独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)知能システム研究部門【部門長 平井 成興】 とロボットサービスイニシアチブ【代表 内山 隆 株式会社富士通研究所取締役】(以下「RSi」という)は、ネットワークロボット分野において協力し、それぞれが推進しているロボット用ネットワークプロトコル(標準規格)の相互接続を図ることに合意しました。また、相互運用の実証例としてRSiが提供するお天気情報サービスを利用するRTミドルウエアのゲートウェイコンポーネント(相互接続のための機能部品)を開発しました。
今回のゲートウェイによる相互接続は、次世代ロボット市場を拓くために独立して活動していた国内の標準化推進団体の相互運用の第一歩となるものであり、互いの技術の相互接続性を高めることにより、それぞれの標準化推進団体で独立して開発してきた製品やサービスを互いに利用することが可能となります。これにより、家庭や職場内へのロボット技術の導入を期待する一般ユーザーの利便性を高めて選択肢を拡大させることで、萌芽期にある次世代ロボット市場を開拓していきます。
急速な情報通信技術の発展によりネットワークを介した相互接続が当たり前の技術となり、家庭や職場で人間生活を支援する次世代のロボットでは、ネットワークを介した相互接続、コンピューター接続により新しいサービスを提供することが期待されています。
従来のロボットシステムは企業ごとに独自の基本設計に基づいて技術を競っていましたが、各社が独自の基本設計にこだわって製品開発していたのでは、他社製品と連携してユーザーが求めるサービスを提供することができません。すべての製品群を自社製品で囲い込むという戦略を採用する選択肢もありますが、巨額の投資が必要となります。そこで、様々なメーカーのロボットや部品の相互接続、さらにネットワークを介してロボットにサービスを提供できるプロトコル(標準規格)が必要になっています。
産総研は、一般ユーザーの様々なニーズに応えるカスタムメード型のロボットシステムを安価に提供するために、ロボット開発の効率化の視点から、ロボットを構成する機能要素を部品化(モジュール化)することに注目してきました。そのために国際的なソフトウェア技術の標準化団体であるOMG(Object Management Group)において、モジュール化の枠組みとしてコンポーネントモデルの標準化に取り組むとともに、ロボット用ソフトウェアの共有や再利用を促進する共通基盤となるRTミドルウエアの開発を進めてきました。
RSiは、通信ネットワークを活用したパーソナルロボットの多様なサービスを家庭や職場に円滑に導入させていくための推進組織であり、サービス提供会社からの様々なサービスを各ロボットで共通に受けられるRSiプロトコル仕様を策定してきました。
産総研とRSiは、それぞれのプロトコル仕様に基づくソフトウェアやサービスの相互接続を図ります。また、実証実験により、有効性の検証、課題の抽出を行います。
両プロトコルのゲートウェイを用いた相互接続により、RTミドルウエアで開発されたロボットは、RSiプロトコル仕様で提供されるサービスを受けることができるようになります。逆に、RSiプロトコルを利用したサービス提供会社は、RTミドルウエア準拠のロボットシステムをネットワーク経由で操作/利用してサービスを提供することが可能になります。
従来、ロボットを熟知したメーカーしか参入することが難しかった次世代ロボットの市場ですが、ロボットに関連していない様々なソフトウェア会社、サービス提供会社などが、ネットワークを通してロボットや、ロボット技術を利用した各種モジュール(機能部品)のための様々なサービスを簡単に提供できる仕組みを用意することで、ロボットの特性を活かした新しいサービスを考案し、構築・提供できるようになることが期待されます。
つまり、家庭や職場内にロボット技術を導入したい一般のユーザーは、RTミドルウエア技術でカスタムメードのパーソナルロボットを安価に入手できるとともに、RSiの技術でロボットの付加価値を高めるサービス提供会社が用意するRSiプロトコルによってロボットの付加価値を高めるコンテンツサービスを利用することが可能になります。
さらに、相互運用の相乗効果により、パーソナルロボットのコストパフォーマンスを高め、コンテンツサービスによるビジネスモデルを構築することで、萌芽期にある次世代ロボット市場を開拓していきます。
産総研とRSiは、今回の相互運用を契機に、日本発のロボットシステムを構築するために使われる一連のプロトコル群であるプロトコルスウィートを協力して開発して行きます。
このほど、RSiプロトコルとRTミドルウエアとの相互運用の実例として開発したゲートウェイコンポーネント(機能部品)は、RSiが提供する『お天気情報サービス』から情報を取得するRTミドルウエアのコンポーネントです。RTミドルウエア側に、RSiプロトコル仕様サービスを行うサーバーにアクセスできる機能を持っており、RSiのサービスとRTミドルウエアの相互接続を実現します。
このゲートウェイとなる天気情報取得コンポーネントを他のRTミドルウエア準拠のロボットシステムや機能部品と組み合わせたシステムを構成することで、天気情報に応じて様々な機器を制御したり、利用者のニーズに応じて文字やCGや音声などで情報提供したりすることが可能になります。
9月13日~15日に千葉工業大学で開催される、第25回日本ロボット学会学術講演会にて実装方法などの詳細を発表する予定です。また、11月28日から東京ビッグサイトで開催される国際ロボット展で相互運用性の確認をする実証デモを行う予定です。
今後、互いに技術交流を進め、相互運用のメリットを活かした新たなサービスロボットシステムの実現を目指して、プロトコルスウィートを協力して開発して行きます。
さらに、今回の相互運用の取り組みをきっかけとして、国内のロボット関連の様々な標準化推進団体との連携、協調の第一歩となることを期待しています。