産総研マガジンは、企業、大学、研究機関などの皆さまと産総研をつなぎ、 時代を切り拓く先端情報を紹介するコミュニケーション・マガジンです。

大気濃度CO2を合成ガスに直接変換【産総研公式X】

2023/02/13

COLUMN

大気濃度CO2を合成ガスに直接変換

\研究者にきいてみた!/

  • #エネルギー環境制約対応

カーボンニュートラルの実現に向けて、産総研では排出されたCO2を有効に活用する研究を進めています。

 CO2を、飛行機の燃料やプラスチックの製造に使われる合成ガスに変換する(2022/05/13プレスリリース)。そんな新しい触媒を開発したエネルギープロセス研究部門 エネルギー変換プロセスグループの笹山 知嶺研究員に聞きました!

笹山研究員

Q1.この触媒のスゴい点はどこですか?

 大気濃度のCO2を、直接合成ガスに変換できるところです!

 従来は大気中のCO2(0.04%)を、100%にまで濃縮する必要がありました。でも、これには大量のエネルギーが必要です。

 新触媒は、①CO2を集め、②そのまま合成ガスに変換。2つの機能を持つ「二元機能触媒」なので、濃縮が不要なのです。

装置の紹介

 さらに、新触媒にはニッケルなどの遷移金属が使われていません。遷移金属は化学反応を促進させる能力が高いので、二元機能触媒には不可欠だと思われていました。

 それが今回の発見により、低コストで、安定して確保できるナトリウム等の金属だけで触媒を作ることが可能になったのです!

触媒の比較写真

Q2.発見が生まれたキッカケは?

 研究者の熱意と、偶然の発見が発明を生みました。

 「CO2の吸収を詳しく調べるため、吸収機能だけ持ったナトリウム中心の触媒を試作し、反応装置にかけたところ…思ってもいなかった『合成ガス』が発生してきたんです」

 予想外の成果に、同僚もかなり驚いたそうです。

反応装置

Q3.将来が楽しみな新触媒。今後はどんな研究が必要ですか?

 触媒の改良に加えて、合成ガスを生成する装置の開発も行っていきます。

 この金色の管は装置の一部。粉状の触媒を吹き上げて装置内を循環させ、CO2や水素ガスとの反応を促します。効率のよい合成ガスの生成方法を検討していきます。

装置の一部

 沢山の管が繋がった「流動層反応器」は、15年前、職員によって設計されたオリジナル装置。改良しながら代々受け継がれています。

 注入するガスの量・速さ・温度など様々なパラメーターがあり、安定した稼働には技術が必要です。高坂主任研究員が自在に操り、触媒が流動する様子を見せてくれました。

高坂研究員

【こぼれ話】

 研究室で見つけた大量のガラス管。

 実験の内容に合わせて、一つ一つオーダーメイドで作ってもらっているそうです。高温の実験にも耐えられる石英ガラスで作られています。融点が高いガラスなので加工が難しく、頼める職人さんも限られているのだそう。

研究室で見つけた大量のガラス管

 研究者が持っている大型の石英ガラス管は、板橋区の町工場の職人・佐藤さんに作ってもらったもの。
先ほど紹介した、流動層反応器に使われます。

 佐藤さんは御年83歳の大ベテラン。これからも、お元気で産総研の研究を支えていただけたら嬉しいです。

笹山研究員と高坂研究員

この記事へのリアクション

  •  

  •  

  •  

この記事をシェア

  • Xでシェア
  • facebookでシェア
  • LINEでシェア

掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

国立研究開発法人産業技術総合研究所

Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
(Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.