独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)の情報技術研究部門【部門長 坂上 勝彦】は、社団法人 人工知能学会【会長 石塚 満(国立大学法人 東京大学)】(以下「人工知能学会」という)の全国大会支援ワーキンググループ【委員長 西村 拓一(産総研)】(以下「大会支援WG」という)を通じて、イベント空間情報支援システムを開発しました。
このシステムは、産総研、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所【所長 坂内 正夫】(以下「NII」という)、株式会社 アルファシステムズ【代表取締役社長 小林 孝】などが開発した多様な要素システムと連携することで、統合的なサービスを提供するもので、誰でも気軽に高度なサービスを利用できるシステムです。
従来、展示会や物産展、各種パーティなどのイベント会場では、偶然見つけた展示物の担当者や出会った知り合いと話をするといった形で情報交換が行われるのが一般的でした。このため、同じ興味を持つ人と出会う機会を逃すこともありました。本システムは、参加者がイベント空間をより有意義に楽しく体験できるように、会場支援システムとWeb支援システムとを連携させた支援を行います。これにより、会期中の支援はもとより、会期前後でもイベントの展示物やスケジュールなどのコンテンツ支援、参加者同士を結びつけ活発なイベントを実現するコミュニティ支援を受けることができます。【図1参照】
Web支援システムは、参加者や出展者の関係を展示物やWebの情報から推定する機能、知り合いを登録することで他の関係者との交流を図る機能、展示発表のスケジューリング及び推薦機能があります。また会場支援システムでは、ICカードを参加者に配布します。参加者は、ICカードをカードリーダに乗せるだけで、システムにログインでき、他の参加者や展示物とのつながりや展示発表の情報を簡単に閲覧することができます。また、自身がどの展示発表を聞いたかなどの行動記録をリアルタイムに自動作成したり、出展者や発表者に経過時間を通知するといった支援を提供します。
本システムは、大会支援WGにより2005年6月15-17日の2005年度人工知能学会全国大会(以下JSAI2005)にて運用される予定です。
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図1 イベント空間情報支援システムの機能例
興味ある展示をWeb支援システムでチェックしておくと、会場で配布されるICカードをリーダにタッチするだけで関係者や関連する展示物が表示されます。知人や関係者の位置を案内し会場で一緒に展示物を見ながらの交流も可能です。当日の見学記録も自動作成され関係者へ報告することができます。 |
情報技術は今や生活に欠かせないものとなってきていますが、特に、時間、場所、状況を問わないユビキタス情報環境が興味を集めるようになってきています。ユビキタス情報環境を実現させるターゲットのひとつとして限られた空間に多数の参加者が集まる展示会、学会、博物館などのイベント空間が考えられています。また、インターネットなどによる人間同士のインタラクションの増加に伴い、展示物の実物に触れることができ、生身の人間同士の交流が発生する実世界のイベント空間における活動を支援することは重要になってきています。
このような背景の中、人工知能学会は、研究成果を活用しながら学会参加者の満足度向上を図るために、学会支援システムを構築、全国大会で運用する試みを毎年続けています。1999年から2001年は株式会社 国際電気通信基礎技術研究所が中心となって運用を行っておりましたが、2002年からは「イベント空間情報支援プロジェクト」として、産総研、NII、株式会社 アルファシステムズを中心として複数の組織の連携により、学会支援システムを提供しています。
イベント空間情報支援システムは、会場支援システムとWeb支援システムとからなり、両システムを連携させることで、会期中の支援はもとより、会期前後でもコンテンツ支援、コミュニティ支援を提供します。
- Web支援システム
本システムは会場に設置された情報端末を通じて、Webマイニングにより得た情報やユーザが登録した情報をもとに、発表や、人と人とのつながりについての情報を提供する「Polyphonet Conference」を基盤とし、様々なサービスと連携可能となっています。また、参加者は会期前後でもネットワークを通じてサービスの提供を受けることができます。
- 会場支援システム
会場支援システムでは、気軽に身につけられる「カジュアル端末」としてICカードを参加者に配布し、展示物や会場入り口、情報端末などにICカードリーダを配置します。ICカードをカードリーダに乗せるだけで、システムにログインでき、他の参加者や展示物とのつながりや展示発表の情報を簡単に閲覧することができます。(カジュアル支援システム)これらの情報をもとに、参加者が自分自身の行動を後で振り返ることがでる「ActionLog」、展示者や発表者の時間管理を手助けする「ベル鈴」が利用できます。また、ICカードを用いて会場内の情報端末にログインしWeb支援システムを利用することができます。
本システムは、2005年6月15-17日のJSAI2005(http://www.jaist.ac.jp/jsai2005/、参加者500人以上)にて約20台のカードリーダを設置し運用される予定です。また、JSAI2005の「イベント空間情報支援プロジェクト」セッションでは、本システム関連の技術が発表されます。
ロボットや医療、バイオインフォマティクス、ナノテクなどの学会、各種展示会、物産展といった様々なイベントを対象に最適化したサービスを実現することで、人と人との現実社会での交流や経済行為を活性化する支援を進めていく予定です。