独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)情報技術研究部門【研究部門長 坂上 勝彦】は、現在開催中の「愛・地球博」(EXPO 2005 AICHI JAPAN)のテーマ館「グローバル・ハウス」において稼働している「展示会向けの統合情報支援システム」を活用し、アクティブRFIDとPDAを用いた来場者向けサービスを新たに8月20日より提供します。
この統合情報支援システムは、協奏計算アーキテクチャ「CONSORTS (コンソーツ) 」※を基盤ソフトウェアとして、カード型情報端末Aimulet (アイミュレット)GHを用いた来場者への自動音声ガイドサービスや、来場者の入出場管理・来場者の流動解析などを行う展示会場の運営支援を実現してきました【図2参照】が※※、今回の新サービスにより、
- 音声に加えて画像・テキストでの説明コンテンツの視聴が可能
- 説明コンテンツの視聴履歴や、来場者の移動履歴に応じた、説明コンテンツの選択が可能
- 混雑した展示物の近くでも、全ての来場者に同等なサービス提供が可能
となります。
この新サービスでは、アクティブRFIDとPDA (Personal Digital Assistance)とを統合した端末装置 「Aimulet GH+」【図1】を用います。インフラ側で稼働するCONSORTS が個々の来場者の位置・移動軌跡・コンテンツの視聴履歴を見守っており、来場者にとって適切であると推定される複数のコンテンツを来場者が所持する端末装置に配信します。来場者は配信された複数のコンテンツの中から「聞きたい・見たい」コンテンツを選択して視聴できます。コンテンツは、音声・画像・テキストで配信されます。
このサービスは全ての来場者にとって有用なものですが、今回は特に車椅子の来場者の方々に、この新サービスを提供します。
※ 2004年12月14日プレス発表「アクティブ型無線ICタグとマルチエージェント技術による展示会統合支援システムを実用化」
※※ 2004年1月31日プレス発表「愛・地球博:EXPO 2005 AICHI JAPAN のテーマ館「グローバル・ハウス」において展示会向け統合情報支援システムを提供」
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図1 サービス提供のためのアクティブRFID付きPDA
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図2 CONSORTS アーキテクチャによる統合情報支援システム
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統合情報支援システムでは、協奏計算アーキテクチャ「 CONSORTS (コンソーツ)」が、端末装置に内蔵されたアクティブRFIDからの情報をもとに、来場者の動きを検出・分析する流動解析を行っており、個々の来場者の概略位置を見守っています。
PDAへのコンテンツ配信という今回の新しいサービスの導入においては、会場ですでに稼働している展示会統合情報システムをそのまま用い、ネットワークやアクティブRFIDを用いた位置測位システムなどのインフラへの変更はほとんど必要ありません。このことは、我々の開発した CONSORTS をベースとした展示会統合情報支援システムの拡張性の高さを示すものです。
また、こうした来場者の位置情報の把握は、より良いサービスの提供のために重要ですが、一方でプライバシーへの配慮の視点が不可欠です。統合情報支援システムでは、来場者の氏名や住所等の個人情報を登録しないため、プライバシー侵害の心配は全くありません。
産総研では、展示会統合情報支援システム上での新たなサービスの運用により、マルチエージェント技術の有効性の実証を進め、また産学官にわたる共同研究や技術移転を積極的に展開し、来たるべきユビキタス情報社会における、「安全・安心・便利」の調和のとれた公共空間の設計に貢献すべく、さらなる技術の創出を目指します。