研究者の方へ
研究相談・研究データ・ 研究ユニット紹介
ビジネスの方へ
プロジェクト相談・ 研究依頼・各種協業相談
一般の方へ
産総研ってどんなとこ? 科学の扉を開こう!
科学の楽しさ、産総研が取り組んだ製品や事例のご紹介
ホーム > 研究成果検索 > 研究ハイライト 高容量で劣化しないリチウムイオン2次電池を目指して
今回開発した電極(負極)は、蒸着により微細積層構造を形成し、充放電特性は、現在主流である黒鉛負極の約5倍の容量に相当し、一酸化ケイ素の理論容量とほぼ一致した。
次世代のリチウムイオン2次電池、負極としては従来の黒鉛より数倍から十数倍の理論容量を持ち供給の安定性に優れたケイ素系負極が最有力とされている。中でも一酸化ケイ素(SiO)は、汎用の黒鉛負極(372mAh/g)に比べて、理論容量が2007mAh/gにも達するため期待されている。一酸化ケイ素は蒸気圧が高く、高温減圧条件下で容易に気化するため、蒸着でナノスケールの一酸化ケイ素薄膜を基板上に成膜できる利点がある。しかし、一酸化ケイ素自体は導電性が極めて低いため、蒸着薄膜を直接電極として用いる発想はなかった。
今回開発した、リチウムイオン2次電池用電極(負極)は、導電性基板上に蒸着でナノメートルスケールの一酸化ケイ素薄膜を形成し、その上に導電助剤を積層させた。充放電特性は、黒鉛負極(372 mAh/g)の約5倍(2000mAh/g)に相当し、一酸化ケイ素の理論容量2007 mAh/gとほぼ一致した。また、充放電を500サイクル以上繰り返しても容量は維持され、高容量で長寿命な特性を持つことが明らかとなった。これにより、負極のエネルギー密度が向上し、リチウムイオン2次電池の高容量化や小型化が促進されると期待される。
今回開発した電極は、初回充電時に大きな容量を必要とし、このまま電池として組むと正極のリチウムが消費され性能が低下してしまう。今後、この問題を避けるために予めリチウムと反応させるプレドープと言う処置を施した電極を準備し、既存の正極と組み合わせた電池を作成して実用化に向けた性能実証を行っている。
主任研究員 間宮 幹人(まみや みきと)
研究チーム長 秋本 順二(あきもと じゅんじ)
メール:act-webmaster-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。) ウェブ:https://unit.aist.go.jp/atc/