小惑星リュウグウの試料分析
\研究者にきいてみた!/
はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの粒子。90以上の機関がリレー形式で分析していくため、産総研が熱拡散率の計測に使えるのはわずか4日間!
物質計測標準研究部門 材料構造・物性研究グループの八木 貴志 研究グループ長と山下 雄一郎企画主幹の、絶対に失敗できない戦いが始まりました。(2022/09/28プレスリリース)
Q. 一番苦労した点は?
A. 一番難しかったのは、測定対象が非常に小さく、複雑な形状だったことです。提供された試験片は、一辺わずか3 mm、厚み0.9 mmの三角形状。
通常の測定では、最低1 cm四方という「十分なサイズ」の試験片が必要なのですが、今回の粒子は小さすぎ…既存の治具が使えません。
そこで、八木さんたちは、厚さ0.9㎜の粒子を6本の針で支える特製の治具をイチから製作。さらに、実物の到着前から粒子と同じサイズのガラス片を作成し、固定のリハーサルを繰り返したそう。振動で落ちないように、ゴムシートを挟むなど細かな工夫も。
設置から測定完了まで丸3日。測定中に試験片が動いたり落ちたりしてしまったら、最初からやり直しなので、心配のあまり何度も様子を見に行ったそう。
ちなみに、リュウグウ粒子は真空状態の、こんな容器に入って届けられました(これは再現写真なので、実物ではありません)。
Q. 今回求められたリュウグウ粒子の熱慣性。地球上の物質でいうと、何と近いですか?
A. リュウグウ粒子の熱慣性はプラスチックと同程度。つまり、金属やガラスと比べて非常に熱しにくく冷めにくい物質なのです。
地球の岩石では目にしない数値で、非常に驚いたそう。
今回、産総研と名古屋大で求めた熱物性に関するデータは、リュウグウの形成過程のシミュレーションに活用されました。
小惑星から採取された米粒ほどの小さな粒子に、たくさんの研究者たちの熱意が向けられているんですね!