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海底下に眠る「燃える氷」がエネルギー問題の救世主に!?
2008/10/01
地球温暖化が懸念される中で、燃焼時の二酸化炭素排出量が石油よりも少ない天然ガスは、世界的にも需要が伸びているエネルギー資源です。その天然ガスを生産する資源として、メタンハイドレートが大きな注目を浴びています。 メタンハイドレートとは、天然ガスの原料であるメタンガスが海底下で氷状に固まっている物質のことで、火を点けると燃えるために「燃える氷」とも呼ばれています。その体積の約160倍もの豊富なメタンガスを含有し、地震探査によって得られる反射信号から、その存在を推定することができます。 現在、永久凍土地帯や、大陸の周縁部の水深500m以深の海底下の地層、またカスピ海やバイカル湖などの深い水深の湖底でも発見され、世界中の広域に分布していることから、アメリカやインド、中国、韓国など世界各国が国家プロジェクトとしてメタンハイドレートの研究開発に乗り出しており、次世代の天然資源として期待されているのです。
日本の周辺海域にもメタンハイドレートは大量に存在しているとされ、北海道周辺の日本海、オホーツク海、太平洋や、本州から四国、九州西岸に至る太平洋側の大陸斜面などに確認されており、その総面積は約122,000km²(2009年調査時点)。例えば渥美半島・志摩半島沖の東部南海トラフ海域だけでも、国内の天然ガス使用量の11年分に相当する量が埋蔵していると推定されています。 エネルギー資源の多くを輸入に頼っている日本。もしメタンハイドレートを資源として活用できるようになれば、自国で資源を長期的かつ安定的に確保できるため、円安傾向の中、燃料輸入量の増加で膨らみ続けている貿易収支赤字を縮小でき、天然ガスの低価格化に繋がるのではないかと考えられています。また、世界的にも天然ガスの需要が伸びる中、資源・エネルギー外交においても、日本が「資源大国」となることで優位な立場になる可能性もあるのです。
しかし、メタンハイドレートから天然ガスを生産するのは容易ではありません。固体であるメタンハイドレートは井戸を掘っても自噴しないため、ガスと水に分解してから採取する必要があります。 2001年、経済産業省が「メタンハイドレート開発促進事業」をスタート。これを受け産総研は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構とともに研究コンソーシアムを設立。2009年にはメタンハイドレート研究センターを発足し、生産技術の評価や手法の開発に取り組んできました。様々な方法が検討される中、最も効率的な方法として採用されたのが「減圧法」です。減圧法とは掘削した井戸の中の水を汲み上げ、周囲の圧力を減らすことでメタンハイドレートの分解を促し、井戸に流入してきたメタンガスと海水を分離し、海上でガスを回収する方法。2008年にはカナダでの陸上産出実験を成功させ、2013年、世界初の海洋産出試験を東部南海トラフ海域で実施。6日間で12万m³もの天然ガスの産出を確認し、今後の商用生産への可能性を示すものとなりました。
エネルギー資源の商用化には、産出にかけるエネルギー量を上回る量を長期的に安定して生産できる必要があり、海底に多数の井戸を掘るメタンハイドレートの場合、井戸1つあたり1日数万m³以上の産出量が目安とされています。現状、産出実験の過程で井戸の中に砂が流れ込むなどの生産障害が認められており、より大量生産と長期安定生産に重点を置いた技術の開発が急務となっています。現在は、新たに開発した「強減圧法」(減圧法の発展形で、これまでよりも低い30気圧以下に減圧して分解を促す方法)の効果を検証中です。 産総研は、メタンハイドレートの生産技術に関する基盤機器をトータルで持っている唯一の研究機関であり、産出技術で世界のトップを走っています。しかし、世界各国がメタンハイドレートの研究開発に凌ぎを削る中、また一方ではアメリカでシェールガスの開発が進むなど、刻々と変化するエネルギー外交においてアドバンテージを取るには、一般企業の参入も視野に入れ、早急に商用化を進めることが必要と言えるでしょう。
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