環境が変わったことを理由のひとつに連載を終了した話もニュースになりました。

     「人や文化の在り方を、テクノロジーは時に強引に変えてしまう。だからこそ、研究者は自分の技術の影響の大きさを自覚しなければならないし、文化を学ぶ姿勢が重要なんです」と、現実世界“In the Wild”で人に関わる研究を進める姿勢を語ります。

     TextAlive*2は「産総研の持つ音楽情報解析の技術を応用すれば、みんなに喜んでもらえるサービスが作れるかも!」という思いから生まれた、いわば技術ドリブンな成果。Griffithは、一人のクリエイターと向き合い、アニメ制作のコミュニティに深く入りこみながら生まれた、課題ドリブンな成果。そのどちらもに腰を据えて取り組めるのが、産総研ならではの働き方です。

     “In the Wild”、研究室と現実社会を行き来しながら研究する加藤さんのような研究者と一緒に働いてみませんか?

    <もっと知りたい方へ>

     Q 産総研にはどんな採用があるんだろう?:産総研 採用情報

     Q 加藤さんが産総研で働く理由はなんだろう?:#科学技術週間 特設サイト:なんであなたは研究者に?ーークリエイターの“創造”に寄り添うために


    *1: アニメの設計図「絵コンテ」制作をデジタル化するGriffith:Griffith | Arch Research (archinc.jp)
    →手軽にたくさんの絵(コマ)をスケッチでき、大量のコマを俯瞰したり他の人と共有したりできる、アニメ監督向け制作支援WEBアプリケーション。Griffithについての論文は国際会議 ACM CHI 2024にも採択された。 [参照元に戻る]
    *2: リリックビデオ制作支援サービス TextAlive:TextAlive | リリックビデオを楽しもう! | textalive.jp
    →楽曲中の歌声に合わせて歌詞をアニメーションさせる「リリックビデオ」を、ブラウザ上で誰でも簡単に制作できるWebサービス。 [参照元に戻る]

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