令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者が4月9日に文部科学省にて決定され、産総研から若手科学者賞を2件受賞しました。
この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として行われています。
若手科学者賞
受賞者
エネルギー・環境領域 環境創生研究部門 環境機能活用研究グループ
佐藤 由也 主任研究員
業績名、概要
「環境微生物生態系の制御を目指した種間相互作用の研究」
微生物はあらゆる環境に存在し、動植物の発生や成長に重要な役割を果たしている。しかし数千種以上から成る環境微生物生態系で、個々の微生物の機能や関係性を知ることは難しい。
受賞者は、遺伝子発現解析を環境研究に適用し、複数の微生物が触媒する化学反応群を解明することで、微生物同士や微生物-動植物の関係性を解明することに成功した。さらに複数種の協業によってはじめて生じる生命現象を解明し、自然環境における種間相互作用の重要性を実証した。具体的には、共生細菌と害虫カメムシによる協力的な農薬解毒や、水処理装置で鍵となる重油分解菌とマイナー種の協業関係、また水産加工廃水から液肥を作る鍵微生物群等を解明した。
本研究成果は、複数の社会実装・応用事例につながる、社会的・産業的にも価値あるものであり、持続可能な社会実現のために、環境研究分野で今後より重要性が高まると期待される。
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受賞者
生命工学領域 健康医工学研究部門 ナノバイオデバイス研究グループ
冨田 峻介 上級主任研究員
業績名、概要
「高分子アレイと機械学習を統合したバイオ認識に関する研究」
診断・創薬の効率化や細胞・微生物などの生物資源の利用促進のためには、バイオ試料の特性を簡便かつ正確に把握することが不可欠であるが、従来の分析技術ではそれが困難であった。
受賞者は、味覚が多数の低精度な情報を統合することで正確な認識を達成する仕組みに着目し、この機構を、合成高分子プローブを並べたアレイと機械学習によって模倣することで、従来とは異なる原理でバイオ試料を認識する技術「Chemical tongue」を開発した。この技術により、多種多様なバイオ試料の迅速かつ簡便な識別や分類、状態変化の追跡が可能なことを実証した。
本研究成果は、企業連携や創薬ベンチャー設立を通じて、実用化に向けた道筋の構築に繋がっている。将来的に、生命システムの解明や予防・診断・創薬支援技術の創出、資源循環に資する物質生産システムの構築など、生命科学分野全体の発展に貢献すると期待される。
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