広島大学大学院医歯薬保健学研究科の阿部泰彦准教授、北海道大学大学院歯学研究院の横山敦郎教授および産業技術総合研究所健康工学研究部門の槇田洋二研究グループ長らの研究チームは、2015年に、医療品・化粧品などの分野で広く応用され、その安全性がすでに確認されている「塩化セチルピリジニウム(CPC)」の抗菌活性を利用し、CPCが徐放して持続的な抗菌効果を発揮する「無機系抗菌剤CPC担持モンモリロナイト」を開発しました。さらに、これを応用し、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)平成27年度医工連携事業化推進事業「在宅歯科医療における口腔感染症や誤嚥性肺炎の予防機能を有した抗菌性粘膜調整材の開発・事業化」において、複数の研究機関や企業と産学連携コンソーシアムを形成し、共同で事業化を進めてきました。
この度、表面上で、カンジダ菌、黄色ブドウ球菌およびミュータンス菌の増殖を2週間に渡って持続的に抑制する粘膜調整材をメディカルクラフトン株式会社が開発、平成30年10月9日付けで厚生労働大臣に製造販売が承認されました。
本製品は、日本で初めての口腔に薬剤が徐放するコンビネーション製品(薬物・機器組み合わせ製品)となります。今後は保険適用の手続きを経て、2019年春の販売開始を予定しております。
<産学連携コンソーシアム>
■ 研究機関
国立大学法人 広島大学
国立大学法人 北海道大学
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
■ 企業
メディカルクラフトン株式会社(製造販売業者)(製造業者:株式会社ニッシン)
600万人を超える要介護高齢者に対する在宅歯科医療では、入れ歯の治療が最も多く、中でも入れ歯で傷ついた粘膜の治療に「粘膜調整材」がよく使用されています。
粘膜調整材は、微生物(細菌、真菌)が付着し易いため、口腔の環境を悪化させ、抵抗力のない高齢者の全身への持続的な感染源となり、誤嚥性肺炎発症のリスク要因となっています。
したがって、この問題を解決するために、微生物が付着し難く、汚染・劣化を防止できる粘膜調整材の開発が求められています。
本研究チームが開発した無機系抗菌剤は、医療分野のみならず産業界全体へ応用可能です。現在、本製品のように、その他の医療機器や衛生製品への応用研究を継続して行っています。国民の安全で衛生的な環境形成に貢献できるよう、今後も研究を進めてまいります。