第5期 産総研の経営⽅針について
第5期中長期目標に掲げられたミッションである「社会課題解決と産業競争力強化」は、産総研が将来にわたって実現すべき目標でもある。産総研がこのミッションを達成できる存在であり続けるためには、産総研の持つイノベーション創出機能を大幅に強化し、日本全体のイノベーション・エコシステムの中核としての役割を果たすことが不可欠である。この将来像を踏まえ、下記の通り、「第5期 産総研の経営方針」を定める。
産総研の長期展望を見据えた第5期経営方針の位置づけ
- 産総研が将来にわたって日本全体のイノベーション・エコシステムの中核であり続けるためには、産総研の価値を最大化する必要がある。価値の最大化にあたっては、民間企業との共同研究等においてコスト積み上げベースから脱却し、提供価値ベースへ移行することにより、産総研への投資額を拡大させるとともに、次の研究基盤・人的資源への戦略的投資が可能となる好循環を形成する。
- その結果、2030年度以降においては、社会実装加速化のための外部法人を含めた「産総研グループ」の事業規模は、現在の事業規模(約1,000億円)の2倍となる2,000億円規模を目指し、このとき民間からの投資額は600〜700億円規模を目指す(民間資金、公的資金、運営費交付金の比率を1:1:1に近づけていく)。
- すなわち、第7期以降(2030年度〜)は、「産総研が中核となるナショナル・イノベーション・エコシステムの進化」期と位置付け、「社会から信頼され続ける産総研」をスローガンに、「産総研を中核とする強者連合モデルが日本の産業発展の要」、「多様な連合体から創出した新産業が地域経済を牽引」を目指す。
- 第7期以降の将来像からバックキャストし、第6期(2025〜2029年度)は「産総研が中核となるナショナル・イノベーション・エコシステムの発展」期と位置付け、「飛躍する産総研」をスローガンに、「強者連合による社会実装モデルのデファクト化の進行」、「地域イノベーションをリードする多様な連合体からの新産業創出」を目指す。
- 上記を念頭に、第5期(2020〜2024年度)は、「産総研が中核となるナショナル・イノベーション・エコシステムのプロトタイプの構築」期と位置付け、「産総研ブランドの確立」をスローガンに、「産総研がコアとなる強者連合を複数成立」、「地域イノベーションをリードする多様な連合体を複数成立」を目指す。
第5期経営方針の全体像
第5期においては、「(1)ナショナル・イノベーション・エコシステムの中核機能の強化」と「(2)産総研のチーム力の強化」により、産総研の価値向上を目指す。これにより、ナショナル・イノベーション・エコシステムのプロトタイプの構築を実現し、産総研ブランドの確立を目指す。
上記プロトタイプの構築の実現をはじめとして、コストベースからの脱却、提供価値ベースへの移行、研究基盤・人的資源への戦略的投資の結果、第5期末において、外部法人も含めた産総研グループ全体の事業規模が約1,200億円となり、そのうち民間からの投資額が約200億円となることを目指す。
(1)ナショナル・イノベーション・エコシステムの中核機能の強化
- 「経営資源の選択と集中」、「システムデザインによる価値創造」、「ユニークな拠点整備の促進」により産総研の優位性をさらに強化する。
- 「社会実装加速化のための出島方式の活用(外部法人の設立等)」、「産総研発スタートアップ等の強化(ユニコーン創出等への貢献)」、「ワンストップ体制の強化」により成果の社会実装を強化する。
- 「市場予測を踏まえた次世代研究の拡充」、「研究開発成果の国際展開の強化」により産総研のポテンシャルを強化する。
- これら一連の取り組みによって、産総研のナショナル・イノベーション・エコシステムの中核としての機能を強化する。
(2)産総研のチーム力の強化
- 産総研の価値向上のためには、産総研の持つチーム力を最大限発揮できることが重要である。そのために産総研のチーム力を構成する要素である、1)研究力、2)組織力、3)人材力 のそれぞれを向上させる。
- 加えて、産総研のチーム力の強化には、1)研究力、2)組織力、3)人材力 のベースとなる、「職員と組織との間の双方向の信頼と貢献に基づくエンゲージメント」を向上させることが重要である。そこで、エンゲージメント向上のポイントとして、 ①信頼関係の構築、②ビジョンへの共感、③やりがいの創出、④働きやすい職場づくり、⑤成長支援 に取り組む。
- これら一連の取り組みによって、産総研のチーム力を強化する。