産総研マガジンは、企業、大学、研究機関などの皆さまと産総研をつなぎ、 時代を切り拓く先端情報を紹介するコミュニケーション・マガジンです。

産総研と未来の技術を創りませんか

産総研と未来の技術を創りませんか

2019/04/30

産総研と未来の技術を創りませんか 経済的価値と社会的価値の両立を目指して

中鉢 良治 理事長の写真

     産総研LINK読者の皆様には、誌面で幾度かご紹介しましたが、産総研は設立以来、社会と産業の持続的な発展に貢献するために、基礎研究から応用研究までを切れ目なく、一体的に推進してまいりました。そして2015年4月に始まった第4期中長期計画においては、研究成果を産業界のニーズと結び付け、事業化・製品化を進める技術の「橋渡し」を重点事項に設定し、全所を挙げて取り組んでまいりました。2019年度は中長期計画の最終年であり、「橋渡し」の仕上げの年となります。

     皆様が日々の研究開発や事業活動の中で実感されているように、人工知能、IoT(Internet of Things)、ロボット、バイオテクノロジーなど新しい技術の進歩は目覚ましく、人々の生活を大きく変えようとしています。数年前までは夢物語と思われていた自動運転技術の実用化は目前に迫り、人工知能やロボットを応用した製品が企業活動や個人の生活の場で使われ始めています。

     しかしその一方で、産業発展による負の側面も顕在化してきました。地球温暖化が原因の一つとされる異常気象が世界各地で観測され、多くの科学者が警鐘を鳴らしています。日本でも昨年は記録的な猛暑に加え、多くの自然災害を経験したことは記憶に新しいところです。加えて産業廃棄物や家庭から出るゴミの問題は、依然として自然環境や生態系への影響が懸念され、また資源の枯渇や食糧問題は解決されないまま、先送りされています。

     このような中、国連は2015年、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)」を 採 択 し、持続可能な社会を構築するための17の目標と169のターゲットを定めました。このSDGsの採択以降、「持続可能な社会」に対する関心は急速に高まり、産業界にあってもESG(Environmental、Social、Governance)を企業行動の指針に加えたり、投資対象の評価項目とする動きが高まっていることは、ご存知の通りです。

     本年4月、約30年続いた平成の時代が終わります。戦後の昭和、平成と70年余にわたり、企業は日本の経済成長の主役として、「経済的価値」の追求を最大目標とし、事業活動を続けてきました。このことの重要性は今後も変わりませんが、それとともに、「社会的価値」の創出が企業に期待される時代になってきました。平成を超えて令和へ、未来に続く企業は、「経済的価値」を向上させることで人々の生活を豊かにするだけでなく、「社会的価値」も生み出し、二つの価値を両立させることで、安全で安心な社会の構築に資するものでなければなりません。

     産総研は設立当初から、「社会の中で、社会のために」をスローガンに、社会とともに発展し、持続可能な社会構築を目指す活動を続けてまいりました。研究活動の中核をグリーン・テクノロジー、ライフ・テクノロジー、インフォメーション・テクノロジーに定め、企業では取り組みが難しい非競争領域の基礎的・基盤的研究から、企業と協力して事業化・産業化を目指す技術開発までを幅広く推進しています。

     産総研には世界水準の研究開発シーズが多く存在しています。これらのシーズは、企業ニーズにマッチし、両者が協力することで、製品化・事業化が実現します。現在、産総研内には企業名を付した連携研究室「冠ラボ」が10室設置され、当該企業の戦略分野における連携研究が進められています。

     一方、大学とは基礎研究の成果をいち早く実用化に結びつける研究を共同で進めるべく、7つの有力大学のキャンパスにオープンイノベーションラボラトリー(OIL)を設置し、人材交流と共同研究を推進しています。

     また、東京大学柏Ⅱキャンパス内に設置した産総研柏センターや臨海副都心センターに新たにできたサイバーフィジカルシステム研究棟(この号で特集)では、人に寄り添ったAI技術の研究を、産学官一体で今年度から本格的に開始します。

     私たちは「大学よりは企業に近く、企業よりは大学に近い」研究機関として、産業に関連する多様な技術を、さまざまなパートナーと協力して開発する「マルチオープンプラットフォーム」として、連携と共創に積極的に取り組んでいます。そして未来の技術を企業の皆様とともに考え、創り上げるパートナーとして、あるいは研究開発アドバイザーとしてお役に立てる研究機関を目指しています。

     産総研LINKを読まれている企業や研究機関の皆様、ご関心のある研究テーマや詳しい内容を知りたい研究成果などがありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

     皆様のご要望にお応えできますよう、所員一同努めてまいります。 

     一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。

    理事長

    中鉢 良治

    Chubachi Ryoji

    中鉢 良治 理事長の写真

    この記事へのリアクション

    •  

    •  

    •  

    この記事をシェア

    • Xでシェア
    • facebookでシェア
    • LINEでシェア

    掲載記事・産総研との連携・紹介技術・研究成果などにご興味をお持ちの方へ

    産総研マガジンでご紹介している事例や成果、トピックスは、産総研で行われている研究や連携成果の一部です。
    掲載記事に関するお問い合わせのほか、産総研の研究内容・技術サポート・連携・コラボレーションなどに興味をお持ちの方は、
    お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

    国立研究開発法人産業技術総合研究所

    Copyright © National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
    (Japan Corporate Number 7010005005425). All rights reserved.