有機ELの新たな材料開発
\研究者にきいてみた!/
スマホやゲーム機、テレビなどにも使われている有機ELディスプレイ。映像はキレイだけど、液晶と比べるとちょっと高いな…と悩んだ方もいるかもしれません。
そんな有機ELの新たな材料開発に挑む! 物質計測標準研究部門 ナノ材料構造分析研究グループの細貝 拓也 主任研究員に聞きました。(2023/3/28プレスリリース)
Q.有機ELの研究では、いまどんなことが求められてるの?
A.低コスト、高効率な発光材料が求められています。
有機ELはディスプレイ自体が発光するため、バックライトをつかう液晶テレビとくらべて、色彩豊かでなめらかな映像を楽しめるのが特徴。
でも、いま有機ELに使われている材料は発光に希少金属が必要で、コストや資源の制約が課題なんだそう。
そんななか「新たな発光材料として使えるラジカルを発見しました」と細貝さん。
ラジカルとは(不対電子をもつ)一般的には不安定な分子のこと。細貝さんたちはラジカルを大きな高分子で覆うことで、安定的で効率よく発光させつづけることに成功!
取材中もキレイな赤色の発光がつづいていました。
Q.今回の研究でこだわった点は?
A.オリジナルの計測装置の開発です。
一般的に不安定なラジカルを正しく測るには、試料を用意してなるべく短時間で発光特性を評価する必要があります。開発した装置なら数秒で詳細な測定が済むので、ラジカルの発光特性を適切に評価できるんですよ。
じつはこの計測装置、もともとは別の有機EL材料むけに開発していたものなんだとか。早く正確な評価ができるという特徴を今回のラジカルの測定に上手く活かせたそう。
思いがけず発光材料発見の立役者となった計測装置。4年にわたって装置の改良を重ねた甲斐があったと、細貝さんは胸を張ります。
Q.ズバリ今後の目標は?
A.計測から材料開発に貢献します!
超高効率でフルカラーの有機ELをつくるには、青や緑など、赤色以外の発光ラジカルの開発も必要です。計測装置のさらなる改良を通して材料の発光メカニズムの解析をすすめ、有機EL材料の開発に携わっていきたいです。