発表・掲載日:2001/08/06

自然環境に優しく彩り豊かなマグネシウム用耐食被膜の開発

-“環境調和型”汎用マグネシウム耐食被膜「AIコーティング」の開発-


 独立行政法人産業技術総合研究所基礎素材研究部門【ユニット長 五十嵐 一男】機能付与リサイクル技術研究グループ【馬渕 守、千野 靖正】は、愛中理化工業(株)、伊藤忠ポリマー(株)との共同研究により、色彩・光沢等のデザイン性と耐食性を兼ね備えたマグネシウム耐食被膜「AIコーティング」の開発に成功した。「AIコーティング」は特殊な下地処理を施したマグネシウム表面に真空蒸着処理や塗装処理を施すことにより構成される。「AIコーティング」の最大の特徴は、特殊な下地処理によりマグネシウムと表面被膜の密着性を飛躍的に向上させ、被膜として利用できる蒸着試料、塗料の自由度を高めた点にある。この技術を利用すると、従来の技術では困難であった、マグネシウム表面への様々な着色被膜の付与が可能である。また、クロメート処理被膜等で問題となっているクロムを含んでおらず“環境にやさしい表面処理”であり、色彩の多様化が求められている携帯電話の筐体等、幅広い製品への応用が期待される。


研究内容

 従来、樹脂によって賄われていたパソコン・携帯電話等の電気製品の筐体を、樹脂に匹敵しうる密度を有し、リサイクル性に優れたマグネシウム合金によって代替する動きが近年活発に行われている。

 マグネシウム合金を筐体に利用する際の最も大きな問題は、マグネシウム合金の耐食性の低さにある。現在、クロメート処理、陽極酸化処理、粉体塗装処理等が耐食性を与えるための表面処理法として利用されている。しかし、これらの手法では表面に塗布される材質の種類に制限があり、表面の色彩・光沢、電熱特性、耐熱特性等を柔軟に選択することが困難であった。

 独立行政法人・産業技術総合研究所(基礎素材研究部門【ユニット長 五十嵐 一男】、機能付与リサイクル技術研究グループ【馬渕 守、千野 靖正】)は、愛中理化工業(株)、伊藤忠ポリマー(株)との共同開発により、色彩・光沢等のデザイン性と耐食特性を兼ね備えたマグネシウム耐食被膜「AIコーティング」の開発に成功した。図1に「AIコーティング」の概要を示す。詳細は公表できないが、下地処理を施したマグネシウム合金に真空蒸着処理や塗装処理を施すことにより本表面被膜は形成される。この技術の特徴は、特殊な下地処理によりマグネシウム合金と表面被膜の密着性を飛躍的に向上させ、被膜として利用できる蒸着試料、塗料の自由度を高めた点にある。このため、クロメート処理、陽極酸化処理では困難であった色彩の自由な選択が可能であり、また、粉体塗装処理では困難であった金属光沢を有する被膜の作製が可能である。さらに、クロメート処理被膜等で問題となっているクロムを含んでおらず、“環境にやさしい表面処理”である。

 「AIコーティング」を施したマグネシウム合金ダイキャスト部品試作品を図2に示す。各種試験の結果、約20µmの厚みを有する表面被膜の高度はエンピツ硬さで2H以上を有すること、1週間の塩水噴霧試験にも十分耐えうること等が実証されている。「AIコーティング」のコストは従来のクロメート処理被膜と同程度であり、様々な色彩を有する材料が求められている、家電製品、携帯電話の筐体、スポーツ器具、意匠物等、様々な用途への利用が期待される。

「AIコーティング」により作製した表面被膜模式図
図1.「AIコーティング」により作製した表面被膜の模式図

AIコーティング処理を施したマグネシウム合金試作品の写真
図2.AIコーティング処理を施したマグネシウム合金試作品(携帯電話用ハウジング)。
(マグネシウム合金試作品は日精樹脂工業製マグネシウム合金専用射出成型機FMg3000による成形品を拝受)


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