国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、2016年3月17日から3月18日に、独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギーシステム研究所(以下「Fraunhofer ISE」という)および米国国立再生可能エネルギー研究所(以下「NREL」という)と合同で「The Terawatt Workshop」(以下「テラワットワークショップ」という)を開催しました。テラワット(1012ワット:10億キロワット)太陽光発電(以下「PV」という)時代実現に向けた日独米による共同のステートメントを策定し、同年3月30日付で各研究機関から日独米それぞれの国でプレス発表などを行いました。
その後、3研究機関を中心にテラワットワークショップでの議論を論文としてまとめてきました。この論文が2017年4月14日付のScience誌へ掲載されました。論文のタイトルは「Terawatt-scale photovoltaics: Trajectories and challenges」、内容は以下のとおりです。
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PVシステムの急激なコスト低減の流れからみて、継続的な研究開発と投資を続けていけば世界のPVの累積導入量は2030年には3テラワットを超えると予想される。
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しかし地球規模での気候変動対策に大きく貢献するためには、2040年までに20テラワット規模での導入が必要である。
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そのためには、PVのさらなる製造コスト低減や性能・信頼性の向上が不可欠であり、世界全体での継続的な研究開発への投資が必要である。
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またPVの導入を加速するためには、より柔軟な電力系統の整備、低コストな電力貯蔵技術、電力需要管理技術などの開発が重要である。
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PVは世界の総電力量の中で大きなシェアを占める可能性を持つだけではなく、地産地消可能で、自動車や熱供給などの市場に対しても低コストなエネルギーを供給できる能力を秘めている。
環境とエネルギーの2つの持続可能性を両立することは、全世界的な要請であり、かつ挑戦的な課題です。世界の太陽光発電研究を先導する産総研、Fraunhofer ISE、NRELの3研究機関は、国際的な連携協定覚書を締結し、これらの国際的な挑戦課題に取り組んでいます。テラワットワークショップは3研究機関の連携活動の一環であり、日独米の産学官(研究所、大学、政府系研究開発統轄機関、製造メーカー、金融機関など)メンバー(各国から15名程度、全体で約50名)を交えて、全員参加型のワークショップとして開催しました。将来のテラワットPV時代に向けて、PVに関するデバイス技術、製造技術、流通、リスク軽減、電力系統統合技術などに関する個別課題の共有および総合討論を行い、このワークショップの成果物として日独米による共同ステートメントを取りまとめ、さらに今回論文として発表しました。
産総研、Fraunhofer ISE、NRELの3研究機関は、テラワットPV時代の実現に向けて、今後も解決すべき重要課題の提言や適切な研究開発を進めます。また、PV未導入地への導入・普及を加速するためにさまざまな国際協力を推進する予定です。さらに、今回論文にまとめた議論を具体化するための第2回テラワットワークショップの開催を検討しています。