第19回千葉県福祉機器展2025(主催:千葉県・千葉県福祉ふれあいプラザ)が2025年11月15日、けやきプラザ(千葉県我孫子市)で開催され、産総研柏センターも協力機関として展示とワークショップを実施しました。
展示では、厚生労働省「介護現場の生産性向上に向けた介護テクノロジー開発等支援事業」の一環として実施する「産総研 柏リビングラボ」の動画や資料で、介護ロボットなど新たなテクノロジーの開発、実証、普及を目指す企業に対して行う支援について紹介しました。
柏センターのアザラシ型ロボット「パロ」も一緒に出張して、大活躍でした。
戸塚健一さん(人間社会拡張研究部門)と柏センターのパロの「オーリー」
千葉県福祉機器展では、柏リビングラボのメンバーが継続的にワークショップを開催してきました。
今回のテーマは、「食」。
ワークショップでは、介護福祉の勉強をしている高校生・大学生、介護福祉関係者、高齢者という立場の異なる方々が6、7名で1グループとなり、全国福祉用具専門相談員協会(ふくせん)の方々がファシリテーター となってワークショップを行い、グループで考えた内容を30秒CMとして実演します。
進行は産総研人間社会拡張研究部門 副研究部門長の渡辺健太郎さん。
産総研研究者も各グループをサポートします。
年齢も経験値も全く異なるメンバーで、果たして30秒CMを作ることができるでしょうか。
お題は「食べる楽しみ」を生み出すロボット
食べることは、人が生きていくために必要な行動です。
「食べる」という動作が自分ひとりでは難しくなった時、楽しく食事ができるような工夫として、どんなロボットがあったらいいと思いますか?
好きなものを自分のタイミングで味わうことができたら、誰かと一緒に食べる楽しさを共有できたら、介護の現場には健常者には想像が難しい様々な課題があります。
未来のロボットが生み出す新しい食事体験を表現する30秒CMを演じてみましょう。
場面設定:10年後の在宅環境(一軒家、マンション、サービス付き高齢者住宅など)
登場人物:高齢者、家族、介護スタッフ
アイスブレイクは「今までで一番記憶に残っている食事」
ワークに入る前に、グループ内の緊張をほぐすアイスブレイクタイム。
自己紹介と併せて食事にまつわる思い出エピソードを披露します。
各グループに配置されたふくせんの皆さんが、参加者の話を引き出します。
皆さんのエピソードを共有して、アイスブレイクは成功のようです。
話題提供 食事介助ロボット Obi(オビー)
ワークショップの導入のお話として、ダブル技研株式会社の堀込貴嗣さんより、食事介助ロボットについて話題提供がありました。
Obi(オビ―)は、食事介助の必要な方が、自身の好きな量や順番、タイミングで食べるための介助をするロボットです。
食介ハラスメントという言葉をご存じでしょうか。
堀込さんは介護現場の現状と課題について触れ、要介護者のストレスになる食事介助場面でのハラスメントの具体例(無理強い、急かす、配慮に欠ける、機械的な対応、不適切な言葉遣いなど)を紹介しました。
グループワーク1 CMのキャッチフレーズを作成しよう!
食事介助にまつわる体験や課題について話し合い、それを解決するにはどのようなロボットがいるとよいかを考えます。
はじめは皆さん下を向いて考え込んでしまいましたが、徐々に自身が体験したことを語りだしました。
そしてどのようなロボットがいたらいいか、ブレーンストーミングに入ります。
課題や解決策を思いつくまま付箋に書いて貼っていきます。
煮詰まっていそうなグループには、渡辺さんがさりげなくサポート。
笑顔が見えるグループは活発に進んでいる様子。
しかしキャッチフレーズ作りにはどのグループも苦戦しているようです。
グループワーク2 いよいよシナリオ作りに挑戦
CMのコンセプトが決まったら、ストーリーボードを使って4コマ漫画のようなシナリオづくりです。
作業がのってくると、立ち上がるみたいですね。
泣きの3分延長も終了し、いよいよCM発表です。
考えたCMを寸劇で発表します。
「確かに、確かに!」
コント仕立てで笑いを誘う作品もあり、全てのグループが発表することができたことが何よりの収穫です。
1人で食べたい、みんなと食べたい。
色々な場所で食べたい。
食事の介助にも多様なニーズがあることを理解する機会になりました。
介護支援ロボットのインクルーシブデザイン。
産総研の研究者と共に課題解決に向けて取り組んでいきませんか。
今回はロボットについて考えるワークショップでしたが、ロボットを使わない選択をするグループもありました。
それは介護現場で働く方の体験の話から、今現場が抱えている課題を解決するための議論へと展開したためです。
介護福祉業界を目指す学生さんには、とても刺激になる機会だったのではないでしょうか。
プロジェクトリーダー 渡辺健太郎さんコメント
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毎年恒例となっている本ワークショップですが、今年は特に「食」という誰にとっても身近で、生活に不可欠なトピックを話題に取り上げました。
参加した皆さんの作り上げた「CM」を見ながら、食が高齢者のみならず、人の生活にもたらす意味や影響の多様さにあらためて気づくことができました。
そうした食の現場をいかに豊かな体験にできるか、今回のワークショップが、それぞれの立場から取り組むきっかけになればと思っています。
参加いただいた皆様、あらためてありがとうございました!
渡辺 健太郎
産業技術総合研究所 人間社会拡張研究部門 副研究部門長
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