新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集

新型コロナウイルス感染症対策や新型コロナウイルスによる新たな生活様式に関連して産総研が取り組みをはじめた技術シーズについて、産学官のさまざまなレイヤーとの連携に向けたきっかけ作りを目的に「新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集」として発信しています。
 

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技術シーズ集

技術シーズ集は以下のカテゴリ別に分類しております。

感染予防

タイトル 概要
高感染リスク空間の気流制御によるゾーニング技術の開発 新型コロナウイルス等によって引き起こされるパンデミックへの対応では、空間のゾーニングによる感染リスクの低減が非常に重要である。しかし仮設された病院施設などでは物理的なゾーニングが困難となる場合がある。本テーマによる取り組みで、気流のモニタリング手段を提供することが可能となり、市販のエアーゾーニング装置を効果的・効率的に使用すれば感染リスクの低減が期待できる。
光触媒・光電極を用いた次亜塩素酸・過酸化水素の生成 食塩水や炭酸水のなかで光触媒(WO3やBiVO4等の半導体酸化物)をコーティングしたシートに太陽光を当てると、細菌やウイルスを不活性化する次亜塩素酸や過酸化水素が生成する。基礎段階ではあるが、この方法により次亜塩素酸や過酸化水素を含む希薄な溶液を製造することができた。本技術は、家庭やオフィス、食品関係の事業所などでの簡便な殺菌・消毒としての用途が期待される。
光触媒による抗菌・抗ウイルス効果 産総研ではWO3に銅助触媒を担持した可視光応答性の光触媒(Cu-WO3)を開発した。この光触媒はVOC(揮発性有機物)などを含む様々な有機物を効率的に水とCO2に分解できる。この有機物分解の作用で光触媒表面は清浄状態を保ちやすくなる。Cu-WO3光触媒は一時的に光を当てると抗菌・抗ウイルス作用を持つ一価銅イオンが生成し、その作用が暗所でも長期に保持される。Cu-WO3光触媒をタイル、食器、つり革、マスクなどにコーティングすることにより、日常生活での抗菌・抗ウイルス効果が期待できる。

治療方法

タイトル 概要
吸入療法用一酸化窒素ガスの不純物評価 医療用の一酸化窒素(NO)製剤(濃度800ppmの窒素希釈NO混合ガス)は海外で製造され、米国においてはCOVID-19による肺炎の救急療法(臨床試験)でも使用されている。本製剤は高圧ガス容器に高純度NOガスと高純度窒素ガスを充填したものであるが、NOガスは圧力に応じた自己分解性を有し、それにより生成したNO2などの有害な不純物成分およびその成分と容器内残留成分との反応により生じた不純物の濃度が時間と共に増加する。本テーマでは、同製剤の安全性向上と将来の国産化に資することを目的として、種々の充填条件等で一酸化窒素/窒素混合ガスの不純物とその経時変化の評価を行う。

健康管理

タイトル 概要
心とからだの健康のセルフマネージメントを目指した技術開発
ーストレスを受けた心の健康状態を検知するためのモニタリング技術の開発-
ストレスやそれによる睡眠の乱れは、うつ病などの精神疾患や糖尿病などの代謝性疾患のリスクを高めることが知られている。当研究所で開発したヒトの不眠症への外挿が可能なストレス性睡眠障害モデルマウスを用いて、睡眠の乱れから疾患の発症に至る前までの未病段階を早期発見するためのバイオマーカーを開発している。通常の疾患とは異なり、睡眠には健康を示す客観的な正常値が存在せず、その評価基準は個々人によって大きく異なるものと考えられる。本テーマでは、睡眠の乱れから疾患の発症に至る普遍的なメカニズムを探索することにより、心の健康をセルフマネージメントするための基盤技術を開発している。
心とからだの健康のセルフマネージメントを目指した技術開発
ーフレイル(虚弱)につながる未病状態を改善するための技術開発ー
日常生活の乱れによる社会的フレイルや、ストレスやうつ病、認知機能障害などによる心理的フレイル、ロコモティブシンドロームによる身体的フレイルは、ゆっくりと確実に生活の質を低下させる。そして生活習慣病などの身体的な疾患の発症リスクを高め、健康寿命を短縮させる要因と考えられている。本テーマでは、当研究所で開発した低栄養・低運動性の筋萎縮を模倣するモデル動物を用いて、筋萎縮にかかわる新規な分子メカニズムを解明するとともに、その未病状態の改善を目的とした栄養学的治療法を開発している。
⽔際対策に寄与する⾮接触体温計測技術の信頼性向上 新規感染症の防疫強化における現場負担の軽減等、経済活動の早期正常化に資する非接触体温計測の高精度化と信頼性向上のための技術を開発している。具体的には発熱者の検知に用いるサーモグラフィを現場で正しく調整するために必要な温度基準である平面黒体(基準赤外線放射体)の高精度化を行っている。また各種サーモグラフィの性能、測定対象の影響、周囲環境の影響など現場環境における誤差要因をより詳細に検証している。

ニューノーマルライフスタイル

タイトル 概要
次世代モバイル機器向け機能性デバイスの迅速・全元素計測技術の開発 新型コロナウイルス感染症の予防対策として、人と人との接触率を低減する新しい生活様式が求められている。その一環として学校の授業のオンライン化やテレワークでのWeb会議開催などが広がり、ノートPCやスマートフォンなどに代表されるモバイル情報通信機器の需要が今後更に加速するものと考えられる。これらの情報通信機器には微小な機能性デバイスが多数組み込まれており、元素組成とその分布がデバイスの特性、さらには情報通信機器そのものの性能を決定づける。本テーマはレーザー光源とプラズマ分光分析法を利用して、これら機能性デバイスの全元素を局所的、二次元的、三次元的に迅速に分析する計測技術の開発に挑戦するものである。
コロナ禍における人間行動の測定手法の開発 AIを用いて電力ビッグデータを解析することにより、緊急事態宣言が出た地域における在宅率や「新しい日常」の生活様式を把握する。現在開発中の電力ビッグデータ分析技術を活用することで、緊急事態宣言や自粛要請の実効性、時間経過とともに生じる「緩み」を高い時間解像度で分析することができる。本手法は、高齢者や独居者の見守りや配送業の宅配時間の最適化にも応用が可能であり、コロナウイルス感染拡大収束後のSociety5.0形成や経済活動の効率化にも貢献する技術となる。
現実世界データを用いた人為的な起源による大気汚染とその健康影響の評価・検証 現代型大気汚染(オゾン、PM2.5)の大部分は、自然起源を含む複数の発生源・物質から生成される。シミュレーションにより、オゾンやPM2.5に対する人為的な起源の寄与率やその健康への影響を推定する研究が盛んに行われているが、現実世界においてそれらを評価・検証する手立てはこれまでなかった。
本テーマでは人為的な起源による大気汚染とその健康への影響を、新型コロナウイルスの蔓延により人間・産業活動が大幅に抑制された前後でのオゾンおよびPM2.5とその原因物質の衛星・地表観測データ、さらに日死亡者数等の健康影響に関するデータを現実世界にて収集し、解析することにより評価する。また当研究所で開発したシミュレーションモデル(ADMER-PRO)による推定結果を、現実世界で得られたデータで比較・検証する。