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ゼロエミッション社会の実現に向けて
世界的な脱炭素の流れの中で、我が国も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」を2020年10月に宣言しました。経済活動を犠牲にせずに温室効果ガスを大幅削減して、パリ協定の1.5℃目標を実現するためには非連続なイノベーションが必要不可欠です。このような社会課題の解決に資するため、エネルギー・環境領域では、再生可能エネルギーの大量導入、省エネルギー技術の促進、高効率なエネルギー貯蔵、資源の有効利用、環境リスクの評価・低減などの技術開発に取り組み、ゼロエミッション社会の実現を目指します。
重要戦略詳細
新エネルギーの導入を促進する技術の開発
東日本大震災以降、日本のエネルギー政策は大きな転換を求められており、新エネルギーとしての再生可能エネルギーへの期待が高まっています。産総研では、再生可能エネルギーの大量導入時代に向けて、エネルギー変換効率の飛躍的向上に向けた新しい原理や構造に基づく太陽電池の研究開発、太陽光発電における発電コスト低減と信頼性向上、風力発電の発電量向上と長寿命化、地熱の適正な利用を目指した技術などの開発を行うとともに、再生可能エネルギーの有効利用に必須のエネルギーネットワークなどにも取り組んでいます。
太陽光発電パネル
エネルギーを高密度で貯蔵する技術の開発
エネルギーの需要と供給の時間的・ 場所的な不一致を解消するため、高効率なエネルギー貯蔵技術が必要とされています。産総研では、再生可 能エネルギーなどを効率よく水素などの化学エネルギーに変換して貯蔵・利用する技術を開発するとともに、日々の生活を支えるための利便性、安全性、環境性、安定供給性を考慮したエネルギーシステムの実現を目指し、車載用、住宅用、産業用の蓄電池(二次電池)に関する、材料基礎からシステム化まで一貫した研究を進めています。
水素吸蔵合金
エネルギーを効率的に変換・利用する技術の開発
世界的規模で急速に増大するエネルギー消費に対して、省エネルギーの推進は重要な課題です。産総研では、電力エネルギー利用の高度化・高効率化に半導体エレクトロニクスを活用するため、SiC、GaN やダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体材料を用いて、これらの結晶・ウェハ技術から、パワー半導体デバイスや電力変換機器に至るまでの幅広い技術階層を、一貫して研究開発しています。また、熱エネルギーの有効利用技術として、発電と同時に熱の有効利用が可能な燃料電池、未利用の廃熱から電気エネルギーを回収できる熱電変換などの高性能化・耐久性の向上、より高効率なエンジンの実現に向けた技術開発などにも取り組んでいます。
SiC を用いた電力変換機器
エネルギー資源を有効利用する技術の開発
エネルギー資源の少ないわが国において、新たな資源開発とその利用によりエネルギーセキュリティを確保することが必要です。産総研では、非在来型資源としてのメタンハイドレートなどのエネルギー資源の有効利用にかかわる技術を開発しています。メタンハイドレート資源開発においては、長期的な安定生産技術、生産増進技術の開発や地層挙動の評価など、早期の商業化実現に向けた技術整備に取り組んでいます。また、褐炭などの低品位炭や非在来型資源から水素などのクリーンな燃料を高効率に製造する技術など、未利用エネルギー資源の環境調和型利用技術の開発も行い、新たなエネルギー産業の創出に貢献します。
メタンハイドレート海洋産出試験の様子
環境リスクを評価・低減する技術の開発
産業と環境が共生する持続可能な社会の実現に向けて、新しい技術やシステムが社会に及ぼす影響を評価し、リスクを低減するための技術開発を行います。具体的には、環境の変化をいち早く検出するための環境分析・センシング技術の開発、環境リスクやその社会影響を評価するためのリスク評価手法の開発、環境負荷を低減するための資源リサイクル技術や環境浄化技術の開発を行います。また、産業事故の防止や万一の事故の際の被害低減のための産業保安技術やシステムを開発します。
レアメタルを高純度に回収する複管式気流選別機
エネルギー・環境領域
連絡先:エネルギー・環境領域 研究企画室
メール:envene-liaison-ml*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)
電話:029-862-6033