産総研:学術誌 Synthesiology(シンセシオロジー) 編集方針・投稿規定・執筆要件と査読基準

 [編集方針][投稿規定][執筆要件と査読基準

編集方針

編集方針 [ PDF:1MB ]

シンセシオロジー編集委員会

本ジャーナルの目的

本ジャーナルは、個別要素的な技術や科学的知見をいかに統合して、研究開発の成果を社会で使われる形にしていくか、という科学的知の統合に関する論文を掲載することを目的とする。この論文の執筆者としては、科学技術系の研究者や技術者を想定しており、研究成果の社会導入を目指した研究プロセスと成果を、科学技術の言葉で記述したものを論文とする。従来の学術ジャーナルにおいては、科学的な知見や技術的な成果を事実(すなわち事実的知識)として記載したものが学術論文であったが、このジャーナルにおいては研究開発の成果を社会に活かすために何を行なえば良いかについての知見(すなわち当為的知識)を記載したものを論文とする。これをジャーナルの上で蓄積することによって、研究開発を社会に活かすための方法論を確立し、そしてその一般原理を明らかにすることを目指す。さらに、このジャーナルの読者が自分たちの研究開発を社会に活かすための方法や指針を獲得することを期待する。

研究論文の記載内容について

研究論文の内容としては、社会に活かすことを目的として進めて来た研究開発の成果とプロセスを記載するものとする。研究開発の目標が何であるか、そしてその目標が社会的にどのような価値があるかを記述する(執筆要件と査読基準の項目1及び2)。そして、目標を達成するために必要となる要素技術をどのように選定し、統合しようと考えたか、またある社会問題を解決するためには、どのような新しい要素技術が必要であり、それをどのように選定・統合しようとしたか、そのプロセス(これをシナリオと呼ぶ)を詳述する(項目3)。このとき、実際の研究に携わったものでなければ分からない内容であることを期待する。すなわち、結果としての要素技術の組合せの記載をするのではなく、どのような理由によって要素技術を選定したのか、どのような理由で新しい方法を導入したのか、について論理的に記述されているものとする(項目4)。例えば、社会導入のためには実験室的製造方法では対応できないため、社会の要請は精度向上よりも適用範囲の広さにあるため、また現状の社会制度上の制約があるため、などの理由を記載する。この時、個別の要素技術の内容の学術的詳細は既に発表済みの論文を引用する形として、重要なポイントを記載するだけで良いものとする。そして、これらの要素技術は互いにどのような関係にあり、それらを統合するプロセスにおいて解決すべき問題は何であったか、そしてどのようにそれを解決していったか、などを記載する(項目5)。さらに、これらの研究開発の結果として得られた成果により目標にどれだけ近づけたか、またやり残したことは何であるかを記載するものとする(項目6)。

Synthesiology誌では、研究成果を社会に活かすというゴールを達成するために、どのように研究を進めてきたのか、そのシナリオの記述を求めています。ただ、その際、単に行ってきた研究群やそれらの成果を記述するのではなく、なぜそれらの研究に取り組もうと考えたのか、その成果にはどのような意味があるのかを、論理的に記述、あるいはその論拠の記述を求めています。 一方、読者から見ますと、上記のシナリオ、要素の選択、要素間の関係と統合の概略を、まとめて1枚の「シナリオの図」に描いていただくと理解し易いと思います。 執筆ガイダンス[ PDF:2.4MB ]をクリックし、参考資料をご覧ください。

対象とする研究開発について

本ジャーナルでは研究開発の成果を社会に活かすための方法論の獲得を目指すことから、特定の分野の研究開発に限定することはしない。むしろ幅広い分野の科学技術の論文の集積をすることによって、分野に関わらない一般原理を導き出すことを狙いとしている。したがって、専門外の研究者にも内容が理解できるように記述することが必要であるとともに、その専門分野の研究者に対しても学術論文としての価値を示す内容でなければならない。

論文となる研究開発としては、その成果が既に社会に導入されたものに限定することなく、社会に活かすことを念頭において実施している研究開発も対象とする。また、既に社会に導入されているものの場合、ビジネス的に成功しているものである必要はないが、単に製品化した過程を記述するのではなく、社会への導入を考慮してどのように技術を統合していったのか、その研究プロセスを記載するものとする。

査読について

本ジャーナルにおいても、これまでの学術ジャーナルと同様に査読プロセスを設ける。しかし、本ジャーナルの査読はこれまでの学術雑誌の査読方法とは異なる。これまでの学術ジャーナルでは事実の正しさや結果の再現性など記載内容の事実性についての観点が重要視されているのに対して、本ジャーナルでは要素技術の組合せの論理性や、要素技術の選択における基準の明確さ、またその有効性や妥当性を重要視する(執筆要件と査読基準を記載)。

一般に学術ジャーナルに掲載されている論文の質は査読の項目や採録基準によって決まる。本ジャーナルの査読においては、研究開発の成果を社会に活かすために必要なプロセスや考え方が過不足なく書かれているかを評価する。換言すれば、研究開発の成果を社会に活かすためのプロセスを知るために必要なことが書かれているかを見るのが査読者の役割であり、論文の読者の代弁者として読者の知りたいことの記載の有無を判定するものとする。

通常の学術ジャーナルでは、公平性を保証するという理由により、査読者は匿名であり、また査読プロセスは秘匿される。確立された学術ジャーナルにおいては、その質を維持するために公平性は重要であると考えられているからである。しかし、科学者集団によって確立されてきた事実的知識を記載する論文形式に対して、なすべきことは何であるかという当為的知識を記載する論文のあり方については、論文に記載すべき内容、書き方、またその基準などを模索していかなければならない。そのためには査読プロセスを秘匿するのではなく、公開していく方法をとる。すなわち、査読者とのやり取り中で、論文の内容に関して重要な議論については、そのやり取りを掲載することにする。さらには、論文の本文には記載できなかった著者の考えなども、査読者とのやり取りを通して公開する。このように査読プロセスに透明性を持たせ、どのような査読プロセスを経て掲載に至ったかを開示することで、ジャーナルの質を担保する。また同時に、査読プロセスを開示することによって、投稿者がこのジャーナルの論文を執筆するときの注意点を理解する助けとする。なお、本ジャーナルのように新しい論文形式を確立するためには、著者と査読者との共同作業によって論文を完成さていく必要があり、掲載された論文は著者と査読者の共同作業の結果ともいえることから、査読者氏名も公表する。

参考文献について

上記したように、本ジャーナルの論文においては、個別の要素技術については他の学術ジャーナルで公表済みの論文を引用するものとする。また、統合的な組合せを行う要素技術について、それぞれの要素技術の利点欠点について記載されている論文なども参考文献となる。さらに、本ジャーナルの発行が蓄積されてきたのちには、本ジャーナルの掲載論文の中から、要素技術の選択の考え方や問題点の捉え方が類似していると思われる論文を引用することを推奨する。これによって、方法論の一般原理の構築に寄与することになる。

掲載記事の種類について

巻頭言などの総論、研究論文、そして論説などから本ジャーナルは構成される。巻頭言などの総論については原則的には編集委員会からの依頼とする。研究論文は、研究実施者自身が行った社会に活かすための研究開発の内容とプロセスを記載したもので、上記の査読プロセスを経て掲載とする。論説は、科学技術の研究開発のなかで社会に活かすことを目指したものを概説するなど、内容を限定することなく研究開発の成果を社会に活かすために有益な知識となる内容であれば良い。総論や論説は編集委員会が、内容が本ジャーナルに適しているか確認した上で掲載の可否を判断し、査読は行わない。研究論文および論説は、国内外からの投稿を受け付ける。なお、原稿については日本語、英語いずれも可とする。

投稿規定

投稿規定 [ PDF:598KB ]

シンセシオロジー編集委員会
制定 2007年12月26日
改正 2021年 6月 1日
原則として、研究論文、報告、論説の投稿、および読者フォーラムへの原稿を受け付ける。なお、原稿の受付後、編集委員会の判断により査読者と著者とで、査読票の交換とは別に、直接面談(電話を含む)で意見交換を行う場合がある。
投稿原稿の著者は、本ジャーナルの編集方針にかなう内容が記載されていれば、所属機関による制限並びに科学技術の特定分野による制限も行わない。ただし、オーサーシップについて記載があること(著者全員が、本論文についてそれぞれ本質的な寄与をしていることを明記していること)。
原稿の提出は紙媒体で1部および原稿提出チェックシート(Wordファイル[51.3KB])も含め電子媒体も下記宛に提出する。

〒305-8560
茨城県つくば市梅園1-1-1 つくば中央第1
産業技術総合研究所 広報部広報サービス室内 シンセシオロジー編集委員会事務局
なお、投稿原稿は原則として返却しない。
著者校正は1回行うこととする。この際、印刷上の誤り以外の修正・訂正は原則として認められない。
掲載記事の内容の責任は著者にあるものとする。
本ジャーナルに掲載された全ての記事の著作権は産業技術総合研究所に帰属する。
  1. 投稿記事
  2. 投稿資格
  3. 原稿の書き方
    • 3.1 一般事項
      • 3.1.1 投稿原稿は日本語あるいは英語で受け付ける。査読により掲載可となった論文または記事はSynthesiology(ISSN1882-7365)に掲載されるとともに、英語版のSynthesiology - English edition(ISSN1883-2318)にも掲載される。このとき、原稿が英語の場合にはオリジナル版と同一のものを英語版に掲載するが、日本語で書かれている場合には、著者が英語翻訳原稿を提出した場合のみ掲載する。
      • 3.1.2 研究論文については、下記の研究論文の構成および書式にしたがうものとし、報告・論説については、構成・書式は研究論文に準拠するものとするが、サブタイトルおよび要約はなくても良い。
      • 3.1.3 研究論文は、原著(新たな著作)に限る。
      • 3.1.4 研究倫理に関わる各種ガイドラインを遵守すること。
    • 3.2 原稿の構成
      • 3.2.1 タイトル(含サブタイトル)、要旨、著者名、所属・連絡先、本文、キーワード(5つ程度)とする。
      • 3.2.2 タイトル、要旨、著者名、キーワード、所属・連絡先については日本語および英語で記載する。
      • 3.2.3 原稿等はワープロ等を用いて作成し、A4判縦長の用紙に印字する。図・表・写真を含め、原則として刷り上り6頁程度とする。
      • 3.2.4 研究論文・報告・論説の場合には表紙を付け、表紙には記事の種類(研究論文・報告・論説)を明記する。
      • 3.2.5 タイトルは和文で10~20文字(英文では5~10ワード)前後とし、広い読者層に理解可能なものとする。研究論文には和文で15~25文字(英文では7~15ワード)前後のサブタイトルを付け、専門家の理解を助けるものとする。
      • 3.2.6 要約には、社会への導入のためのシナリオ、構成した技術要素とそれを選択した理由などの構成方法の考え方も記載する。
      • 3.2.7 和文要約は300文字以内とし、英文要約(125ワード程度)は和文要約の内容とする。英語論文の場合には、和文要約は省略することができる。
      • 3.2.8 本文は、和文の場合は9,000文字程度とし、英文の場合は刷上りで同程度(3,400ワード程度)とする。
      • 3.2.9 掲載記事には著者全員の執筆者履歴(各自200文字程度。英文の場合は75ワード程度。)及びその後に、本質的な寄与が何であったかを記載する。なお、その際本質的な寄与をした他の人が抜けていないかも確認のこと
      • 3.2.10 研究論文における査読者との議論は査読者名を公開して行い、査読プロセスで行われた主な論点について3,000文字程度(2ページ以内)で編集委員会が編集して掲載する。報告または論説における編集委員との議論は、編集委員が必要と認める場合に編集委員名を公開して行い、主な論点について800文字程度(半ページ以内)で編集委員会が編集して掲載する。
      • 3.2.11 原稿中に他から転載している図表等や、他の論文等からの引用がある場合には、執筆者が予め使用許可をとったうえで転載許可等の明示や、参考文献リスト中へ引用元の記載等、適切な措置を行う。なお、使用許可書のコピーを1部事務局まで提出すること。また、直接的な引用の場合には引用部分を本文中に記載する。
    • 3.3 書式
      • 3.3.1 見出しは、大見出しである「章」が1、2、3、・・・、中見出しである「節」が1.1、1.2、1.3・・・、小見出しである「項」が1.1.1、1.1.2、1.1.3・・・、「目」が1.1.1.1、1.1.1.2、1.1.1.3・・・とする。
      • 3.3.2 和文原稿の場合には以下のようにする。本文は「である調」で記述し、章の表題に通し番号をつける。段落の書き出しは1字あけ、句読点は「。」および「、」を使う。アルファベット・数字・記号は半角とする。また年号は西暦で表記する。
      • 3.3.3 図・表・写真についてはそれぞれ通し番号をつけ、適切な表題・説明文(20~40文字程度。英文の場合は10~20ワード程度。)を記載のうえ、本文中における挿入位置を記入する。
      • 3.3.4 図については画像ファイル(掲載サイズで350 dpi以上)を提出する。原則は白黒印刷とする。
      • 3.3.5 写真については画像ファイル(掲載サイズで350 dpi以上)で提出する。原則は白黒印刷とする。
      • 3.3.6 参考文献リストは論文中の参照順に記載する。
        雑誌:[番号]著者名:表題, 雑誌名(イタリック), 巻(号),開始ページ−終了ページ(発行年).
        書籍(単著または共著):[番号]著者名:書名(イタリック), 開始ページ−終了ページ, 発行所, 出版地(発行年).
        ウェブサイト:[番号]著者名(更新年): ウェブページの題名, ウェブサイトの名称(著者と同じ場合は省略可),URL, 閲覧日.
  4. 原稿の提出
  5. 著者校正
  6. 内容の責任
  7. 著作権
    本ジャーナルに掲載された全ての記事の著作権は産業技術総合研究所に帰属する。

執筆要件と査読基準

(2008.01)
執筆要件と査読基準の表
  項目 執筆要件 査読基準
1 研究目標 研究目標(「製品」、あるいは研究者の夢)を設定し、記述する。 研究目標が明確に記述されていること。
2 研究目標と社会とのつながり 研究目標と社会との関係、すなわち社会的価値を記述する。 研究目標と社会との関係が合理的に記述されていること。
3 シナリオ 研究目標を実現するための道筋(シナリオ・仮説)を科学技術の言葉で記述する。 道筋(シナリオ・仮説)が合理的に記述されていること。
4 要素の選択 研究目標を実現するために選択した要素技術(群)を記述する。また、それらの要素技術(群)を選択した理由を記述する。 要素技術(群)が明確に記述されていること。要素技術(群)の選択の理由が合理的に記述されていること。
5 要素間の関係と統合 選択した要素が相互にどう関係しているか、またそれらの要素をどのように構成・統合して研究目標を実現していったかを科学技術の言葉で記述する。 要素間の関係と統合が科学技術の言葉で合理的に記述されていること。
6 結果の評価と将来の展開 研究目標の達成の度合いを自己評価する。本研究をベースとして将来の研究展開を示唆する。 研究目標の達成の度合いと将来の研究展開が客観的、合理的に記述されていること。
7 オリジナリティ 既刊の他研究論文と同じ内容の記述をしない。 既刊の他研究論文と同じ内容の記述がないこと。