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お知らせ記事2024/06/27

世界の太陽光発電普及加速に向けて、世界の専門家たちと「テラワットワークショップ」を開催しました

米国カリフォルニアにて行われた「第4回マルチテラワットワークショップ」に、14カ国から約70名の専門家が集まり、持続可能な世界の実現に向けて、太陽光発電の発達と普及をさらに加速する方策を議論しました。

テラワットワークショップは産総研・米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)・独フラウンホーファー太陽エネルギー研究所(Fraunhofer ISE)が主催している、約2年ごとに開催しているワークショップです。

これまでの3回のワークショップからはそれぞれScience誌において、太陽光発電の普及をよりスムーズに進める提言を発表し、学術論文で多数引用されています。

これまでの3回のワークショップに基づく論文のプレスリリースは、下記の通りです。

第1回:https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/au20170421.html
第2回:https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2019/nr20190626/nr20190626.html
第3回:https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2023/nr20230530/nr20230530.html

4回目となる今回のワークショップでは、太陽光発電の累積導入量が今年中に2TWを超え、まもなく世界の発電電力量の約1割を占めると見込まれる中で開催されました。より速い普及速度や、新しい市場と用途への対応において、研究開発の観点から重点的に取り組むべき事柄を議論しました。一線級の研究所や企業、行政機関などの専門家たちが率直な意見を交わし、世界に発信する助言の内容を検討しました。

今回のワークショップでは、下記のような事柄に焦点をあてて議論が行われました。

  • インド・オーストラリア・中国・ケニアなどの国々について、国や地域ごとに、温暖化ガス排出量の速やかな削減に向けて太陽光発電を普及させる際の課題や対応方策
  • ペロブスカイト型太陽電池と結晶シリコン型太陽電池など、2種類の太陽電池を積層した高性能なタンデム型太陽電池法について、量産化や耐久性向上などの研究開発方針や利用方策
  • 太陽光発電のさらなる環境負荷の低減、資源量の節約やリサイクルの促進の方策

世界が2050年ゼロエミッション化を達成するにはおよそ75TW(テラワット)以上の太陽光発電導入が必要とみられ、今のペースで普及を加速し続けることが大切とみられます。今回のワークショップの議論内容を踏まえて、専門家たちの助言を論文にまとめ、発表していく予定です。

第4回マルチテラワットワークショップ参加者集合写真

第4回マルチテラワットワークショップ参加者の集合写真

用語解説

国立再生可能エネルギー研究所(NREL)
米国エネルギー省傘下の国立研究機関。米国で唯一、再生可能エネルギー全般と省エネルギー技術に関する研究開発を実施しています。世界トップレベルの太陽光発電の研究機関であり、関連する主要な国際標準規格の制定にも深く関わっています。(プレスリリース[参照元へ戻る]
フラウンホーファー研究機構 太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE)
欧州最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構の中の一研究所。太陽エネルギーを中心にした研究を行っており、同分野における欧州最大の研究機関です。(プレスリリース[参照元へ戻る]
ペロブスカイト型太陽電池
日本発の新型太陽電池で、生産時の消費エネルギーやCO2排出量が少ないのが特長の一つです。太陽電池の性能をさらに向上させたり、薄型軽量の太陽電池モジュールで利用したりする用途が期待されています。安定性など、信頼性の向上が課題です。[参照元へ戻る]
タンデム型太陽電池
太陽光には紫外光から赤外光までさまざまな色(波長)の光が含まれますが、複数の種類の太陽電池を積層し、色ごとにそれぞれ最適な太陽電池を用いることで、太陽の光をより効率よく電力に変換する太陽電池です。研究開発レベルでは例えば一般的な結晶シリコン型太陽電池にペロブスカイト型太陽電池を積層することで、同じ面積でも何割も多く発電できることが確かめられており、早期の実用化が期待されています。[参照元へ戻る]
テラワット(terawatt, TW)
電力の単位で、1TW=1000GW(ギガワット)=1000,000MW(メガワット)=1,000,000,000kW(キロワット)です。1TWの太陽光発電設備は、世界平均で年間およそ1400TWh(テラワット時)を発電します。これは2021年の世界の発電電力量(28519TWh、IEA調べ)の約5%に相当します。[参照元へ戻る]
 

本件問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
ブランディング・広報部 報道室
E-mail:hodo-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)