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2022/01/31

【HARC】社会実装に向けた人間拡張研究センターの技術紹介① 折れても切れても安全「人が纏えるリチウムイオン電池」の開発

IoTシステムの最先端技術展「MEMS SENSING& NETWORK SYSTEM 2022」が2022年1月26日~28日、東京ビッグサイトで開催され、産業技術総合研究所(産総研)人間拡張研究センターも出展し、社会実装に向けセンシングデバイス、電池、高精度マーカなどの研究成果を一般に公開しました。

人間拡張研究センター 鈴木宗泰さん
鈴木宗泰主任研究員(撮影時のみマスクを外しています)



色々なことに挑戦できる、そんな電池の開発に励んでいると話すのは、鈴木宗泰主任研究員(人間拡張研究センター ウェルビーイングデバイス研究チーム)。
ウェアブルデバイスが注目を集める昨今、機能性が上がれば上がるほどその消費電力も大きくなります。
そうなると、体のどこかに大きな電池を着けなければならない。
しかし、現在のリチウムイオン電池は硬くてかさばり、塊のようになっているため、人の体に着けると違和感が生じたり、より大きな電池になると身体動作に影響を与えてしまったりなどの課題が出てきます。
そこで折れても切れても大丈夫なフレキシブルな電池を服の上に実装できるような電池を目指して開発に取り組んでいます。

ご紹介している電池は、従来のリチウムイオン電池の電極材料や企業から入手可能な材料から作った、折り曲げても短絡せず、切断しても発火しないような安全性の高い電池です。

折れても切れても安全なリチウムイオン電池

このリチウムイオン電池は、歩行計測デバイスを動かすことを目的としていたので、材料開発は全く行わずに、作り方だけを工夫しました。
初めは全く作れませんでした。
なぜ、失敗するのかという疑問を解決していくうちに、1cm2の大きさのものができるようになり、20cm2の大きさが15枚作って1枚できるようになりました。
しかし、デバイスを動かすためには電池を20枚くらい作る必要があります。
歩留まりを上げようと試行錯誤を繰り返すうちに、固体ポリマー電解質の層に入れたガラス繊維の織物を、電極に触れさせないことが鍵だとわかりました。
すると6枚作って全てが成功したのです。
「あの時は本当に嬉しかったです」と鈴木さん。
この工夫で28枚作製したものは25枚が動作しました。
3枚は手作り作業のため手元が狂って破損するというアクシデントによるものです。
デバイスを動かすこともできました。 作業ミスが無ければほぼ100%で動作する様になり、折っても切っても大丈夫な電池をたくさん作れる様になりました。

実は折れたということは、機械的にはあまりいいことではありません。
今後の課題として、折れても元に戻るくらいの布のような柔らかい電池の開発に挑戦している鈴木さん。
その挑戦には産総研の多様な研究者の協力が不可欠だと話します。
産総研で材料の研究をする人、デバイス作製を研究する人、運動計測をする人、そのデバイスを使って研究をする人など様々な研究者からの意見をもらい協力を得ながら、鈴木さんは開発に取り組んでいます。

新しい材料を作っても使ってもらうまでに30年という月日がかかっています。
しかし、産総研の中の多様な研究者が協力することで、新しい材料を使った新しい研究を物凄い勢いで回すことができるのではないだろうかと鈴木さんは言います。
既に始まっているプロジェクトでは、2年のうちに1回は回すことができる手応えを感じています。
20年30年かかっていたことを2年3年に縮めることは、様々な研究者にとって物凄く大きなメリットになるはずです。
「いろんなことに挑戦できる、そんな電池です」と、鈴木さんは研究の魅力を語ってくれました。





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国立研究開発法人産業技術総合研究所