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あなたの研究アイデアが “かたち”になる!

あなたの研究アイデアが “かたち”になる!

2016/03/31

あなたの研究アイデアが “かたち”になる! 私たちがチームで対応します!産総研のナノプロセシング施設(NPF)を、ぜひご利用ください

研究者たちの写真
    KeyPoint肉眼で見えないほど微細な構造をもつ電子デバイスなどの微小な機械部品は、次代の産業創出の基礎を担う部材として期待が大きい。そのため、新しいナノデバイスや材料の研究開発に取り組んでいる企業も多いが、アイデアがあっても、特殊な装置がなければ試作や計測・評価ができず、実際の開発には結び付かないのがナノの世界だ。では、装置をもたない企業には、研究アイデアをデバイスや材料という“かたち”にするチャンスはないのだろうか。産総研はそのような企業に手を貸したい。産総研には外部の企業や研究者が使える共用施設、ナノプロセシング施設(NPF)があり、装置を使用するのに必要なノウハウや知識の提供も行っている。ナノテクノロジーの研究を進めていて、試作装置に困っている企業の方、計測・評価に課題を抱える企業の方は、産総研に、ぜひご相談いただきたい。
    Contents

    ユーザーの要望に応える装置を備えたナノプロセシング施設(NPF)

    多田ナノプロセシング施設(NPF)は、産総研の発足と同じ2001年にスタートしました。目的は、所内の研究者はもちろん、外部の企業・大学の方にも自由に使える施設を提供することで、新産業の創出に寄与していくことでした。

     産総研の共用施設ステーションでは、先端ナノ計測施設(ANCF)、超伝導アナログ・デジタルデバイス開発施設(CRAVITY)、MEMS研究開発拠点、ナノプロセシング施設(NPF)、脳機能計測評価施設、蓄電池基盤プラットフォーム、電子顕微鏡施設、高分解能核磁気共鳴(NMR)施設、分析施設、試作施設のほか、スーパークリーンルーム(SCR)を含めて11の施設を管理しています。その中でもNPFは、新しいナノデバイスや材料の研究開発に役立つツールとして、多くの企業や研究者の方に使っていただきたいと考えている施設の一つです。

    NPFでは、i線ステッパ、マスクレス露光装置をはじめ70台以上の装置をそろえ、日々維持管理し、ユーザーからのさまざまな要望に応えています。これからの時代のニーズを考え、原子1個分の薄さで膜厚を制御して薄膜を緻密に形成できる原子層堆積(ALD)装置や、材料の電気特性を評価するナノプローバを新たに設置し、 2014年度から利用いただけるようにしました。

    浅沼ナノレベルの微細加工を行うために必要な装置は、どれも高度な技術を用いて作られているので、安いものでも数百万円、高いものは数億円します。クリーンルームの給排気システムや温度・湿度を調整するエアコンなどの電気代でも年間1500万円程度のコストがかりますし、故障した装置をメンテナンスする費用も必要です。

    多田各企業が個別に十分な研究予算を確保することは、難しい時代に入ったと聞いています。NPFは外部の企業や研究者の方に使っていただける施設です。ここから、多くの新しいナノデバイスや材料が生まれる、オープンイノベーションプラットフォームになることを目指して運営しています。

    産総研が蓄積した知見や情報を活用開発期間の短縮にも貢献

    多田NPFの最大の特徴は、単なる装置貸しではない、という点にあります。NPFには、ナノエレクトロニクスの技術に精通している多くの専門家がいます。装置を貸すだけではなく、利用に関する技術相談やオペレーション中のトレーニングを通して、産総研がこれまで蓄積してきたナノテクノロジーの知識や技術も提供します。

     NPFの外部ユーザーには企業の方も大学の方もいます。問い合わせの内容もさまざまで、最初から「この装置をこの目的で使いたい」という具体的な依頼もあれば、「こんなことをやりたいが、どうしたらよいか」と迷いながらのご相談も受けます。使いたい装置が明確な場合でも、詳しく聞いているうちに「別の装置を使った方がよいのでは」などとアドバイスすることがありますね。

    浅沼研究開発を行う上で欠かせないことに“条件出し” があります。例えば、薄膜をつくる場合、どのような条件であれば希望する性質の薄膜を生成できるかを把握することに、まず時間がかかります。ところがNPFでは、産総研がこれまで蓄積してきた成膜に関する知見と情報を共有できるので、ある程度の条件出しは済んでいると言えます。また、高度な装置を使いこなすための技術を身につけた人材を確保するのも、コストと時間がかかりますが、NPFではこれら装置の操作に長けたスタッフが協力・支援します。

    有本自社で所有することが難しい特殊な装置が使え、専門スタッフの知識やノウハウを活用することができるので、金銭的なコストのみならず研究開発の期間も節約できると思います。

    ユーザーは、所内の研究者より外部の企業の方が多いですね。

    多田産総研では、中小企業を支援していこうという経済産業省の方針を受け、所内で検討し、NPFについてはANCF、CRAVITYとともに、中小企業*1に対する共用施設利用料を半額にしています。これにより対象となる企業の利用が大幅に増えました。

    浅沼NPFでは、国の事業である「ナノテクノロジープラットフォーム事業*2」の支援を受けているので、原則として、利用後には利用報告書を公開していただきます。一方で、成果を一切公開したくないユーザーもいらっしゃいます。その際は、公開した場合より利用料金が割高になりますが、非公開で利用することもできます。産総研の共用施設等利用約款では、装置の利用により発生した知的財産や有体物は、原則としてユーザーに帰属すると定めています。約款に基づく契約手続きもスムーズで、利用申込みから原則10日以内で手続きが完了します。

    他機関との連携でワンストップソリューションを提供

    多田ユーザーの相談内容を理解し、どの装置でどのようなことができるかを把握して進めることで、他機関と連携しながら提案をするのも、私たちの役割です。

    浅沼企業の研究開発に関わることなので、ここで具体的に示すことはできませんが、「こういうことがやりたい」という相談に対し、NPF以外の産総研の装置を紹介するだけでなく、「それなら別の研究機関の装置でできます」と提案することはよくあります。私たちはつくばにある他機関の施設・装置の種類や、そこでどのようなことができるかについても情報を収集しているので、ユーザーの要望に応じて最適な施設を紹介しています。

    有本つくばには、産総研を含む4つの中核機関で構築する「つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)*3」というオープンイノベーション拠点があります。ここでも、それぞれの機関が保有するナノテクノロジーの共用施設について、利用手続きの共通化とワンストップ化を進めています。NPFに届いたユーザーの要望を、他の中核機関へつなぐことで、つくばにある共用施設の設備、人、知識の全体を活用した最適解を提供できるよう体制を強化しているところです。利用を希望するユーザーの時間とコストを下げるため、TIA-nano内の組織間の垣根を低くし、人と施設、装置を連携させていく活動です。

    どんなことでも気軽に技術相談を

    浅沼アイデアはあっても知識や経験がないと、何から始めてよいかわからない。そんなときでも、気軽に私たちにご相談いただきたいと思います。実際、そのようなお問い合わせから始まる技術相談も少なくありません。

    ナノエレクトロニクス分野の企業が、製造プロセスの一部だけNPFの装置を使うケースや、新たな材料を試したいが自社の装置では試せる材料に制限があるため、NPFの装置で、というケースもありますね。産総研では、他のユーザーや装置の稼働に大きな影響が出ることが予想されない限り、幅広い用途で利用していただいています。

    有本私たちと各装置を担当するオペレーター(テクニカルスタッフ)が実際にお話を聞きながら、最適なソリューションを提供していきます。技術相談はいつでもNPFのウェブサイトで受け付けています。また、利用できる装置の周知とユーザーの拡大を目的として、年に数回、実践セミナーも開催していますので、ぜひご参加ください。そういった場を通じて新たな利用につなげたいと考えています。

    浅沼NPFをはじめとする産総研の共用施設は「研究のアイデアを“かたち”にする場」です。自社ではナノテクノロジーの研究開発部門をもっていない企業の方にも、どんどん使っていただきたいですね。

    多田ナノテクノロジーの研究で、施設や設備、計測・評価などで課題がありましたら、「そうだ、産総研の共用施設があった!」と思い出してください。NPFスタッフ全員が全力で、みなさまの研究アイデアを“かたち”にするお手伝いをさせていただきます。

    ナノプロセシング施設(NPF)の利用方法

    *1: 中小企業支援法第2条に定める「中小企業者」。[参照元に戻る]
    *2: 2012年度に始まった文部科学省の委託事業で、ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウをもつ機関が緊密に連携して、全国的な設備の共用体制を共同で構築する。[参照元に戻る]
    *3: つくば市内にある4つの研究機関(産総研、物質・材料研究機構、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構)が運営する日本最大のナノテクノロジー研究・教育拠点。活動の一つとして、研究開発施設や装置の外部利用によるオープンイノベーションを推進している。2016年4月からは、東京大学も参加。[参照元に戻る]

    つくばイノベーションアリーナ推進センター
    共用施設運営ユニット
    共用施設ステーション
    ステーション長
    (兼)ナノエレクトロニクス研究部門

    多田 哲也

    Tada Tetsuya

    多田 哲也ステーション長の写真

    ナノエレクトロニクス研究部門研究主幹
    (兼)つくばイノベーションアリーナ推進センター
    共用施設運営ユニット
    共用施設ステーション
    (ナノプロセシング施設(NPF)リーダー)

    秦 信宏

    Hata Nobuhiro

    秦 信宏研究主幹の写真

    つくばイノベーションアリーナ推進センター
    共用施設運営ユニット
    共用施設ステーション
    主査
    (兼)ナノエレクトロニクス研究部門

    浅沼 周太郎

    Asanuma Shutaro

    浅沼 周太郎主査の写真

    つくばイノベーションアリーナ推進センター
    イノベーションコーディネータ

    有本 宏

    Arimoto Hiroshi

    有本 宏イノベーションコーディネータの写真

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    産総研
    つくばイノベーションアリーナ推進センター
    • 西事業所 〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1

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