独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)サービス工学研究センター【センター長 吉川 弘之】は、経済産業省から受託した平成20年度サービス研究センター基盤整備事業の一環として、科学技術をサービスの現場に適用した先導的なプロジェクトの成果を蓄積・共有することによりサービスにおける科学的・工学的手法の普及・啓発を図るため、平成20年6月6日から27日にかけて適用実証委託事業を公募いたしました。これに対して21件の応募があり、有識者による厳正な審査の結果、5件の事業を採択しました。
サービスは、雇用においても国内総生産(GDP)においても日本を含む先進諸国の経済の7割を占め、さらに市場が拡大しています。しかし、国内の製造業や国外のサービス業に比べて日本のサービス産業の生産性の伸び率が低いため、その生産性の向上が急務となっています。
産総研は、これらの適用実証委託事業の実施を支援するとともに連携を図り、サービスの生産性向上における科学的・工学的手法の有効性を示すことによって、この手法の普及と発展のための契機にしたいと考えています。
サービス産業は、日本経済の7割(GDP・雇用ベース)を占める非常に重要な産業です。少子高齢化など社会構造変化に対応したサービス需要の増大、製造業中心に業務のモジュール化が進むことによるアウトソーシングの拡大、さらに、公的市場の民間開放や規制改革による新たなサービス市場の創出などを背景に、今後もサービス産業の重要性は高まり、一層の市場拡大が見込まれています。
しかし、サービス産業の役割のこのような拡大にもかかわらず、わが国の製造産業や海外のサービス産業と比べてわが国のサービス産業の生産性が低いことが指摘され、サービス産業がイノベーションと生産性向上をいかに達成するかが、わが国経済の発展にとって重要な課題となっています。
このような状況の中、わが国のサービス産業におけるサービスの品質を高め、かつサービスの提供をより効率的に行うために、サービスへの科学的・工学的手法の適用の促進が求められています。
このような背景を踏まえ、経済産業省は、サービス産業におけるイノベーションを促進する新たな事業として、平成20年度から『サービス研究センター基盤整備事業』(平成20年度の事業規模は375百万円)を立ち上げ、これを受託した産総研は、その一環として適用実証委託事業を公募しました。
この適用実証委託事業では、科学的・工学的手法のサービスへの一層の適用促進を図るため、広く技術を活用することによってサービスの生産性を向上させる先導的なプロジェクトを公募により実施し、その成果を蓄積し社会的に共有することにより、サービスの生産性向上への科学的・工学的手法の普及・啓発を目指します。具体的には、サービスに適用する技術が既に一定程度確立しており、1~2年以内に実用化が見込まれ、フィールドにおける実験が必要なものについて実証実験を実施します。
産総研は、平成20年6月6日から27日にかけて適用実証事業を公募し、企業や大学から合計21件の提案が行われました。これらについて、内部の審査委員による書類選考、内部および外部の審査委員による一次および二次審査委員会での厳正な審査を経て、採択課題5件(5コンソーシアム、合計16団体。課題の概要は下表の通り)を決定しました。
これらの研究課題について、採択コンソーシアムの代表団体との契約に基づき事業が開始されます。
サービスの生産性向上における科学的・工学的手法の有効性の普及のため、平成20年12月18日に東京臨海副都心の日本科学未来館にて公開シンポジウムを開催し、これら適用実証委託事業の中間報告を兼ねて、サービスにおける科学的・工学的手法のさらなる展開についての意見交換の場を設ける予定です。