NEDO技術開発機構、産総研および日本ロボット工業会は、国家プロジェクト「ロボットの開発基盤となるソフトウエア上の基盤整備」の成果であるロボット用ミドルウエア(RTミドルウエア)をベースにしてロボット技術の国際標準化活動を本格的に開始しました。プロジェクトでは、ロボットシステムの機能要素をソフトウエア的にモジュール化して、ユーザの幅広いニーズに合わせた新しいロボットシステムを容易に構築するための基盤技術としてRTミドルウエアの開発を進めています。このたび、ソフトウエア技術の国際標準化団体OMGにおいて日本主導で活動グループを正式に発足させ、国際標準仕様原案作成を目指して、ロボット技術の標準化活動を本格化いたします。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長 牧野 力】(以下「NEDO技術開発機構」という)、独立行政法人産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)および社団法人日本ロボット工業会【会長 稲葉 善治】(以下「日本ロボット工業会」という)は、国家プロジェクト「ロボットの開発基盤となるソフトウエア上の基盤整備」【プロジェクトリーダー 谷江 和雄 産総研 評価部 首席評価役】(平成14~16年度、委託先:日本ロボット工業会、産総研、松下電工株式会社【代表取締役社長経営執行役 畑中 浩一】)の成果であるロボット用ミドルウエア【RT(Robot Technology)ミドルウエア】をベースにロボット技術の国際標準化活動を本格的に開始した。
プロジェクトでは、ロボットシステムの機能要素をモジュール化して、ユーザの幅広いニーズに合わせた新しいロボットシステムを容易に構築するためのソフトウエア基盤技術としてRTミドルウエアを研究開発している。これまでに、プロジェクト関係者向けに基本機能となるRTミドルウエアver.0.1.0をリリースするとともに、RTミドルウエアを用いたアプリケーションの構築例として居住空間における生活支援を可能にするRTスペースの開発を行い、RTミドルウエアプログラムの有効性を示してきた。(写真参照)
ロボット技術の統合を図るために世界的なロボット開発用ミドルウエアの標準化が期待されており、国際的な協力関係を構築しつつ、日本主導での戦略的な標準化推進戦略が求められている。
RTミドルウエア技術を国際標準にするため、NEDO技術開発機構、産総研および日本ロボット工業会は、ソフトウエア技術に関する世界最大級の非営利国際標準化団体OMGの技術会議に参加して調査を進めていたが、このたび、平成17年1月30日~2月4日に米国・サンフランシスコで開催された技術会議において、OMG内により汎用性の高いRTミドルウエア技術の標準化を目指す活動グループ(Robotics Domain SIG)を正式に発足させた。本活動グループの共同座長は、芝浦工業大学【学長 江崎 玲於奈】の 水川 真 教授、産総研知能システム研究部門【部門長 平井 成興】の 神徳 徹雄 主任研究員が務める予定である。本活動グループでは、これまでにOMGで策定された分散オブジェクトに関する標準仕様のロボット分野への適用検討や、ロボットの固有機能に関するミドルウエアの標準仕様策定作業を実施していく。また、同技術会議ではロボット技術に関心を持つ企業メンバーを集めることを目的としてロボット技術の標準化の重要性や今後の方針を議論するフォーラムも開催した。
ロボット技術に関する標準化の動きは海外でも活発化してきており、今後は、国際標準仕様原案作成を目指して、RTミドルウエア技術の標準化活動を本格化していく。
我が国のロボット産業は、自動車産業、電機産業等の製造業を中心に、工場における産業用ロボットが普及することにより拡大発展してきた。今日、我が国は世界の産業用ロボットの大半を生産する「ロボット大国」であり、国際的にもトップレベルのロボット技術を蓄積している。
一方、少子高齢化の進展による労働力不足や要介護者の増加といった課題が顕在化する中、解決の手段として、病院、福祉施設、家庭などの製造現場以外で活用されるロボットを開発、実用化することが期待されている。しかしながら、現時点では、これらロボットの開発は本格化しているとは言い難い。その要因としては、個々のロボット毎に信頼性、安全性、操作性、快適性の向上などの技術課題に対して様々な取り組みが行われてはいるものの、現段階ではこれらの取り組みの成果を相互に共用することが難しく、ロボット開発が非効率なものとなっていることがあげられる。
このような問題を解消し、製造現場以外で活用されるロボットの実用化、製品化を進めていく手法として、アクチュエータ、センサ、制御プログラム等といった様々なロボット要素をモジュール化し、これらを統合することでロボットの構築を可能とするロボット構築手法が期待されている。
そこで、NEDO技術開発機構では平成14年度から3ケ年計画で「ロボットの開発基盤となるソフトウエア上の基盤整備」プロジェクト(以下「RTミドルウエアプロジェクト」という)を推進している。本プロジェクトでは、様々なロボット要素を分散オブジェクトモジュール化し、ネットワークを介してこれらの統合を可能とするソフトウエア上の技術基盤を構築することを目標としている。これにより、ロボット要素モジュールを統合する新たなロボット開発手法、およびロボット技術の共有化による効率的な開発が可能となる共通基盤技術が形成され、中小・ベンチャー、異業種を含む多様な企業、研究開発機関等におけるロボット開発を活性化し、製造現場以外におけるロボットの活用の拡大につながることが期待される。
一方、海外においても、昨年10月に米国で開催された一般向けロボティクス・イベントのRoboNexusが盛況裏に開催され、また、12月には韓国でロボット技術の標準化に関する国際シンポジウムが開催されるなど、ロボット技術に関する関心が世界的にも高まってきている。開発者ごとに独自のルールでロボットの設計が行われている現状では、開発された技術を組み合わせた効率的なシステム構築が難しいことから、ロボット技術の統合を図るためにロボット開発用ミドルウエアの世界的な標準化が期待されており、国際的な協力関係を構築しつつも、戦略的な標準化推進戦略が求められている。
(研究開発)
RTミドルウエアプロジェクトでは、様々なロボット要素を分散オブジェクト技術を適用してモジュール化し、通信ネットワークを介して組み合わせることにより多様なロボットの構築を可能とするロボット用のミドルウエアの技術基盤を確立することを目標に研究開発を進めている。
これまでに、モジュール化を実現するためのコンポーネントフレームワークを提案し、ロボット用プログラム開発を支援するための基本機能に関するRTミドルウエアの開発を進めてきた。具体的には、プロジェクト関係者向けに基本機能となるRTミドルウエアver.0.1.0をリリースするとともに、力センサ、ビジョン、ロボットアーム等に実装してモジュール化した各要素の機能を確認した。
また、将来有望なアプリケーションのひとつの例として居住空間にセンサやアクチュエータなどのロボット要素を分散配置し、これらのロボット要素が協調して動作することで生活を支援するロボットシステム(RTスペース)を構築した。ここでは、必要となる様々なロボット要素モジュールの開発を進めるとともに、それらをアプリケーションとして統合するサービスを集めたツール等をアプリケーション実現機能に関するRTミドルウエアとして開発を進めてきた。RTミドルウエアを用いて構築したRTスペースにより、居住空間内のロボット要素を連携動作させるアプリケーションプログラムを簡単に作成できるようになることが確認され、RTミドルウエアの有効性が確認された。(写真参照)
(標準化)
RTミドルウエア技術の国際標準化を推進するため、日本ロボット工業会内にRTミドルウエア普及調査研究専門委員会標準化ワーキンググループ【主査 水川 真(芝浦工業大学教授)】が組織されている。その活動として、同ワーキンググループの主要メンバーであるNEDO技術開発機構、産総研および日本ロボット工業会は昨年4月以来、定期的にOMGの技術会議に参加して標準化プロセスについて調査してきたが、8月の技術会議(カナダ・モントリオール)において標準化活動のキックオフとなるフォーラムを開催して実質的な活動を開始した。さらに、11月の技術会議(米国・ワシントンDC)において、国際標準化までのロードマップを策定し、OMGでの標準化活動の見通しについて道筋を着けた。
このたび、平成17年1月30日~2月4日に米国・サンフランシスコで開催された技術会議において、OMG内に、より汎用性の高いRTミドルウエア技術の標準化を目指す活動グループ(Robotics Domain SIG)を正式に発足させた。本活動グループでは、これまでにOMGで策定された分散オブジェクトに関する標準仕様のロボット分野への適用検討や、ロボットの固有機能に関するミドルウエアの標準仕様策定作業を実施していく。
今後、平成17年度中の国際標準仕様に関する討議を通じて原案とりまとめを目指し、RTミドルウエアの標準化活動を本格化していく(国際標準化は平成18年度を予定)。なお、平成16年度末に「ロボットの開発基盤となるソフトウエア上の基盤整備」プロジェクトが終了した後は、国内の民間企業・団体にもRTミドルウエアの標準化・普及活動の協力を呼びかけ、コンソーシアムを設立する予定である。