材料研究者・大曲さんの「ダイヤを世に出す」
~研究者漫画 AIST RESEARCHER MANGA~ #産総研特別公開2024
取材・構成 産総研広報 、漫画 篠原 彬
これは科学解説漫画ではない。研究者の人生の物語だ。
すべての発明は、研究者たちが日夜手を動かし、数多の壁を乗り越えた先に生まれる。
そばで研究者を支える職員として、成果だけではなく研究という「人の営み」を伝えたいと思いました。
同じ研究所の職員だからこそ聞ける、純度100%の“研究にかける想い”。
取材をもとに構成された、ノンフィクションの漫画を産総研広報・完全内製でお届けします。
大曲新矢さん・取材こぼれ話
“ダイヤモンド”の名前が、いつか消えるときを目指して
ダイヤモンドを研究の中心に置いて成果を出すことにこだわってきた大曲さんが、大きく変わる一歩を踏み出したのが「ポータブル電子舌センサとAI技術を活用した溶液情報のDX化」という研究プロジェクトです*。苦しみながらも、採択率8.9 %の狭き門を通過し、初めて「ダイヤモンド」と言わずに世の中に新しい価値を提案できたのです。
株式会社ExtenDではCTOとして、「AIソムリエ」をはじめとした事業に取り組んでいます。今はダイヤモンドをセンサに使っていることを前面に押し出していますが、どの材料が何かを意識しなくてもいいくらいに、ダイヤモンドの可能性を広げ、さまざまな用途で社会に溶け込ませていくことが理想です。
もっといい材料が見つかったらどうしよう?—危機感と期待
ExtenDを起業するにあたって、さまざまな事業者に話を聞いて事業計画を練り上げたことで、“社会から求められるものをつくる”という視点が深まったといいます。さらに事業を進める中で、アップデートされたことの一つが、“素材を見る公平な目線”。
「ダイヤモンドが好きすぎて、どうしてもこの素材で解決しようと思ってしまう。材料研究者の弱点ですね。ダイヤモンドには思い入れが大きいけれど、事業を進める上で、もっと適した材料が見つかった時には、いつでも乗り換える覚悟をしています。どんな価値が提供できるのかをいつも最優先に考えています」。ダイヤモンドへの強い期待と共に、もっといい材料が見つかるのでは、という危機感も常に感じながら研究を続けます。
「どげん?」と聞いてくれる仲間が支える、情熱と冷静さの両立
熱い思いを持ちながらも、冷静に多角的にものごとを見ようとするそんな大曲さんの姿勢を支えているのが、周囲で話を聞き続けてきた仲間です。研究でも、プライベートでも、飲み会でも、常に「壁打ち」相手になってくれる大切な仲間たち。大曲さんが、情熱で突き進むプランAだけでなく、もっといい価値を創造する…そんなプランB、C、Dまで、冷静に考え尽くすためには、同僚、友人、上司、学生の存在が欠かせませんでした。
「ダイヤモンドの名前が消える、その時まで進み続けますよ。これは私の使命ですね。やらなくちゃいけないことだと思っています。ポリシーなんです!」と、熱く、そして冷静に進み続けます。
*: 国立研究開発法人科学技術振興機構 A-STEP 産学共同(育成型)2022年度採択課題[参照元へ戻る]
漫画にも登場した ㈱ExtenDや、「AIソムリエ」についてもっと知りたい方はこちら!
株式会社ExtenD
2022年7月創業の産総研発スタートアップ企業。「ダイヤモンドでしか実現できない世界を創造し、次の100年を牽引する新たな産業を創り出す」ために活動中。
AIソムリエ技術紹介動画
「革新的『化学指紋情報』の取得による各種溶液のDX化と、機械学習による異常診断」を解説しています。