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2024/07/05

【柏センター】柏の葉高校情報理数科1年生見学会レポ③ ディスカッション編 「う~ん・・・」研究者を唸らせた質問

高校生からの突っ込んだ質問に、研究者が腕組みする場面も。
「これから」についての質問にどう回答したのでしょうか。
 

これからやってみたい研究は?

質問する高校生 回答する延島研究員

延島:う~ん・・・・・ 難しいなぁ・・・
今、メインで2つの研究を進めています。ひとつはロボットを使った研究を大きなプロジェクトで進めていて、いつまでに何をするかが決まっています。
もうひとつは身体から発する熱を測る研究をしていて、計測するデバイスの開発や、それを使った健康サービスなどを研究しています。こちらは、この先まだどうなるかわかりませんが、産総研の技術を使いたいという企業を通じて、社会に還元できるようにしたいです。

今村:研究者は論文の数で評価される側面もありますが、一方で人の役に立つという軸も大切にしたいと思っています。アシストスーツのように研究成果そのものが人の役に立つこともそうですが、企業の研究開発職の人などの役に立つデータを提供して、色々な分野に発展させてもらう、そのような研究を進めたいとも考えています。

大澤:今、産総研でメタバースや拡張テレワークといったことを研究しています。今後やりたいことは、「人間はどうやったら他者の存在を意識しながら議論することができるのか」ということです。例えば、気候変動について考える時、自分たちの子孫のことを想像しながら議論しなければならないと思うのですが、今さえよければいいという考えの人たちも含めて、上手く議論できるような方法を考えたいです。
自分が考えていることで、社会がよりよくなっていったらいいなと思っています。

 

技術が進歩していった時に、人とロボットの住み分けというか、どういうところが違ってくると思いますか?

質問する高校生 回答する大澤さん

大澤:私の専門は科学コミュニケーションで、産総研に来る前は科学館で「科学コミュニケーター」として働いていました。新しい科学技術のもたらす影響について、正負併せて、研究者だけではない「みんな」でコミュニケーションをする場をつくることを目指す仕事です。そんな私の立場からは、今の「どういうところが違ってくると思うか」という問いに対して、「それをみんなで考えていくための場が必要だ」という風にお返事したくなります。新しいものが作られたとき、人間とロボットとのすみわけはどうある「べき」なのか、コミュニケーションの中で決めていかなければいけないと思っています。
 

ARとかVRとかが生活の中心になってくると、人間の身体が不必要になるみたいな話を聞いたりするのですが、どのように考えていますか?​​​​​

 
質問する高校生 回答する研究者

延島:そもそも人間が少なくなっているから、その代わりにロボットに働かせようということがあります。(遠隔でものごとができるようになってきて)物質の移動とか、人の身体そのものが贅沢なものになってくる。そういう社会もありえるかなと思います。
バーチャルな世界の重要度が増してくるのはわかります。
Society5.0は、物理空間で試行するのが難しいものをバーチャル空間に持って行って、バーチャル空間の中で処理をして、また物理空間に戻すようなことをやりましょうというものですよね。
そうなると、物理空間でやることが無駄だよねという考え方になってくる。
人とのコミュニケーションなどは、既にバーチャル空間でやるようになってきました。リモートでできることは、そちらに依存していくような世の中にはなっていくとは思います。

大澤:技術的な話ではない面から考えたいと思います。思いつくのは、まったく新しい技術が創られた時も、それが実装される社会はそれよりも先に存在しているということです。だからメタバースの「技術」が進歩して、身体が不要になったように見えたとしても、それを実装する時にはもうすでに行われているあれこれをメタバース空間に移行した時に、どんなやり方があるかとか、問題が起きないかとか、いろいろなことを考えなくてはならなくなります。その意味で、「本当に社会の中で身体が不要になる」というのは、それを可能にする技術が開発されることとは違った種類のハードルがあると思います。この部分は、そんなに簡単に進まないし、慎重に進めていくべきなのではないかな、というのが私の考えです。



柏の葉高校情報理数科1年生見学会レポ④ ディスカッション編 高校生へのメッセージ へ続く



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