一般社団法人 日本マイクロバイオームコンソーシアム【代表理事 竹中 登一】(以下「JMBC」という)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、マイクロバイオーム関連産業におけるわが国の産業競争力強化に重要な役割を果たすことを共通の目的として、ヒトマイクロバイオーム分析法の標準化を両者の連携により加速していくことに合意しました。これに伴い、平成30年6月7日に連携協力に関する覚書を締結しました。標準化された分析法に基づいた健常人マイクロバイオームデータベースの構築を目標に、今後両者の共同研究で、推奨分析プロトコルの作成や分析用標準物質の開発に取り組んでいきます。
多種類の微生物種で構成されるマイクロバイオームは、地球環境の保全から人の健康に至るさまざまな場面で重要な役割を担っています。とりわけ、ヒトの腸内マイクロバイオームのように人と直接触接するヒトマイクロバイオームは、医薬品分野での応用としてさまざまな疾患の診断用マーカーや創薬ターゲットとして注目を集めるのみならず、食などを通じた健康維持や疾患予防、衛生管理や美容との関係性が示されています。このような背景から、マイクロバイオームに関わる新たな産業分野の創出が期待されています。また、マイクロバイオームの解析では、次世代シーケンサーを利用して解析したマイクロバイオームの遺伝子情報に基づいて、マイクロバイオームを構成する微生物の種類と量を計測することが出発点となります。一方で、その解析結果の再現性・信頼性や研究・検査機関間のデータの比較互換性の乏しさも懸念されており、解析結果の精度管理やデータベース化を進めるために、一連の分析プロトコルの標準化などの取り組みが各国で始まっています。わが国においても、JMBCが設立され、産業界が主体となって分析法の標準化が検討されています(注1)。産総研では、バイオテクノロジー分野での計測の信頼性を向上させるために核酸の標準物質を開発しており、次世代シーケンサーなどによるトランスクリプトーム解析の精度管理用RNA認証標準物質を開発、頒布してきました。また、マイクロバイオーム解析の精度管理用核酸標準物質や、その標準物質を用いた精度管理技術の開発にも取り組んでいます(注2)。
今回、JMBCと産総研は、それぞれの強みを生かし、マイクロバイオーム関連産業におけるわが国の産業競争力強化を目的に、マイクロバイオーム分析法の標準化を両者の連携により加速していくことに合意しました。これに伴い、平成30年6月7日に連携に係る覚書を締結しました。マイクロバイオームに関する計測の基盤技術開発から標準化、実用化まで一貫した研究を加速し、わが国の産業競争力のさらなる強化に寄与します。
(注1) JMBCは、国内の製薬、食品、化粧品、検査会社など30社以上が参画する一般社団法人です。マイクロバイオームの産業応用に向けて、疾患におけるマイクロバイオームを知るため健常人のコホート研究が必要であり、産業界が一体となるコンソーシアムが必須との理解のもと、2017年4月に設立。マイクロバイオーム産業の基盤となる健常人マイクロバイオームのデータベース構築やマイクロバイオーム研究の普及・促進を進めています。
※JMBCホームページ:http://www.jmbc.life/index.html
(注2) 産総研は、マイクロバイオーム解析の精度管理のための人工核酸標準物質を開発、開発した精度管理用標準物質などを利用した精度管理技術を、医療、食品、環境分野など実際のマイクロバイオーム解析に広く適用し、信頼性の確立を目指して研究を進めています。
※2016年12月14日産総研プレスリリース:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20161214/pr20161214.html