MISSION
課題に向き合い、社会実装を加速する
持続可能な未来を切り拓く産総研の総合力
私たちの社会には、解決を急がねばならない多くの課題が存在しています。産総研はこれらの社会課題に正面から取り組み、長年にわたり培ってきた独自の技術を実社会で役立つ形へと発展させ、広く普及させていくことを使命としています。
産総研はこれまでも研究領域を横断する数多くのプロジェクトを実施し、成果を上げてきました。しかし、産総研が中核となってわが国のイノベーション・エコシステムを実現するには、社会から求められるものや取り組むべき課題を改めて見直す必要がありました。そこで、さまざまな社会課題を科学技術的視点から整理し、産総研の総合力を最大限に発揮して解決に取り組むため、2025年4月に7つの実装研究センターを設立しました。
社会課題の解決と新たな市場の創出
MESSAGE
課題解決に伴走するパートナーとして
産業技術総合研究所は、社会課題の解決と産業競争力の強化を両立させる「実装研究」を推進しています。実装研究センターはその中核として、産総研の総合力を生かし、企業の皆さまとともに社会課題の解決と新たな市場の創出を目指す、共創の拠点です。各センターでは、3つの社会課題の解決に向けて、基盤技術の開発から実証、標準化、事業化に至るまで、一貫した取り組みを進めています。企業の皆さまには、研究開発から市場展開までを見据えた共創パートナーとして、産総研の専門家・設備・知的基盤をご活用いただけます。また、経営戦略に沿った研究テーマを設定できる冠ラボ(名称付き研究室)の設置を通じて、長期的かつ戦略的な技術開発を支援いたします。
社会実装の最前線で、新たな価値をともに創り出すことが私たちの使命です。ぜひ、皆さまのパートナーとして実装研究センターをご活用くださいますよう、心よりお願い申し上げます。
副理事長
研究開発責任者
研究戦略本部長
小原 春彦
CCUS実装研究センター
CO2削減技術の社会実装を通じて2050年カーボンニュートラル達成に貢献
- CO2の分離回収・固定・貯留・利用・評価技術を開発
- 安定した貯留あるいは高効率な資源化を実現するCCUSシステムの社会実装を推進
- 2050年のカーボンニュートラルに貢献
研究センター長:玄地 裕
2050年カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーなどカーボンフリーのエネルギーを最大限導入することと、CO2の分離回収、利用(CCU)、固定・貯留技術(CCS)およびそのシステムの社会実装が必要です。私たちは、産総研の先進的な要素技術を統合し、分離回収したCO2から燃料・化学原料を一貫製造するCCUシステムや、CO2地中貯留の管理手法および炭酸塩固定技術の開発とともに、原料から製造、廃棄までの環境影響を考慮したライフサイクルアセスメント(LCA)と経済性評価ツールの開発を行い、CCUSによる環境価値の定量化にも取り組みます。これらの技術・システムの社会実装を通じて2050年のカーボンニュートラル実現に貢献します。
サーキュラーテクノロジー実装研究センター
高度リサイクル技術でサーキュラーエコノミーを加速
- アルミニウムのアップサイクル技術
- プラスチックのマテリアルリサイクル技術
- プラスチックのケミカルリサイクル技術
- 指標構築・評価基盤システム
研究センター長:佐藤 浩昭
従来の大量生産・大量消費から脱却し、資源循環を促進するために、物理選別・回収・再資源化技術やグレーディング、ライフサイクルアセスメント、データ連携基盤、CE指標構築などを通じて、新しい資源循環システムの実装を進めます。資源循環の実現に向け、再生材の高付加価値化、リソーシング率の向上、動静脈連携型インベントリデータの構築、用途に応じた再生材利用最適化支援スキームの確立により、産総研グループを中核とした資源循環バリューチェーンネットワークにおいて社会実装を加速します。特にアルミニウムおよびプラスチックを対象とし、産総研が独自に開発を進めてきた、高度物理選別・不純物除去技術、リサイクル技術、指標構築・評価技術などを融合し、課題に取り組みます。
ネイチャーポジティブ技術実装研究センター
科学的根拠に基づく環境評価技術で、産業界の自然資本活動を支える
- TNFD評価を包含したサステナビリティ分析
- 企業課題解決に向けたネイチャーテック開発
- 地域レベルの自然資本評価回復技術
研究センター長:今泉 博之
ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、回復させることを目指す概念であり、地球環境の持続可能性を確保するための国際的な目標となっています。そこで、土壌、水、生物資源などの自然資本に係る保全・回復に資する計測・評価・対策などの統合技術を開発し、企業などが重視する自然再興に向けた個々の活動にオーダーメイドで応え、ネイチャーポジティブ社会の実現を目指します。そのために、上記3つの技術の社会実装を通じて、 生物多様性に配慮した土地利用推進などを含む企業活動、自治体などの自然資本状態の可視化とネイチャーポジティブ促進施策の支援などに取り組みます。
次世代ものづくり実装研究センター
人・ロボット・工作機械が協調する開発環境で、製造プロセスを最適化
- 製造サイバーフィジカルシステム
- 製造技術の知識構造化型データベース構築
- データ駆動型加工データ統合・活用
研究センター長:増井 慶次郎
人口減少、高齢化社会に対応するため、生産性向上と高度ものづくり人材の育成が急務となっています。産学官が連携したものづくり拠点構想に賛同する民間企業とも連携を進めながら、日本独自の共通基盤としてものづくり拠点の構築を目指します。そのために、AI技術、DX技術、ロボット技術などを駆使するとともに、ロボット命令系統やプログラム言語をオープンミドルウェアを使って統一・標準化を進め、ロボット・工作機械・AI・デジタルツインなどを連携させた次世代のものづくりシステムの研究を推進します。
ウェルビーイング実装研究センター
心身の負担を見える化・軽減し、誰もが健康に働ける社会へ
- 物理作業のウェルビーイング向上のため人機械協調、遠隔就労システムの構築および評価
- 情報作業のウェルビーイング向上のための環境制御システムの構築および評価
研究センター長:谷川 民生
労働者不足は就労現場に多くの課題を引き起こしています。物理的負荷の高い作業現場では、若手の減少に伴う高齢化により、身体能力の低下による事故や、専門人材の引退による技術継承の停滞が問題です。また、オフィス現場では、業務過多による心理的負荷の増加が精神疾患の要因となっています。そこで、物理的負荷に対しては、人が主体的にAI・ロボットを活用して身体的負担を軽減する取り組みを進めます。また、心理的負荷に対しては、VR技術や生体計測技術を用いて心理状態を可視化し、過度な負荷を把握・ケアする仕組みを構築します。これらの要素をワークプレイスDX技術に統合し、就労環境のウェルビーイングを総合的に向上する技術の社会実装を推進します。
セルフケア実装研究センター
生体・生活データとAIの活用で、健康不安ゼロ社会を支える
- 自宅での健康モニタリング
- リスクマネジメントシステムの構築
- 行動最適化技術・サービスの研究と実装
- 生体・運動機能の評価・改善技術の社会実装
研究センター長:丸山 修
超高齢社会、過疎化、医療関係者不足などにより、十分な医療が受けられないことが懸念されています。そこで、高齢者のみならず健康に不安を抱える人が、健康に生活できる社会の実現を目指します。そのために、医療データ、日常生活データおよび生活環境データを統合して、AIを活用した健康度評価モデルを構築し、効果の高いコーチングによるセルフケアシステムの基盤技術の整備と社会実装を進めます。ウェアラブルデバイスの開発や身体の生理・運動機能の評価・改善技術、行動変容および遠隔コーチング技術など、産総研独自の技術を結集し、課題に取り組みます。
レジリエントインフラ実装研究センター
点検・検査・診断・補修プロセスを先端技術で統合し、インフラを強靭化
- 物理探査による水道管路の腐食リスク評価および都市部の地盤調査
- X線によるインフラの効率的な診断・補修システムの開発
- AI基盤モデルおよびシミュレーションを活用したインフラ劣化診断技術の開発
- インフラの長寿命化を実現する超耐久性防錆塗料の開発
- 雪害対策に資する滑雪材・透明ヒーター材の開発
研究センター長:石井 順太郎
世界的にインフラの老朽化や維持管理コストの増大が深刻化しています。そこで、新技術を活用して予防保全の効率を飛躍的に高め、インフラ劣化予測による事故リスクの低減と補修の効率化、新素材を用いたインフラの超長寿命化を目指します。そのために、インフラのスマート監視技術、劣化診断技術、長寿命化技術を統合した先進的なインフラ維持管理技術の開発に取り組み、社会実装を進めます。 非破壊イメージング技術、物理探査やロボットを活用した監視技術、AI・シミュレーションによる劣化診断技術など、産総研独自の技術を結集し、課題に取り組みます。
実装研究センター
連絡先:研究戦略本部 実装研究センター事務局
メール:M-irc-ext-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)