ワット天びん(キッブル天びん)
\研究者にきいてみた!/
Twitterで話題の某大学のあの試験問題。
ワット天びん(キッブル天びん)は、産総研もかかわった質量の単位「キログラム」の定義改定に大きく貢献した装置です。
笑顔が素敵な工学計測標準研究部門 質量標準研究グループの倉本 直樹 研究グループ長に聞きました!
明治時代から質量の標準として運用されてきたのはキログラム原器という分銅(モノ)でした。
でも、モノの質量が変わらないように管理することはとても難しい。
2019年、「キログラム」はモノから基礎物理定数である「プランク定数」によって定められるよう、改定されました。
使われたのは、試験問題に出てきたキッブル天びん法とシリコン球体を使うX線結晶密度法(産総研はこっち)。
プランク定数の決定に使用された8つのデータのうち、4つが産総研で測定したデータ! 欧米以外の国が単位系の改定に決定的な役割を果たすのは初めてのことでした。(産総研マガジン:キログラムの定義が変わる!究極の精密測定が科学の「基準」をつくる)
最後に紹介してくれたのが「電圧天びん」。
キッブル天びんが電磁気力を使い大きな質量を測ることが得意なのに対し、電圧天びんは静電気力で小さな質量を測るのが得意なんだそう。
どちらもシンプルな物理現象を組み合わせていますが、全てを制御して高精度に質量を測定することがとても難しいのです。
もうひとつ、おまけで。試験問題の後半は量子ホール効果と電流比較ブリッジを使った電気抵抗の測定でした。
産総研には、まさにこれを実現した装置もあるんです。
量子ホール素子を使って、プランク定数と電気素量から電気抵抗を求めるもので、直流電気抵抗の国家標準を担っています。