賞の概要
産総研では2003年度(ホームページでの公表は2015年度から)より、職員の士気高揚を図るため、理事長賞表彰を毎年度実施しています。
2019年度は以下のとおり受賞者を決定いたしました。
過去の受賞一覧
研究
モビリティ電動化に向けたSiCパワーエレクトロニクスの実用化
研究業績概要
パワーエレクトロニクスは、今後の電力有効活用、省エネ、ゼロエミッション社会実現のための重要な基礎技術である。しかしながら、Si半導体に対して後発であることや、難易度が高い技術であることなどの理由により、社会実装の実現が困難であった。そのため、最先端の技術開発を促進し、複数技術の研究開発を一貫して進めて、産業界へ橋渡しをすることが、産総研に要求されていた。
被表彰者らは、SiCパワーエレクトロニクス技術に係わる大型国家プロジェクト(SIP)と、企業共同研究連合体(TPEC)の活動を連携させた技術開発体制を構築し、実用的SiCパワー半導体デバイス/モジュールを開発して、産業界へ技術を移転した。更に、当該技術の実用的新規要素技術の開発を牽引し、大規模国家プロジェクトの目標を達成した。
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受賞者代表(奥村 元)(右) |
鶏卵バイオリアクター技術の確立と事業化
研究業績概要
近年ヒト抗体等、組換えタンパク質を用いたバイオ医薬品の市場が急拡大している。しかし、高額な生産コストが、バイオ医薬品価格高騰の要因の一つであり、組換えタンパク質の低価格化が課題となっていた。一方、ニワトリと卵は組換えタンパク質の「生物工場」として有望とされてきたが、高精度なニワトリ遺伝子組換え技術の確立と、組換えタンパク質を鶏卵中に安定に大量生産する技術開発が要求されていた。
被表彰者らは、ゲノム編集技術を用いた精緻な遺伝子組換えにより、組換えタンパク質の超低コスト且つ大量生産可能な鶏卵バイオリアクターの基盤技術を、世界で初めて確立し、連携企業とともに受託生産事業化を実現した。この方法は、バイオ医薬品や組換えタンパク質製品生産に高い優位性があり、今後さまざまな産業において鶏卵バイオリアクター技術の社会実装が可能となる。
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受賞者代表(大石 勲)(右)
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家畜繁殖用精液の高受胎率化処理技術の開発
研究業績概要
国内の人工授精による牛繁殖の成功率は、約30年にわたり長期下落傾向にある。繁殖性の向上には、雄側と雌側の両方からの研究が必要であるが、現在の研究の大半は雌側のものであり、雄側の研究は少なかった。被表彰者らは、家畜繁殖用精液の改良を目指し、流体シミュレーションによる設計及びデバイス試作を行って、活性の高い精子を得ることに成功した。更に高活性の精子を簡便かつ大量に捕集できる装置開発も成功した。装置開発では、操作と装置の簡便さを優先して設計することで社会実装を大幅に加速するとともに、初期投資5万円以下で構成可能な装置を実現した。大量生産された凍結精液は、極めて高い受胎率が得られ、長期間、繁殖に失敗していた雌牛でも良好な受胎率を得られた。
本研究の業績は、候補者らの的確な研究マネージメントにより、産総研の他、大学、国研、民間企業及び公設試との協力体制の下で得られた。
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受賞者代表(山下 健一)(右)
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運営・管理・支援
産総研ふるさとサポーター制度の創設
受賞理由
被表彰者らは、職員が自らと関係の深い都道府県を応援する「産総研ふるさとサポーター」制度を創設し、「産総研ふるさとサポーターの呼称の使用に関する規程・同要領」を整備した。平成30年度から活動を開始し、令和元年度には延べ263人のサポーターの登録、10月末までの半年で22件の活動を行った。更に、本制度を所内外に周知するため、チラシの作成、Webページ整備、全都道府県教育委員会等での宣伝や各種イベントにおける広報を行った。サイエンススクエアを見学する団体に対するサポーターのガイドや、一般公開等での協力、公設試や財団等からの講演依頼にも対応し、経済産業省主催の「地域未来牽引企業サミット」では、サポーターが産総研のアピールを行い、産総研の地域貢献活動に貢献した。
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受賞者代表(谷口 正樹)(右)
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文書決裁(権限委任及び専決)の見直し
受賞理由
被表彰者らは、対外的に発出する文書について、施行者名、施行先及び文書内容を分類整理し、研究所の権利義務との関係の有無や影響等を調査分析した。その結果、各部署に日常業務に付随する形式的文書の発出が一定量あることが判明したため、責任と権限の明確化、法令等に基づく要請や業務遂行上の必要性、適正な法人文書管理、業務効率化等の観点から、専決規程を見直し文書決裁の適正化を図った。従来の専決規程は、約300項目におよぶ専決案件について、その責任の重さと決裁権限者の役職の設定に統一性がなく、必要な専決案件の参照が困難な構造であった。
部署毎に専決案件を整理し、対外的に発出する文書の根拠となる法令や規程類を精査して、案件毎の決裁権限者の役職の見直しと調整を行った。
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受賞者代表(石塚 拓也)(右)
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ユーザー目線による“仕様書作成マニュアル”の改訂
受賞理由
研究者の負担感が大きい仕様書作成業務は、業務改革の柱の一つとなっていた。被表彰者らは、「仕様書作成マニュアル」を可能な限り平易にするため、「解説版」と「フォーム集」に分割する等、大幅な見直を行った。また、研究装置や役務の調達においては、仕様書の内容を一般化し、仕様書の参考事例を「事例集」としてまとめた。これらの改訂版の閲覧を容易にするため、マニュアルを産総研イントラに「手続き案内」として掲載した。
以上の業績により、研究者、研究支援担当者および調達担当者が、仕様書の確認・修正に要する時間を大幅に効率化することができ、年間3,500件を超える仕様書作成作業において、1件当たり30分程度の効率化が見込まれ、年間では1,750時間の効率化につながると試算された。
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受賞者代表(小野 修平)(右)
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特別貢献
国・自治体の火山噴火対応への地球科学的知見の提供
受賞者
- 篠原 宏志
- 下司 信夫
- 石塚 吉浩
- 及川 輝樹
- 古川 竜太
- 風早 竜之介
- 松本 恵子
- 南 裕介
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- 山元 孝広
- 森田 雅明
- 宮城 磯治
- 東宮 昭彦
- 宝田 晋治
- 斎藤 元
- 星住 英夫
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- 田中 明子
- 山﨑 誠子
- 石塚 治
- 草野 有紀
- 川邉 禎久
- 伊藤 順一
- 工藤 崇
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受賞理由
被表彰者らは、火山灰・火山ガスなどの噴出物に対する地質・岩石・鉱物・化学的調査を組織的かつ機動的に実施し、これまでに基盤情報として収集した噴火履歴情報等を活用して、現在の噴火活動の実態を描き出す際に重要な地質情報を、抽出・整理して提供している。具体的には、霧島新燃岳、草津白根山、口永良部島、浅間山および桜島・阿蘇山中岳の現地調査や火山ガス・火山灰の分析作業を行い、気象庁・火山噴火予知連絡会に過去3年間で計80報報告した。産総研の調査結果は活動中の火山現象を特徴づける根拠資料として、気象庁や火山噴火予知連の統一見解の資料の根拠資料としても利用されており、噴火活動に対する緊急調査結果は産総研の公式HPでも公開している。2017年以降、噴火活動に関する産総研の報道実績は3年間で428件にのぼり、産総研の活動を社会に大きく示すことができた。また、火山活動の監視を担う気象庁職員に対する研修に協力する他、技術研修生に対する火山噴出物に対する指導や、地方自治体の防災担当職員向けの研修も行っている。
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受賞者(篠原 宏志)(右) |