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産総研柏センター一般公開2024レポート

「点いた!」忍者の通行手形の体験コーナーでは、回路が印刷された薄いシートに小さなLEDを貼りつけ、ボタン電池を使って点灯させる体験を実施。
LEDの表裏、上下を確認しながら慎重に貼る作業は、年齢関係なく皆さんの表情は真剣です。
ボタン電池を合わせてLEDが点灯した瞬間、「点いた」と誰もが声を発していました。
 
忍者の通行手形 忍者の通行手形2

産総研柏センター一般公開を2024年10月26日(土)に開催し、多くの来場者を迎えることができました。
第6回となる今年のサブタイトルは、「研究者は忍者の仮の姿⁈」。
人間拡張研究センターの研究チームがそれぞれの研究をわかりやすく紹介することを目的に、技術を忍術に見立てた体験型のコンテンツを準備してきました。
 
柏センター一般公開 忍者屋敷 柏センター一般公開 忍者屋敷2

柏センターが1日限りの忍者屋敷と化した当日の様子をご紹介します。
10時開始の30分前くらいから総合受付辺りには、ご家族連れの姿が見え始めました。
エントランスを入ると、この日はアザラシ型ロボットのパロがお出迎え。
受付を済ませ、整理券配布所に急ぎ足で向かう方が多かったようです。
 
お客様を出迎えるパロ 整理券配布所

「忍者の風呂敷」では、レーザーカッターで切り込みを入れ、伸びるシートを加工する技術のデモンストレーションを実施。
人の体は丸みがあるので、より正確なデータをとるためには、体にフィットする柔らかいデバイスが必要であることを説明し、そのための技術開発について紹介しました。
 
忍者の風呂敷 説明する延島研究員 忍者の風呂敷 レーザーカッター

「忍者の手甲づくり」は、無縫製横編み機を使った着るセンサの紹介と、手甲の糸処理を体験します。
体験者の皆さん、カメラを向けると手甲を着けてポーズをとってくださいます。
「遠くで一人暮らししてるおかんの健康状態を知りたい」という思いでやっていますと軽妙な関西弁で語る泉研究員。
ニットの特性を活かして体の動きを測ることができるので、呼吸をしているか離れた所から確認することができます。
動きの速度も測ることができるので、スポーツでの応用も可能と説明し、リクエストすると空手の動きを見せてくれました。
 
忍者の手甲 空手ポーズの泉研究員

廊下の両側に設置された黒い大きな布は、「お化け屋敷風ファブリックスピーカー」。
布の間を歩くと、「通りゃんせ」の音楽が一緒についてきます。
昨年展示したものより大きくなりパワーアップして、来場者に大きなインパクトを残しました。
 
ファブリックスピーカーの廊下 ファブリックスピーカーの説明をする吉田研究員

「忍者の資金調達」では、光で固まる樹脂で、古銭の型取りをします。
何ができるのか、興味津々の子どもたち。
昨年に引き続き人気コーナーになっていました。
 
忍者の資金調達1 忍者の資金調達2

Interverse忍者屋敷「忍erse(しのばーす)」はバーチャル空間に再現された柏センターの中をアバターに扮して探検することができます。
1階のサービスフィールドシミュレーター(SFS)版ではトレッドミルの上を歩くことで移動でき、アバターは移動に追従します。
3階のタブレット版はアバターをゲームコントローラで操作します。
これらは互いにリンクしているので、仮想空間の中でアバター同士が出会うことができます。
柏センターの建物は、コンピュータグラフィクスにより現実そっくりに再現されており、ハロウィンのかぼちゃを模したおばけも登場。手裏剣を投げて退治できる仕掛けもあり、幅広い世代がゲーム感覚で楽しんでいました。
 
忍ばーす SFS版 忍ばーす タブレット版

時折、忍ばーすタブレット版の部屋の前を忍者が通り過ぎます。
「忍者はだーれだ」の部屋をのぞくと、暗い部屋の中で忍者と偽忍者が活動中。
暗がりの中で、体験者を囲んで二人の忍者がグルグルと周っています。
耳を澄ますと聞こえてくるかすかな足音を手がかりに、どちらが本物の忍者かをみつける体験になっています。
本物の忍者は足音を立てないので、足音が聞こえる方が偽物の忍者です。
本物の忍者にボールをぶつけて、みんなで退治しました。
 
忍者はだーれだ1 忍者はだーれだ2

隣の部屋では、「忍びの極意 心技体」の授業がありました。
「心の回」「技の回」「体の回」と3つの秘技を伝授するものです。
心の回では、忍者にとって大切な「五情の理(ことわり)」について解説。
忍者の活動にはコミュニケーション技術が重要なことから、他者と上手くコミュニケーションをとる方法について紹介しました。
「技の回」では、技のばらつきと転倒リスクについて、「体の回」では、動きを捉える簡易モーションキャプチャーについて、紹介しました。
 
忍びの極意 心の回 忍びの極意 技の回 忍びの極意 体の回

「忍者修行!暑さ寒さもへっちゃらでござる」では、人工気候室という実験室を使い、夏と冬を想定した温度に設定された2つの部屋を行き来して、それぞれの室温を当てるという体験をしてもらいました。
同じ年ごろとみられる子どもでも、温度が高い部屋が好きだと動かずに寝転んでいる子がいれば、温度が低い部屋が良いと走り回っている子もいました。
人によって暑い/寒いの感覚や快適と感じる環境が異なることを、ご家族やお友達とお互いに確認する機会になったようです。
 
暑さ寒さもへっちゃらでござる 廊下で説明 暑さ寒さもへっちゃら LAVOTと遊ぶ子どもたち

「センサ忍者服」のコーナーは、体験者が壁にかけられた忍者をかわいく笑顔にしてあげるブースでした。
体験者はフエルトを使ってポケットを彩る飾りを作り、貼り付けていきます。
また、ポケットにはニットセンサーが仕組んであり、物を入れていくことでだんだんと忍者の表情が笑顔になっていきます。
忍者がとっても嬉しそうな笑顔になると、参加者も一緒に笑顔になりました。
忍者を笑顔にした後は記念写真の撮影、AIによるかわいい度評価、そして認定書の授与が行われました。
 
センサ忍者服 フエルトでポケット制作 センサ忍者服 ポケットにモノを詰めて忍者を笑顔に

子どもたちが一生懸命ぬり絵に取り組んでいたのは、「忍者秘伝の発想術」です。
柏センターでも扱う新しい技術の絵を1枚選んで思い思いに塗っていくのですが、場面が設定されるという条件がつきます。
左の写真には、アクアテラスと保育所の2つの場面カードが写っています。
どちらの場面で設定するかによって、選ぶ色も変わってくるのではないでしょうか。
 
忍者の発想術 色を塗る参加者 忍者の発想術 ぬりえ

忍者ロボットを遠隔操作するコーナーは、産総研で開発した難病患者さんの意思伝達支援システムと、高齢者の認知症予防のための認知訓練システムを合体させた技術を体験できるものです。
昨年実施した脳波による操作に加え、まばたきで遠隔操作するブースが増えました。
モニターに表示された行動の中からロボットに代行させたい項目をひとつ選んで指示を出すのは同じですが、まばたきということで、所要時間も短いこともあり、幅広い世代の方が挑戦していました。
 
脳波で忍者ロボットを遠隔操作 まばたきで忍者ロボットを遠隔操作

「異次元世界に忍んで地図作り」は、一週間前に開催された「オータムフェスタin柏の葉」で出展した「何もない空間から音が出る?音をたよりに地図をつくろう!」の屋内バージョンです。
廊下で説明動画を観た後に、デバイスを装着して地図作りに挑戦。
マーカが並べられたがらんとした部屋で、音を聞きながら見えない場所の地図を作るバーチャル体験は不思議な感覚だったようです。
 
忍んで地図作り  地図完成!

同日開催されていた東京大学柏キャンパス一般公開から、サテライト出展していたのが東京大学新領域創成科学研究科人間拡張学講座の学生たちです。
「忍者の適性検査:eスポーツ編」として、ゲーム中の緊張度を測る実験を行いました。
緊張してパフォーマンスが下がってしまった経験のある人は少なくないと思います。
また、音楽家が人前で演奏する時の緊張についての研究のポスターが展示してありました。
説明対応していた学生はスポーツの動作分析の発表をしており、球技を例に速さと精度の関係について話してくれました。
 
忍者の適性検査1 忍者の適性検査 説明担当の学生

柏センター重鎮がガイドを担当した特別見学ツアーは、全体プログラムとABCIのあるAIデータセンター棟を周る約45分のツアーになりました。
幅広い世代が参加したツアーはいかがだったでしょうか。
 
ガイドツアー 所長 ガイドツアー 持丸センター長
ガイドツアー 牛島さん ガイドツアー ABCI
武居淳研究チーム長「産総研柏センター一般公開2024」実行委員長 武居淳研究チーム長 コメント


一般公開当日、開場を待ちわびる来場者を緊張、驚き、喜び、様々な気持ちと共に迎え入れました。
来場者も普段、体験することのできない柏センターの施設、装置、技術に触れ同じように様々な感情が湧き出たのではないでしょうか。
科学技術が人の心を動かすということを確認できたことは来場者にとっても、産総研柏センター職員にとっても意義深いことだったかと思います。
産総研柏センターにご興味を持ち、足を運んでくださった来場者の皆様、また本イベントにご尽力していただいた職員の皆様に感謝申し上げます。
来年もぜひお越しください。
また、産総研柏センターの技術に今後もご期待ください。

谷口正樹柏センター所長谷口正樹柏センター所長 コメント


今年も多くの方に忍者屋敷にお越しいただきました。ありがとうございました。
最新技術は現代版の忍術です。
驚き、楽しんでいただけたなら嬉しい限りです。

柏センターでは日々、新しい忍術の開発が進められています。
今後もぜひご注目ください。

国立研究開発法人産業技術総合研究所