2020年に向け求められる検査基盤の強化
オリンピックなどの国際競技大会に出場する選手が対象となるドーピング検査は、世界ドーピング防止機構(WADA)が公示するドーピング禁止物質のリストに基づいて行われています。このリストは毎年更新され、現在は数百種類にも及びます。ドーピング検査には、高速液体クロマトグラフ−質量分析装置などの多成分の禁止物質を同時に分析できる装置が用いられますが、これら装置の目盛付けには禁止物質と同じ成分それぞれの標準物質が必要です。禁止物質には大量合成が難しい代謝物などもあり、また分析のたびに消費されてしまうために、必要となる標準物質を常備することは容易なことではありません。信頼性の高いドーピング検査結果を得るためには、計量学的に高品質な標準物質を充実させることが重要であるため、2020東京オリンピック・パラリンピックなどでの検査基盤強化の一環として、WADAから産総研に計量学的な支援の要請がありました。