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柏センター ニュース

2024/12/19

【HARC】人間拡張研究センターシンポジウム HARCS2024 取材レポ「人間拡張とは」②

「Xperigrapher® 体験をデザインするプラットフォーム」
大山 潤爾さん 
研究に使える VR の評価用アプリケーション「Xperigrapher®」の紹介をしていた大山さん。
VRで体験できるコンテンツの中の CG 等をマウスで動かして簡単にレイアウト変更でき、別で作られたコンテンツでもXperigrapher®に簡単に読み込むことができるそうです。
 体験している時の人の動作や視線、口の動きなど全て記録できるので、どういう場面で人はどう行動するのか、データを分析することができます。
コンテンツ内での行動を完全に記録してリプレイできるため、数日後でも数年後でもタイムマシンで記録時に戻ったかのようにその場面を再現することができると話していました。

大山 潤爾さん

大山さんにとっての人間拡張とは:人間拡張には、行動や身体の拡張と、心や脳の認知機能の拡張の両輪が必要です。
自分は認知の支援や拡張を研究しているので、行動や身体の拡張を研究している人たちと同じセンターで共同することで、総合的な人間拡張を考えています。



 
「人の支援を行うロボット技術開発のための解析・評価」
今村 由芽子さん
今村さんはシミュレーションを活用して、介護ロボットやセンシングのための機器の評価や設計の支援を行っています。
介護ロボットのように人が使うことで初めて意味を持つ技術は、人無しで評価することはできませんが、かといって対象者に来てもらい、実際にやってもらうというのは、色々な面で大変です。
そこで、シミュレーションモデルを活用し、人の負担軽減やコスト削減など、ロボット機器開発を促進するための評価技術の研究をしています。

今村 由芽子さん

今村さんにとっての人間拡張とは:人がやりたいと思っていることをアシストして、その人の望むような機能や状態に近づけるための技術

 
「人間機械統合システムにおける運動介入の透明性設計」
松原 晟都さん
人間と機械を上手く運動合成させるシステムを研究している松原さん。
例えば、右足を出そうとしたのに左足をアシストしてしまうと、転倒のリスクがあります。機械のアシストを意識しなくても自然と動けるようにしたい、いわば、「透明な」機械の介入を実現したいというのが主な研究テーマです。
「人間の動きの予測にあった介入」「精密な運動結果の制御」といった課題に対し、刺激を与える良いタイミングはどの辺かといったことや高密度電極の筋電気刺激デバイスについて研究していると話してくれました。

松原 成都さん

松原さんにとっての人間拡張とは:人間と機械を上手く運動合成することです。いずれVRや社会に向けた活用を考えていきたいと思います。

 
センシング技術によるスポーツ運動解析・評価
加地 智哉さん
元水泳選手の加地さんは、「クロールで足を一生懸命動かしても大して進まないのはなぜか?」という疑問を解明するため、バタ足の運動解析に取り組みましたが、従来のマーカを使った方法では、気泡により運動データが取れず苦悩したそうです。
そこで、慣性センサとデジタルヒューマン技術を組み合わせた方法を導入したところ、全身の運動解析ができ、圧力センサとの併用によりクロールの足の運動と力の大きさ・作用方向の評価が同時にできるようになり、足の動きによる抵抗力の発生が判明しました。
この方法は数分で運動解析ができ、データを速やかにフィードバックすることが可能なため、指導現場への応用も期待されます。

加地 智哉さん

加地さんにとっての人間拡張:人が自身の限界を超える際に、「超える」という挑戦を技術により解析・評価・フィードバックして支えることです。




人間拡張研究センターシンポジウム HARCS2024 取材レポ「人間拡張とは」③につづく


人間拡張研究センターシンポジウム HARCS2024 取材レポ「人間拡張とは」①
国立研究開発法人産業技術総合研究所