国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)地質調査総合センター 活断層・火山研究部門【研究部門長 伊藤 順一】 川邉 禎久 主任研究員、宝田 晋治 上級主任研究員、石塚 吉浩 研究グループ長らは、日本の陸域に分布する約440の第四紀火山の火山噴出物分布や地質情報を表示、検索できる「20万分の1日本火山図」(以下「日本火山図」という)を、「日本の火山」データベースの新コンテンツとして公開した(https://gbank.gsj.jp/volcano/vmap)。
「日本火山図」は、日本の第四紀火山の火山噴出物の情報を全国統一基準で整備し20万分の1スケールで示した、世界的にみても火山噴出物の位置情報とデータが最も高精度に表示・検索できる火山データベースである。これらの情報は、過去の火山活動を知り、火山の恵みを活用し、将来の火山災害対策を行う上で非常に有用である。ウェブ地図上で各情報をわかりやすく検索・表示でき、誰でも使用できるため、行政、企業、教育など産官学のあらゆる機関の防災や地域振興などの分野において、これまで以上の火山地質情報の活用が期待される。
「日本火山図」ウェブ表示検索画面
北日本地域の火山噴出物の分布(左)と火山噴出物の情報表示(右)
背景地図は地理院地図(淡色地図、標準地図)を利用
日本の陸域には活火山を含め約440の第四紀火山がある。日本列島に住む私たちにとって、火山が過去にいつ、どこで、どのような噴火をしたのかを知ることは、地熱や土地利用など火山の恵みを活かし、未来の災害を最小限に食い止めるために重要である。火山地質情報を、目的・地域に合わせより高度に活用するために、火山活動の変遷を細かく分類し、火山噴出物の分布範囲などを地図上に高精度に表示できる、使いやすい火山データベースの整備が求められている。
産総研が既に公開している「日本の火山」データベースは、気象庁や自治体など防災や地域振興の分野で活用され、産総研のデータベースの中でも特にアクセス数が多い。産総研の研究員による詳細かつ膨大な調査結果を編さんし、全ての基本的な火山情報(いつ、どこで、どのような火山活動が起こったのか)をひとつのウェブサイトで表示できるようにしており、その高い信頼性と利便性が多くのユーザーを生み出してきた。一方、これまでは火山の噴火規模などの理解に有用な火山噴出物分布の情報がなく、またユーザーによる火山情報の検索はできなかった。そこで今回、「日本火山図」を作成し、火山噴出物の分布をウェブ地図上に表示し、検索・閲覧できるシステムを開発することとした。
「日本火山図」では、「日本の火山」データベースを基に、日本全土を11の地域に分け、地域内の第四紀火山について産総研が保有するデータや各種論文などから、火山噴出物の分布と噴出物ごとの年代などの属性データを取りまとめた。火山噴出物の分布はGIS化し、ウェブ上の地図に20万分の1地質図のスケールと精度で表示できるようにした。
図1 「日本火山図」閲覧検索画面
背景地図は地理院地図(淡色地図)を利用
さらに、これらのデータをユーザーが簡便に使えるようウェブ閲覧・活用システムを開発した(図1)。このシステムでは、わかりやすい表示と、詳細な複合検索を実現するため、ベクトル方式のタイルシステムを用いた。ある火山(または火山噴出物)を検索すると、これまでの火山噴出物の分布域がさまざまな色で表示され、その分布域をクリックすると、火山噴出物の名前や年代などの属性情報が表示される(図2)。その他、目的に応じて、地図表示の拡大縮小、火山名や火山噴出物名などによる検索、特定の火山噴出物の絞り込み表示、火山噴出物分布の透明度や背景地図の変更などさまざまな機能を搭載した。これらを活用することで、火山噴出物の分布や影響範囲、火山の活動史などをわかりやすく表示できる。このシステムにより、日本全国の第四紀火山のより詳細な情報を、インターネット環境があればいつでも誰でも活用できるようになった。今後、研究、防災、建築(インフラ)、教育など、多方面での活用が期待される。
図2浅間火山の噴出物
詳細情報は浅間火山1783年噴火の噴出物(水色エリア)
背景図は地理院地図(傾斜量図)を利用
「日本火山図」は、産総研地質調査総合センターの「地質情報データベース」として公開される。今後は研究の進展に伴うデータのアップデートや機能の改善・追加、GISデータのダウンロード機能、火口分布図などの整備を進めていく。