独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之】(以下「産総研」という)は、平成20年4月21日から25日にドイツ・ハノーバー市において開催される世界最大規模の産業見本市「ハノーバー・メッセ2008」に出展します。
今回のハノーバー・メッセでは、わが国がパートナーカントリーとなったこともあり、昨年のほぼ3倍の規模となる約30件の研究成果を展示します。「持続的発展可能な社会の実現に向けた人間、環境、エネルギーに関する産業技術の貢献」とのコンセプトのもと、産総研が開発した最先端技術の中から、環境に優しい新素材・プロセス、新エネルギー、省エネルギー、人間生活を支援するデバイスやロボットなどに関する技術を出展します。ホール2に独立行政法人 日本貿易振興機構(以下「JETRO」という)が運営するジャパン・パビリオンの中に150平方メートルの展示ブースを構え、開発担当者が各研究成果を説明します。技術移転担当者もブースに常駐します。
また、出展と併せて、産総研はドイツの研究機関とともに「日独研究協力ワークショップ」を4月22日に開催します。さらに、4月24日には、「日独太陽電池イニシアティブ・シンポジウム」をJETROと共催で開催します。
「ハノーバー・メッセ2008」は、ドイツ産業見本市株式会社が主催する世界最大規模の産業技術見本市です。2008年4月21日から25日まで、ドイツ・ハノーバー市において10の専門見本市が同時開催され、例年60カ国以上から5000社以上が出展し、20万人以上の来場者が訪れます。
今年、2008年は、日本がハノーバー・メッセ2008のパートナーカントリーとなり、JETROが運営するジャパン・パビリオンを中心に、民間企業も含め例年にも増した出展が予定されています。パートナーカントリーとしてのスローガンは「Cooperation through Innovation」であり、日本の技術を世界に紹介します。
産総研は、ハノーバー・メッセを研究成果の海外技術移転を推進する機会と捉え、2003年より毎年出展してきました。今回のハノーバー・メッセでは、わが国がパートナーカントリーとなったこともあり、昨年のほぼ3倍の規模となる約30件の研究成果を展示します。
JETROは、研究と技術専門見本市(ホール2)内にジャパン・パビリオン(1,600平方メートル)を設置します。産総研は、その中に150平方メートルの規模の展示ブースを構えます。
産総研は、「持続的発展可能な社会の実現に向けた人間、環境、エネルギーに関する産業技術の貢献」とのコンセプトのもと、「AISTfor the Earth and Life(地球と人間生活のための産業技術/産総研)」をキャッチフレーズとして掲げています。産総研が開発した最先端技術の中から、環境に優しい新素材・プロセス、新エネルギー、省エネルギー、人間生活を支援するデバイスやロボットなどに関する製品、試作品、シーズ技術などを紹介します。(出展リストは下部参照)
・アザラシ型メンタルコミットロボット「パロ」
人間生活を支援するロボットとして、メンタルコミットロボット「パロ」を出展します。「ロボットセラピー」というユニークなコンセプトのもとに開発されたロボットで、人とふれあうことで、心理的、生理的、社会的な効果をもたらすことが科学的に確かめられています。パロは、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルとしており、人工知能や各種センサー、アクチュエーターなどが組み込まれています。
関連情報:世界一の癒し効果、アザラシ型ロボット「パロ」、いよいよ実用化(2004年9月17日発表プレスリリース)
・CIGS太陽電池
新エネルギーの分野からは、非シリコン系のCIGS(銅-インジウム-ガリウム-セレン)太陽電池の新たな製造法を紹介します。成膜する際に、従来のセレン蒸気のかわりに反応性の高いセレンラジカルを用いることで、セレンの消費量を従来の10分の1以下に抑えながら、発電効率の高いCIGS太陽電池を作製することができる技術です。
関連情報:非シリコン系太陽電池の省資源化製法を開発(2007年4月5日発表プレスリリース)
・アスベスト代替ガスケット「クレースト」
環境問題に対応するもののひとつとして粘土から作られるフィルムを展示します。粘土の結晶を緻密に積層した「クレースト」は、柔軟で耐熱性に優れたフィルムであり、600℃以上の高温でも良好なガスバリヤ特性を保ちます。この特性を利用して黒鉛をクレーストでコーティングしたガスケットを作製しました。これは、アスベスト含有ガスケットの代替を目的としています。
関連情報:アスベスト代替ガスケットを開発(2007年1月17日発表プレスリリース)
・省エネ型建材:調光ミラーガラス
環境・省エネルギーに関連するのが調光ミラーガラスです。水素ガスあるいは電圧によって透明状態と鏡状態を切り換えることができるガラスです。建物や自動車の窓をこのような調光ミラーガラスにすれば、太陽光による熱の流入を制御できます。その結果として、空調のためのエネルギー消費を抑えることができ、省エネルギーにつながります。
関連情報:無色透明になる調光ミラー用薄膜材料を開発(2006年12月21日発表プレスリリース)
・密閉型組換え植物工場
産総研の密閉型組換え植物工場を紹介します。遺伝子組換え植物を利用して医薬品生産を行うために、完全に密閉された室内で栽培を行うものです。栽培室内は完全な人工環境となっていて、温度、湿度、光の強度、二酸化炭素濃度といった栽培条件を生産に最適となるように制御して、医薬品原材料を高効率で生産することができます。
関連情報:産業変革を先導する戦略的な産学官連携プロジェクトを開始(2005年7月13日発表プレスリリース)
・応力発光体を用いた応力可視化システム
安心・安全な社会の実現に役立つ応力発光体を展示します。これは新しい機能性材料で、応力による変形のエネルギーを可視光へと直接変換することができる材料です。この材料を利用すると応力分布を直接可視化して、モニタリングすることができます。これによって、例えば建物や橋、航空機など、さまざまな構造物の安全性を保つことができると期待されています。
関連情報:その場で測る技術 その場を診る技術 マルチスケールの計測診断 外部応力に反応し発光する圧光型センサ(産総研 TODAY Vol.5 No.10 掲載 PDF:800KB)
日本がハノーバー・メッセ2008のパートナーカントリーを務めることを機に、産総研とドイツのユーリッヒ研究センター、カールスルーエ研究センターとともに「日独研究協力ワークショップ」を4月22日に開催します。同ワークショップでは、昨年のノーベル物理学賞の受賞対象となったスピントロニクスにスポットを当てたセッションや、エネルギー・環境、ナノテクノロジーおよびバイオテクノロジーの研究分野についてのセッションを行います。
また、4月24日には、「日独太陽電池イニシアティブ・シンポジウム」をJETROと産総研の共催で開催します。日独の政府、産業界、研究機関からの講演が行われます。また、4月22日の「独日ロボットサミット」にも産総研から講師を派遣するなど協力していきます。