NEDO技術開発機構、産総研および日本ロボット工業会は、NEDO技術開発機構プロジェクト「ロボットの開発基盤となるソフトウエア上の基盤整備」の成果であるロボット用ミドルウエア(RTミドルウエア)をベースにしてロボット技術の国際標準化活動を進めてきました。RTミドルウエアとはロボットシステムの機能要素(センサ、サーボ、モータ等)の通信インタフェースを標準化して、ユーザの幅広いニーズに合わせた新しいロボットシステムを容易に構築するための基盤技術です。このたび、12月12日に米国バーリンゲームで開催されたソフトウエア技術の国際標準化団体OMGの理事会において正式承認が得られ、これにより国際標準仕様として正式発行されることになりました。今後この標準技術の普及が進むことで、ロボット用ソフトウエアの開発ツールが整備されてソフトウエア開発の効率化やソフトウエアの再利用が進み、膨大な費用が必要であったロボット開発のコストが削減され、日常生活で使われる多種多様なロボットが手の届く価格で商品化されることが期待されます。
NEDO技術開発機構(以下NEDO)は、産業技術総合研究所(以下産総研)および日本ロボット工業会と共に、ロボット用ミドルウエア(RTミドルウエア)1をベースにしてロボット技術の国際標準化活動を進めて来ました。
昨年、米国アナハイムで開催されたソフトウエア技術の国際標準化団体OMGの技術会議において、日本の提案をベースとした国際標準仕様原案が採択されました2。これは、わが国のロボット技術の国際標準化活動の第一歩とも言うべき大きな成果であり、これにより、将来、ロボット技術の標準化が進むことで膨大な費用が必要であったロボット開発のコストが削減され、日常生活で使われる多種多様なロボットが手の届く価格で商品化されることが期待されます。
続いて、2007年9月に米国・ジャクソンビルで開催されたOMG技術会議において、ファイナライズ作業部会(RTC-FTF)にて約1年間かけて整合性を取る作業を進めてきた標準仕様案が最終報告書として提出され、技術委員会で承認されました。そして、このたび、2007年12月12日に米国・バーリンゲーム会議で開催されたOMG技術会議のビジネス委員会において、仕様に準拠した実装例やビジネスプランを提示して標準仕様の実効性を証明し、ビジネス委員会の推薦が得られました。また、ビジネス委員会の推薦を受けた後の理事会において標準仕様の正式承認が得られました。今後の予定としては、2008年の2月頃にOMGのホームページで正式な標準仕様文書として公開される予定です。OMGの標準仕様は、誰でも無料で参照でき、仕様に準拠したソフトウエアを自由に開発して販売することができます。
策定された標準仕様に準拠したソフトウエア開発することで、インタフェース仕様の枠組みが統一され、ロボット用ソフトウエアモジュールとしての相互運用性が高まり、異なるベンダが開発したモジュールを組み合わせてロボットシステムを構築できるようになるとともに、開発効率の向上の鍵となるロボット用のソフトウエア開発支援ツールの出現が期待されます。
1 RTミドルウエアとはロボットシステムの機能要素(センサ、サーボ、モータ等)の通信インタフェースを標準化して、ユーザの幅広いニーズに合わせた新しいロボットシステムを容易に構築するための基盤技術である。
2 より詳しくは以下を参照。
「ロボット用ミドルウエアの国際標準仕様原案を国際標準化団体OMGが採択~ロボット作りの国際的ルール策定に向けて、日本主導で前進~」 http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_0307A.html
2006年9月のOMGアナハイム技術会議において、産総研と米国のソフトウェアベンダーであるRTI社が提出した2つの仕様提案を統合した標準仕様(原案)を採択したのを受けて、ファイナライズ作業部会を12組織(産総研、ETRI(韓)、日立、ソウル国立大(韓)、Mercury Computer Systems(米)、日本ロボット工業会、芝浦工業大学、富士通、テクノロジックアート、RTI(米)、Thales(仏)、NEDO)の協力を得て設立し、曖昧な記述の明確化などの仕様の整合性を取る作業を進めてきました。
産総研が開発したRTミドルウエアの研究開発は続けられており、2008年2月頃の正式な標準仕様書の発行にあわせて、今回承認された標準仕様に準拠させたRTミドルウエアOpenRTM-aist-1.0.0を公開リリースする予定です。なお、2007年度から開始された経済産業省の知能化プロジェクトでは、開発支援ツール類を整備して効率的な開発環境の確立を目指しています。
今回採択された標準仕様に準拠したソフトウエア開発することで、インタフェース仕様の枠組みが統一され、ロボット用モジュールとしての相互運用性が高まり、将来的には異なるベンダが開発したモジュールを組み合わせてロボットシステムを構築できるようになることが期待されます。今後、この枠組みの上に、音声認識モジュール、画像認識モジュール、ロボットの位置認識モジュールなどの各応用分野の様々な機能を持つモジュールの標準インタフェース仕様の策定が進められ、今後、OMGに設立したロボット技術部会(Robotics-DTF)において、ロボット技術に求められる国際標準仕様として具体的な標準仕様の議論が本格化していく予定です。
現在、OMGのロボット技術部会では、次の標準化のテーマとしてロボットアプリケーションに不可欠な位置・姿勢情報や測位情報を統一的に扱うことを狙ったRobotic Localization Serviceの標準化、人間とロボットのひとつのインタフェースとして人間を特定することをねらったUser Identification Serviceの標準化の議論を進めており、関係者の標準化の議論への参加を求めているところです。
ロボット技術の共有と蓄積を目指した具体的な試みとして、ロボットビジネス推進協議会、計測自動制御学会、産総研の共催で、趣旨に賛同いただく方々の協賛を多く得て、ロボット用ソフトウエアのRTミドルウエアを使ったモジュール化を促進することを狙ったRTミドルウエアコンテストを企画しており、12月22日に成果発表会・表彰式を行う予定です。
このRTミドルウエア技術は、内閣府連携施策群次世代ロボット共通プラットフォーム技術確立プロジェクト「分散コンポーネント型ロボットシミュレータ」(2005-2007)、「環境と作業構造のユニバーサルデザイン」、NEDOプロジェクト「次世代ロボット共通基盤技術」(2006-2008)、経済産業省プロジェクト「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(2007-2011)などの多くのプロジェクトに導入され、プロジェクト成果をRTミドルウエアのRTコンポーネントとして提供することで手軽に使えるRTコンポーネント群の充実を図る予定です。
これらのプロジェクト参加企業を初めとして、国際標準化活動への参加企業が益々増えていくことが期待されます。
※案内先:本件は、経済産業省内 「経済産業記者会」 「経済産業省ペンクラブ」、経団連会館内 「エネルギー記者会」、文部科学省内 「文部科学記者会」 「科学記者会」及び「筑波研究学園都市記者会」の皆様へ御案内させて頂いております。