大気濃度CO2を合成ガスに直接変換
\研究者にきいてみた!/
カーボンニュートラルの実現に向けて、産総研では排出されたCO2を有効に活用する研究を進めています。
CO2を、飛行機の燃料やプラスチックの製造に使われる合成ガスに変換する(2022/05/13プレスリリース)。そんな新しい触媒を開発したエネルギープロセス研究部門 エネルギー変換プロセスグループの笹山 知嶺研究員に聞きました!
Q1.この触媒のスゴい点はどこですか?
大気濃度のCO2を、直接合成ガスに変換できるところです!
従来は大気中のCO2(0.04%)を、100%にまで濃縮する必要がありました。でも、これには大量のエネルギーが必要です。
新触媒は、①CO2を集め、②そのまま合成ガスに変換。2つの機能を持つ「二元機能触媒」なので、濃縮が不要なのです。
さらに、新触媒にはニッケルなどの遷移金属が使われていません。遷移金属は化学反応を促進させる能力が高いので、二元機能触媒には不可欠だと思われていました。
それが今回の発見により、低コストで、安定して確保できるナトリウム等の金属だけで触媒を作ることが可能になったのです!
Q2.発見が生まれたキッカケは?
研究者の熱意と、偶然の発見が発明を生みました。
「CO2の吸収を詳しく調べるため、吸収機能だけ持ったナトリウム中心の触媒を試作し、反応装置にかけたところ…思ってもいなかった『合成ガス』が発生してきたんです」
予想外の成果に、同僚もかなり驚いたそうです。
Q3.将来が楽しみな新触媒。今後はどんな研究が必要ですか?
触媒の改良に加えて、合成ガスを生成する装置の開発も行っていきます。
この金色の管は装置の一部。粉状の触媒を吹き上げて装置内を循環させ、CO2や水素ガスとの反応を促します。効率のよい合成ガスの生成方法を検討していきます。
沢山の管が繋がった「流動層反応器」は、15年前、職員によって設計されたオリジナル装置。改良しながら代々受け継がれています。
注入するガスの量・速さ・温度など様々なパラメーターがあり、安定した稼働には技術が必要です。高坂主任研究員が自在に操り、触媒が流動する様子を見せてくれました。
【こぼれ話】
研究室で見つけた大量のガラス管。
実験の内容に合わせて、一つ一つオーダーメイドで作ってもらっているそうです。高温の実験にも耐えられる石英ガラスで作られています。融点が高いガラスなので加工が難しく、頼める職人さんも限られているのだそう。
研究者が持っている大型の石英ガラス管は、板橋区の町工場の職人・佐藤さんに作ってもらったもの。
先ほど紹介した、流動層反応器に使われます。
佐藤さんは御年83歳の大ベテラン。これからも、お元気で産総研の研究を支えていただけたら嬉しいです。