「この研究が市場に出るまでに、どのくらいかかりますか?」
この春入学したばかりの高校1年生からナイスな質問が飛び出します。
千葉県立柏の葉高等学校情報理数科1年生40名が2021年4月22日、授業の一環として産総研柏センターの見学に参加しました。
コロナ禍ということもありますが、「人間拡張技術」について知ってもらうことを目的に、アバターロボットによる遠隔での見学です。
「さあ皆さん、ロボットに乗り込みますよ!」
パイナップル博士こと小島一浩研究チーム長(人間拡張研究センター 共創場デザイン研究チーム)の掛け声でスタート。
1階エントランスホールで出迎えたのは、渡辺健太郎主任研究員(人間拡張研究センター サービス価値拡張研究チーム)。
今回の見学コースは3階になるため、アバターロボットを乗り換えて瞬間移動します。
「離れた所に居ながら施設の中を移動して見て回る」これもひとつの人間拡張技術です。
先ずは所長室を訪問。
「所長さんは、どんな研究をされていたのですか?」
「超微細加工の研究です。1mmの1/100000の線を描いていました」
パイナップル博士の質問に、廣島洋柏センター所長が自身の取り組んでいた研究(エレクトロニクス・製造領域)について触れる場面もあり、産総研の研究の多様性を伝えます。
次に向かったのは、生活計測室です。
「こんにちは」
アンドロイドロボットがお辞儀をして出迎えました。
まばたきをしながら、唇を動かし、アンドロイドの表情が変わります。
「私たちはこのアンドロイドロボットを医療や介護、教育の現場で活用するための研究をしています」
田中秀幸研究チーム長(人間拡張研究センター 生活機能ロボティクス研究チーム)がアンドロイドロボットについて紹介をしました。
「空気圧で動くと言っていましたが、なぜモーター等を使わないのですか?」
あえて空気圧駆動にしていることの理由について、高校生から質問が出ました。
「医療や介護などの現場でコミュニケーションのサポートをするには、より「人」に近い存在として認識されることが大切です。モーター音などが発生してしまうと、その「人」らしさが損なわれてしまいます」と田中チーム長は説明しました。
オープンスペースでセンシングデバイスのデモンストレーションを行ったのは、金澤周介主任研究員(人間拡張研究センター スマートセンシング研究チーム)。
「この研究が市場に出るまでに、どのくらいかかりますか?」
「市場に出た時は、いくらくらいで売られるようになりますか」
高校生からの鋭い質問が。
金澤主任研究員は驚きながらも真っ向から答えます。
「この研究は実用化が目前の段階まで来ています。3年以内には実用化を成し遂げたい。そのためにこの成果を事業化してくれる企業さんとの連携を進めています。」
「人々が安心、安全に暮らすためのセンシングデバイスなので、コストの部分でも多くの人が手軽に使えるようにする必要があります。安価に効率よく作るための製造技術についても並行して研究を進めており、産総研柏センターにはセンサーを試作できる設備も整っています。」
柏の葉高校の皆さんからの積極的な質問に応えることで、産総研の研究が企業への橋渡しを経て社会に出ていくプロセスやエコシステムについても紹介することができました。
今回参加いただいた高校生も大変楽しんでいただけたようです。
今回の施設見学の前から、なんとなく人間拡張というものがあるということを知っていた方が多かったようですが、具体的な技術を体感いただいて、より社会の中での使われ方にイメージが深まったようでした。
今回のツアーの経験を通して新入生にどのような「気付き」から行動変容が起きたのか?
担任の先生からフィードバックを頂いて、次回ツアーの経験デザインに活かしていきます。
人間拡張研究センター
小島一浩研究チーム長(共創場デザイン研究チーム)
渡辺健太郎主任研究員(サービス価値拡張研究チーム)
田中秀幸研究チーム長(生活機能ロボティクス研究チーム)
金澤周介主任研究員(スマートセンシング研究チーム)