- 中国地方で採取した土壌試料の化学特性を分析し、重金属類の濃度分布を作成
- ヒトへの健康影響を評価してリスクレベル情報を提供
- 社会インフラ整備や環境保全などの基礎資料として活用可能
(上図)過去にヒ素に関して鉱山廃水対策を実施した主要鉱山(赤字)(右図)中国地方のヒ素に関するヒトへの健康影響リスク評価図(表層土壌評価基本図~中国地方~より編集)(RfD[%]: 参照⽤量に対する割合)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、中国地方の表層土壌調査に基づく地球化学情報およびそれらの自然由来バックグラウンド情報と共に、それらを基にヒトへの健康影響リスクを可視化した表層土壌評価基本図~中国地方~を刊行しました。表層土壌評価基本図は、四国地方、九州・沖縄地方の整備が完了しています。今回、中国地方が整備されたことにより、付加体地質構造を有する西南日本の土壌バックグラウンド情報が明らかになりました。中国地方は、かつては多数の金属鉱床の採掘が行われてきた歴史があり、それに起因する鉱害防止対策が行われてきました。過去に銅、ヒ素、カドミウムなどが鉱山活動により農用地などを汚染した履歴もあり、ヒ素に関しては人的被害が報告された地域もありました。表層土壌中の重金属類の含有量分布は母材である付加体堆積物もしくはその後の鉱山活動で集積した地域に高濃度に賦存する傾向にありますが、移行性の高い有害元素は河川下流域で溶出量のみを高く示す傾向にあります。このような土壌化学成分のバックグラウンド情報および算出したヒトへの健康影響リスク情報は、各種インフラ整備時の環境対策や土壌汚染が発覚した際の浄化活動に活用できます。
原 淳子(産総研 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ 研究グループ長)
土田恭平(産総研 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ 研究員)
川邉能成(早稲田大学 創造理工学部 環境資源工学科 教授)