時間を供給する
\研究者にきいてみた!/
6月10日は「時の記念日」
世界中で標準時として使われる協定世界時(UTC)。パソコンの設定画面で見覚えある方も多いのでは。
でも、
- UTCそのものをチクタクと刻む原子時計は存在しない
- UTCをリアルタイムに知ることもできない
って知ってました?
UTCは、実は世界数百台の原子時計の平均。しかもその計算は1ヶ月ごと。だからリアルタイムではわからないのです。
これじゃ不便!ということで、産総研はUTCと同期させた独自の時刻「UTC(NMIJ)」を運用しています。国内で時刻系を運用している機関は産総研をふくめて3ヶ所しかないんですよ。
UTC(NMIJ)を作るのに使われるのが「水素メーザー」という原子時計です。
地下室に入ると、部屋の中にさらに部屋が。温度変化を避けるため内部屋に入れられているのだそう。
内部屋の、さらに恒温槽の中に設置された水素メーザーが、いま現在も時を刻みつづけています。
水素メーザーは長時間連続稼働が得意。耐久性にすぐれた「乗用車」的存在です。
一方、先日動画で紹介したこの光格子時計は、超高精度、でも繊細な「F1マシン」的存在。
産総研の光格子時計は、2020年からUTCの元である国際原子時(TAI)の校正に貢献しつづけています。
そしていま、光格子時計の「次」をめざす研究も。
この部屋では、イッテルビウム原子の(いまの光格子時計で測定しているのとは異なる)「状態」を観測することで、光格子時計以上の精度を目指す研究がすすんでいます。
でも、そもそも高精度な時計ってなんの役に立つの…?
意外な答えが返ってきました。
「時計って時間を知るためだけのものじゃないんですよ!」
山は地上より時間が早く進むって、聞いたことありますか?時間の流れは重力の影響を受けるのです。これ、見方を変えれば、超高精度な時計は「重力センサー」として使えるということ。
この時計が動きだせば、暗黒物質の探索にも使えるかもという話も。
時計の話を聞きに行ったはずが、いつのまにか宇宙物理学の最重要課題への挑戦の話に……物理学者でなくてもロマンを感じますね!
この新たな時計による超高精度な測定が、物理学の大発見の立役者になるのかもしれません。