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産総研:柏センター ニュース お知らせ

2024/07/05

【柏センター】柏の葉高校情報理数科1年生見学会レポ② ディスカッション編 研究者を深堀り

柏の葉高校情報理数科1年生40人と産総研柏センターの研究者によるフリーディスカッション。
高校生たちは、研究に向かうモチベーションを探るべく、研究のやりがいや大変なこと、高校生時代のことなどを深堀りしていきます。
各グループに研究者2名と進行役の谷口所長も加わり、本音で語ったこととは。
<ディスカッション参加者>
柏センター所長 谷口 正樹谷口正樹所長

カメラが好きでカメラを作る人になりたいと思い、大学の応用物理学科に進学。光の研究をするうちに、研究が面白くなり研究者になり、産総研に就職。20年ほど前に研究職からマネジメント側に転向し、現在に至る。

 

サービス価値拡張研究チーム 幸島 明男
サービス価値拡張研究チーム 幸島明男主任研究員
効率よく勉強をするための環境はどういうものかといった、IT技術を使ってよりよいサービスを創り出す研究をしている。最近では、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを使って、周囲の音を測り、その人が何をしているかを認識する技術を研究した。
 

生活機能ロボティクス研究チーム 篠﨑 真良
生活機能ロボティクス研究チーム 篠﨑真良研究員
人の命を救う仕事をしたいと思う中で、医療従事者が使うものを開発して支援することもそれに繋がると思い工学部に進学し、研究者になった。
生体計測を専門として、身体から取り出した情報から身体状態を数値的に評価し、どうすれば健康になるかを評価する研究をしていた。今年度から産総研に入り、センサ技術を使って人々の生活機能の拡張につながる研究をしている

生活機能ロボティクス研究チーム 今村 由芽子
生活機能ロボティクス研究チーム 今村由芽子主任研究員
高校時代にテレビゲームにはまり、デジタルの世界に興味を持って大学は情報系の学科に進学。研究室でアシストスーツの研究に携わっているうちに、そのまま修士課程、博士課程へと進み、研究者になっていた。ヒューマノイドロボットの関わりから、産総研に入り今に至る

運動機能拡張研究チーム 沓澤 岳
運動機能拡張研究チーム 沓澤岳研究員
メンタリストのように人の心を読みたいと思い心理学を専攻したが、研究はメンタリストのそれとは全く違うものだった。自分自身、ものごとを続けることが苦手だったので、人が目標に向けて上手にアプローチする方法の研究に面白さを感じ、気づいたら研究者になっていた。現在は、日々の感情の変化を測る心理測定を研究している。
 

スマートセンシング研究チーム 延島 大樹
スマートセンシング研究チーム 延島大樹主任研究員
電子デバイスや情報技術を使って人に介入することで、パフォーマンスを上げるサポートをしようとする時に、改善方法を考えるための有力情報(その人やその人の周囲の環境がどういう状態にあるか)を計測するセンサーデバイスの研究をしている。
 

サービス価値拡張研究チーム 大澤 康太郎
サービス価値拡張研究チーム 大澤康太郎さん

 
石が好きで、大学は理学部に入り地学を勉強。その後科学コミュニケーションという分野に興味を持ち研究と実践を行ってきた。科学館で働いていた経験もある。現在大学院生として科学技術社会論、科学コミュニケーションという分野の研究をしながら、産総研のスタッフとして「責任ある研究・イノベーション(RRI)」のサポートに従事している。
 
 

研究するうえでの楽しみ・やりがいとは

質問する高校生 質問に応える研究者

幸島:自分の作ったプログラムが予想通りに作動した時は嬉しいですね。また、たくさんのデータを分析するなかで、みんなの役に立つような新たな知見や知識を引き出した時は、やりがいを感じます。

篠﨑:結果が自分の考えた通りにならなかった時に、その原因を考えるのも好きです。原因がわかった時に、その技術の応用先を見つけることもあるので、それがすごく楽しかったりもします。以前は医師と一緒に研究していました。医師が抱える課題は患者さんの治療に関することなので、命にかかわるという現状があります。なにかひとつでも解決につながって、医師の笑顔を見られた時は嬉しかったです。

沓澤:今自分がやっている絵文字に関する研究が、色々なところで興味を持ってもらえていて、日本だけでなく海外からも一緒にやろうと声がかかっています。多くの人に面白いと言ってもらえて、世界の色々なところに行くこともできて、それが面白くて楽しいです。

今村:人を対象に実験をするので、データに個人差が生じます。歩き方でも、歩幅とか筋力とか一つの指標で同じ所に分類された人が同じ道具を使っても、結果が変わる。個人差がありすぎて、上手く結果が出ないことは多いですが、それが面白くてもっと深堀したくなるので、個人差は強敵ですがすごく楽しいです。
 

研究で行き詰った時、アイデアがなかなか浮かばない時の対処法は?

 
質問する高校生 回答する研究者

幸島:行き詰まった時は、家に帰ってコーヒーをじっくり飲んで、深呼吸をする。「よし、また明日から頑張るぞ」って考えるようにしています。長く研究をしてきたので、頑張ってやっていれば必ず結果は見えてくることを知っています。経験ですね。

沓澤:一人で考えていると、何も見えなくなってしまいます。ある程度自分で考えたら、他の人に意見を聞いてみる。相談すると、案外パッと答えが出ることがあります。色々な視点から見てもらえるので、「どうしたらいいと思いますか?」って色々な人に聞いてみるといいですよ。

篠﨑:歩いている時にアイデアを思いついた経験があります。研究から離れる時間を作るのもひとつです。行き詰まった時はバッティングセンターに行って、とにかくバットを振って体からリラックスする。家に帰ってから長めにお風呂に入るとかして、精神的にもリフレッシュして乗り切るようにしています。
 

研究するうえで、これはやってはいけないというものはありますか?


幸島:記録の付け忘れです。プログラムを使って実験する時に記録を付け忘れると、再現できなくなるので、取ったデータは必ず記録すること。

篠﨑:感謝の気持ちを疎かにすることです。自分の研究は人からデータを採らせてもらうので、協力者へのリスペクトを忘れないよう、感謝を持って研究に取り組むよう意識しています。

今村:自分に都合のいいものの見方です。思ったような結果が出ない時に、先入観で論文の方向を進めてしまうと、色々な情報を切り捨ててしまうかもしれない。自分の都合がいいようにデータを見ることがないように、意識しています。
 

ひとつのことをやり続けるのが苦手で、諦めてしまいがちです。研究を続けるモチベーションについて教えてください。

 
質問する高校生 回答する篠﨑研究員

篠﨑:今は研究者ですが、企業に就職するなど色々なことを経験してきました。色々なことを見て、経験していけば、自分が本当にやりたいことが見つかると思います。続かないことを気にするのではなく、自分はいろいろなことを見ることができるタイプの人だと思って、最終的に自分がやりたいことをみつければいいと思います。

幸島:確かに研究者は長く考えなければならないですが、研究者にも色々な人がいて、同時に色々なことに手を出すタイプの人もいます。研究者は、必ずしもひとつのことをつきつめるだけの人ではないです。色々なことをやってみて「気づき」を得るタイプの人もいるので、研究者はこういう人と決めつけず、自分は研究に向いていないと思うこともないです。

研究に入ると時間のやりくりが大変だと思いますが、どのようにしていますか?

質問する高校生 回答する今村研究員

今村:例えば研究成果を発表しなければならない時に、原稿の提出日を目標にして、そこから遡って1か月のスケジュールを立てます。そこから、しっかり時間を確保できる日を予め想定しておいて、集中作業をするようにしています。
 

研究者の食生活について知りたいです。

谷口:大学の時は、実験の合間に食べるとか、夜食が楽しみでした。今はコンプライアンスや労働時間等の関係もあるので、あまりそういうことはないと思います。ただ、昔の名残で、私は今もカップ麺が大好きです。

沓澤:大学院生の時はお酒が好きでずっと飲んでいました。産総研に入ってからは、規則正しい生活になり、それがだんだん気持ちよくなりました。特に食生活にはすごく気を遣っていて、徹底的に取り組んでいます。



柏の葉高校情報理数科1年生見学会レポ③ ディスカッション編 研究者を唸らせた質問 へ続く


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