IoTシステムの最先端技術展「MEMS SENSING& NETWORK SYSTEM 2022」が2022年1月26日~28日、東京ビッグサイトで開催され、産業技術総合研究所(産総研)人間拡張研究センターも出展し、社会実装に向けセンシングデバイス、電池、高精度マーカーなどの研究成果を一般に公開しました。
駒崎友亮研究員(撮影時のみマスクを外しています)
どこでも電池交換することなく配線がなくても大丈夫なIoTのセンサモジュールの電源として展開を考えていますと話すのは、駒崎友亮研究員(人間拡張研究センター スマートセンシング研究チーム)。
湿度の変化で発電することで、場所による制約をなくそうと開発をしています。(
湿度変動電池 2021年6月2日プレスリリース)
湿度は昼と夜で上がったり下がったりします。
昼は気温が上がって湿度が下がり、夜は気温が下がって湿度が上がり、1日で30~40%の違いができます。
つまり湿度を使えば、どこでも発電ができることになります。
非常に強い潮解性(空気中の水分を吸収して水溶液になる)の材料である塩化リチウムの水溶液は、空気中の水分を吸うときに湿度に応じた濃度まで吸湿する性質があります。
湿度が低い時には水が蒸発して液が濃くなり、湿度が高いと水をたくさん吸収して液が薄くなります。
二つの部屋を設けた構造にしておくと、上の空気に触れた部屋だけが濃くなったり薄くなったりするようにできます。
上の部屋と下の部屋との濃度差ができることで、電気を生み出すことができるのです。
湿度が上がっても下がっても発電ができて、上がり下がりが繰り返される限りは半永久的に発電ができることになります。
駒崎さんは、もともとは潮解性の材料を使った、布の上につける柔らかい湿度センサを作っていました。
温度の差で発電の研究をしている同僚がおり、温度の変化で発電ができるのであれば、湿度の変化でも発電ができるのではないかと考えたそうです。
色々試行錯誤した結果、この仕組みに辿り着きました。
色々な場所に設置する無線モジュール付きのIoTセンサなどの電源に使うのがいいと考えています。
どこでも電池交換することなく配線がなくても大丈夫なIoTのセンサモジュールとしての展開に期待しています。
「メガソーラーみたいにこれで発電所ができないですか」と質問を受けることもあるそうで、「改良されていけば可能性はゼロではないですが、今はまだちょっと早いかな」と笑みをみせました。
駒崎さんの研究は、
産総研『LINK』で紹介されています。
関連記事