昆虫と細菌の内部共生
\研究者にきいてみた!/
コロモジラミの吸血を体験する広報部メンバー。人の生き血しか受け付けないため、研究者みずから吸血させて飼育しているんです。ヒトとシラミは「共に生きる」間柄といえますね。
今日は生きものの“共生”の研究現場へ!昆虫と細菌の内部共生が専門の生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループの古賀 隆一研究グループ長をたずねました。
Q. カメムシのプレス(2022/08/05プレスリリース)を見ました!カメムシのおなかには細菌が住んでるの?
A. はい。一部のカメムシは必須共生細菌という、それなしでは生きられない細菌をおなかに飼っています。カメムシだけでは利用できない食べ物をエネルギーにする、大事な役割を担っているといわれています。
Q. 研究で気をつけていることは?
A. いかにカメムシを生物学的に“きれい”に飼うかです。雑菌が入らないように細心の注意を払っています。また、身の危険を感じるとカメムシは「例の」臭い匂いを発しますが、これは彼らにとっても毒なので、ストレスをかけない様に丁寧に扱ってあげています。
Q. 使うカメムシはどうやって確保するの?
A. 研究室でのびのびと育てた母虫に産んでもらった卵を実験に使っています。チャバネアオカメムシは一度に14個の卵を産むのですが、全ての卵の中に成長中の幼虫が見えるものだけを選んで使います。
Q. カメムシは何を食べているの?
A. 生のピーナッツとビタミンCを加えた水です。実験用のカメムシなので、余分な菌が入らないよう殺菌したものを与えています。口から消化液を注入して、どろどろになったピーナッツを吸うんですよ。野生では果物を食べちゃうので、「害虫」と言われています。
Q. 今回の研究のポイントは?
A. 元々の必須共生細菌と大腸菌を入れ替えました。大腸菌に感染すると体は小さく・体の色は褐色になり、成虫になることが難しいかったのですが、代を重ねるうちに体が大きく、体の色も正常になってきました。なんと、大腸菌が共生細菌に進化したのです!
今回カメムシに感染させた大腸菌は、突然変異を起こしやすい(DNA修復酵素を作れないよう処理した)ものです。-80 ℃の冷凍庫に、研究で使用したすべての世代の大腸菌を保管しています。これは、研究の命なんです。
先日紹介したドリルのように泳ぐ細菌。こちらもカメムシに共生する細菌です。今回の研究では、大腸菌の進化の結果、べん毛運動をしなくなるという結果でした。これは、カメムシ一途・カメムシ以外もう見向きもしない…!という大腸菌の宣言なのでしょうか。ワクワクしますね。
Q. 夢は何ですか?
A. 目の前で共生を作りたいです。最新の技術を用い、一から細菌を作って共生関係を築くことができたら、どんなに興味深く面白いでしょうか。
今後も研究から目が離せません!
こぼれ話①
今はカメムシ含む昆虫の研究をしている古賀研究グループ長ですが、産総研に来る前は虫が苦手だったそう…。慣れ、しばらくするとかわいく見えるそうです。確かに取材後にはカメムシがかわいく見えました(笑)
こぼれ話②
古賀研究グループ長の所属する研究室では、たくさんの生物、特に昆虫を飼育してます。たくさんあるインキュベーターで育てているのですが、森山主任研究員は十数種類の昆虫を飼っていて、グループでもトップ!
こぼれ話③
この研究室では冷蔵庫や冷凍庫に山の名前がついています。昆虫を取ってきた場所かなぁと思いきや、古賀研究グループ長の趣味が山登りだからだそう。