川崎重工業株式会社【代表取締役社長 田_ 雅元】(以下「川崎重工」という)、東急建設株式会社【代表取締役社長 落合 和雄】(以下「東急建設」という)、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は共同で、人間型ロボットによる産業車両(バックホウ)の代行運転(乗り込み、着座、運転操作)を実現した。
本田技研製ハードウェアに産総研が開発した「全身動作制御技術」を搭載した人間型ロボットHRP-1Sに、川崎重工が開発した状況に応じて3つの操作モードを切り替えられる「遠隔操作手法」を搭載した可搬型の「遠隔操作システム」を接続することで、滑らかな全身遠隔操作を可能とした。また、東急建設が開発した雨や埃、機械振動等からロボットを守る「保護技術」を組み合わせることで、雨天時での屋外作業も実現可能となった。
災害復旧現場などの危険な作業空間や土木建設現場などの悪環境下で、人間型ロボットを汎用の産業車両に乗り込ませて、安全な環境にある場所から代行運転させることができれば、悪環境下での災害復旧作業や土木建設作業などを安全かつ円滑に行うことが可能となる。これまで、産業車両本体をロボット化する試みが数多く行われてきた。これに対し、人間型ロボットを用いて産業車両を代行運転させるということは、1.運転のみでなく、それに付随した作業(下車しての現場確認、簡単な修理等)を実施可能とすることや、2.車両自体を改造することなく全ての産業車両のロボット化が可能となるなどの利点がある。
産業車両等代行運転分野では、市販されている産業車両を、人間型ロボットに遠隔操作することで運転させ、各種作業を行わせることを目標に掲げ、研究開発を遂行してきた。まず、「立ち姿勢運転型フォークリフト」を運転対象とし、平成12年度末にHRP前期開発プラットフォームにより代行運転を実現した。平成13年度からは、「着座姿勢運転型バックホウ」を運転対象とし4つの周辺技術の研究開発を進め、今回の成果発表にいたった。なお、平成14年3月末に行われたROBODEX2002では前記フォークリフトを使用し、今回と同等のシステムで代行運転をデモしている。本研究成果は、人間型ロボットを用いた運転代行システムの汎用性を示すとともに、ロボットが機械を操作することで、「人間型ロボットが人と同様に働ける可能性」を示す大きな成果である。
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バックホウを運転するHRP-1S
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雨の中で運転するHRP-1S
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ロボットは自力で乗り込み動作が可能
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ロボットを遠隔操作する可搬型遠隔操作装置
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○遠隔操作手法の特長(担当:川崎重工)
・ロボット全身の動作パターンを事前に生成する「オート制御方式」、操作者がマスタスレーブ方式で動作を指示する「マニュアル制御方式」、マニュアル制御方式に部分的に自律機能を加えた「セミオート制御方式」の3方式を使い分け、バックホウなどの着座姿勢運転型産業車両への乗り込み動作、着座動作、着座時の安定性を増すために着座後に足を前に出す動作、各種レバー操作などの指示が行える。
○遠隔操作システムの特長(担当:川崎重工)
・遠隔操作システムは、「マスターアーム」、「マスターフット」、「制御装置」から構成、作業現場への運搬のため、20kg以下に分割し、専用ケースに収納できるなど、可搬性に対する考慮がなされている。
○保護技術の特長(担当:東急建設)
・屋外で使用されている産業車両を代行運転するために、機械振動や衝撃からロボットを保護し、座席からの脱落を防止するロボット専用の「代行運転用着座シート」と、雨や埃からロボットを守り、屋外で作業することを可能にする「作業用保護ウェア」を開発した。
○全身動作制御技術の特長(担当:産総研)
・ロボットの各部位を遠隔操作システムからの信号に従い自在に動かすことができるとともに、安定制御系によりロボット自身が自律的に安定性を確保することが可能である。