横河電機株式会社(本社:東京都武蔵野市 代表取締役社長:海堀周造)は、このほど独立行政法人 産業技術総合研究所(本部:東京都千代田区 理事長:吉川弘之 以下「産総研」)と共同で、産総研つくばセンターにある圧力の国家標準で日本国内および日本国外それぞれにある標準器を遠隔校正する実証実験に気体差圧※1として、日本で初めて成功しました。
このたび遠隔校正した標準器は、横河電機計測標準センター(山梨県甲府市)にある校正用標準器と、差圧・圧力伝送器を製造している横河電機の子会社、重慶横河川儀有限公司(本社:中国重慶市 総経理:大浦幹夫)にある作業用標準器です。
各種計測機器の信頼性は、その計測機器を校正する作業用標準器の国家標準へのトレーサビリティ※2を確保することで証明されます。計測機器メーカーが作業用標準器を校正する際、国家標準で校正された校正用標準器をもつ校正サービス提供業者に校正を依頼するのが一般的です。作業用標準器を校正する校正用標準器は国家標準で校正されているので、計測機器のトレーサビリティが確保されます。
校正サービス提供業者がもつ圧力の校正装置は重錘形圧力天びん※3を2台使用する大型で複雑なシステムです。そのため、校正用標準器を国家標準で校正するには、輸送や手続などに長い期間(2ヵ月程度)と多くの労力が必要です。そのうえ、操作に熟練を要することと、自動化が困難であるといった課題がありました。
また、海外で生産している計測機器も、日本向けの製品は日本の国家標準に照らし合わせて校正しなければなりません。近年、日本企業が生産拠点を海外へ移管する傾向が強まっていくに伴い、日本国外で生産した日本向け計測機器を校正する作業用標準器を、校正用標準器や国家標準で校正するために、長距離輸送や通関などに多くの労力がかかるようになりました。
これらの問題を解決するため、ユビキタス(いつでも、どこでも)で速く、安く、正確という特長を備えた圧力(気体差圧)標準の遠隔校正(e-trace)技術※4の確立を目指し、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の計量器校正情報システム研究開発事業の一環で、産総研 計測標準研究部門 力学計測科 圧力真空標準研究室と横河電機の計測標準センターと通信・測定器事業部が共同で開発を進めてまいりました。
まず、産総研が、あらかじめ国家標準で校正した遠隔校正用仲介器※5を、国家標準での校正を希望する校正サービス提供業者や計測機器メーカーに搬送します。その後、産総研がインターネットを介してこの仲介器と被校正器を遠隔操作して二つのデータの差から校正値を求めます。
本年7月に、この校正方法で産総研つくばセンターにある圧力の国家標準で、横河電機計測標準センターにある校正用標準器を遠隔校正する実証実験に成功しました。続いて本年9月に、重慶横河川儀にある作業用標準器との間でも実証実験に成功しました。
実現が難しいと言われていた遠隔校正用仲介器は、横河電機が保有する高精度・高信頼の圧力センサ技術および圧力計測技術を採用することで実現可能となりました。また、日本の国家標準との遠隔校正の実証実験に気体差圧として、初めて成功したことで、仲介器を利用する遠隔校正(e-trace)技術の実用化に向けて大きな一歩を踏み出したと言えます。
横河電機では、本システムの実用化に向けて、校正用仲介器のさらなる品質向上、コストダウンに取り組みます。
産総研では、今回の圧力の遠隔校正実証実験の成功は、日本国内のみならず、海外に進出している日本企業へ仲介器を使用した遠隔校正(e-trace)技術で計量標準を供給出来ることを実証した点で画期的であると考えています。