発表・掲載日:2024/07/04

常温・常圧で進行するアンモニアの連続電解合成で世界最高性能を達成

-アンモニア製造工程におけるカーボンフリーの実現に向け大きく前進-


出光興産株式会社(以下「出光興産」)、国立大学法人東京大学(以下「東京大学」)、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科(以下「大阪大学」)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)は、共同で実施している研究開発において、空気中に多量に存在する窒素と水から常温・常圧で進行するアンモニアの連続電解合成※1で世界最高性能を達成しました。


燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、水素キャリア※2や発電・工業ボイラー用の新燃料として注目されていますが、高温・高圧で製造されるため、製造時のCO2排出量の抑制が課題のひとつです。このたびの研究成果は、常温・常圧下の窒素・水・電気(再生可能エネルギー由来を想定)でアンモニアを連続的に製造できることをラボスケールで実証したものです。100年以上の歴史を持つ現在の製造方法(ハーバー・ボッシュ法※3)に替わり、アンモニア製造工程におけるカーボンフリーの実現にはずみをつける革新的な技術となります。

研究開発においては、東京大学大学院工学系研究科の西林仁昭教授らが開発したモリブデン触媒※4を応用しています。このモリブデン触媒に適した電解合成技術の開発※5により、電解合成に使用する電極の単位面積当たりのアンモニア生成速度が従来技術より約20倍向上し、世界最高性能を達成しました(図1,2)。

本研究開発は、出光興産を幹事会社とし、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業の委託業務※6として実施しています。今後は、コスト競争力の高い量産化技術の確立を目指し着実に開発を進め、研究成果をさらに発展させてまいります。

図1

図1.常温・常圧下、窒素・水・電気を用いたアンモニア電解合成反応の性能値比較
報告例1:S. Zhang, H. Zhaoら, Angew. Chem. Int. Ed., 59, 13423 (2020)
報告例2:S. Zhang, H. Zhaoら, Nat. Sustain., 6, 169 (2023)  
 

図2

図2.アンモニア電解合成反応試験の様子


※1 アンモニアの連続電解合成
プラス、マイナスの電極とこれらを分ける隔膜で構成される電解セルと呼ばれる装置に通電することで、触媒の存在下、窒素と水から連続的にアンモニアを合成すること。太陽光、風力等の再生可能なエネルギー由来の電気を用いることで、アンモニア製造工程のカーボンフリーが実現可能となる。[参照元へ戻る]
※2 水素キャリア
水素を液体や水素を含む化合物に転換し輸送・貯蔵する方法。アンモニアは有望な水素キャリアの一つ。[参照元へ戻る]
※3 ハーバー・ボッシュ法
高温・高圧下で水素と窒素を反応させアンモニアを製造する技術。製造時のCO2排出が避けられず、原料の水素を石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料から取り出すため、原料由来のCO2排出も課題。[参照元へ戻る]
※4 モリブデン触媒
モリブデン原子を取り囲むように配位子と呼ばれる分子などが結合した触媒。窒素と水、ヨウ化サマリウム(還元剤)の存在下、常温・常圧でのアンモニア合成が可能。(参照論文:Nature 568, 536–540(2019)) [参照元へ戻る]
※5 モリブデン触媒に適した電解合成技術の開発
モリブデン触媒の改良(担当:東京大学)、電解合成反応場の最適化(担当:産総研、出光興産)、電解合成反応を促進する還元剤の開発(担当:大阪大学)を各担当機関にて実施。[参照元へ戻る]
※6 グリーンイノベーション基金事業の実施概要
以下の通り。
■ プロジェクト名:常温、常圧下グリーンアンモニア製造技術の開発
■ 体制:出光興産株式会社(幹事)、国立大学法人東京大学、国立大学法人東京工業大学、国立大学法人大阪大学、国立大学法人京都大学
■ 再委託先・共同実施先:国立研究開発法人産業技術総合研究所、日産化学株式会社、株式会社東芝、国立大学法人筑波大学
■ 期間:2021年度~2028年度(予定)
■ URL:https://green-innovation.nedo.go.jp/project/building-fuel-ammonia-supply-chain/scheme/ [参照元へ戻る]


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