糸魚川市フォッサマグナミュージアム、国立大学法人 新潟大学、国立研究開発法人 産業技術総合研究所からなる研究グループは、新潟県糸魚川市小滝で採集された岩石から、古生代シルル紀(約4億2000万年前)※1という時代を示す放散虫※2化石を発見しました。
これまでに新潟県内で発見されている最古の化石は、古生代デボン紀(約4億年前)※3のものであり、今回の発見はそれをさらに2000万年ほど遡る新潟県最古の化石記録となります。
本研究成果は、平成29年1月27~29日に早稲田大学で開催される日本古生物学会第166回例会において発表されます。また、平成29年3月31日出版予定の新潟大学理学部紀要"Science Reports of Niigata University (Geology)"に詳細な内容が掲載されます。
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図1. 小滝川流域で採集された礫岩中の珪質岩礫から発見された古生代シルル紀の放散虫化石 |
フォッサマグナミュージアム、新潟大学、産業技術総合研究所 地質情報研究部門では、糸魚川の地質を明らかにする目的で平成22年から共同研究を行っています。これまでに市振地域の境川右岸の採石場において研究を行い、学会や論文を通してその成果を公表してきました(伊藤ほか,2012;Ito et al., 2014など)。
平成26年からは小滝地域の研究を開始し、野外調査や化石の採集などを行ってきました。近年、フォッサマグナミュージアムと広島大学の児子修司博士は、小滝地域で採集された礫岩※4中の泥岩礫や石灰岩礫から古生代デボン紀※3のサンゴを発見しました(Niko et al., 2014, 2015など)(礫岩の入手の経緯※5)。一方で、この礫岩には珪質岩礫も含まれていますが、この礫からの化石の抽出は行われていませんでした。
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図2. 地質時代表 |
本研究グループが研究対象とした礫岩試料は、小滝川ヒスイ峡ジオサイトの下流域である小滝の瀬野田から、河原の大きな転石として採集されました(図3)。この礫岩は現在フォッサマグナミュージアムに展示されています(図4)。本研究グループは、保管されているこの礫岩試料の一部の酸処理を行い、含まれていた珪質岩礫から大きさ1ミリメートル以下の放散虫※2化石を抽出しました。この放散虫化石(図1)はアメリカのテキサス州や岐阜県高山市の福地地域の古生代シルル紀※1の地層から報告されている化石群集と同じ種を含んでいることから、同時代のものと判断されました。これまでに新潟県内から発見・報告されている最古の化石記録※6は古生代デボン紀のものであり、本研究の結果は、県内最古となる化石の発見となります。全国的に見てもシルル紀の化石の産出地点は限られており、貴重な報告といえます。なお、この「シルル紀の化石を含む珪質岩礫」を含む礫岩が堆積した時代は、ジュラ紀(約2億年前)の可能性があります。
また、現在糸魚川には古生代シルル紀の放散虫を含む地層の存在は知られていません。礫岩からシルル紀の放散虫を含む礫が発見されたことは、礫岩が堆積した当時はその地層が陸上に露出していたことを示します。このことは、糸魚川における数億年前の地質や地形を考える上で重要な情報となります。
今回の報道発表に合わせて、フォッサマグナミュージアム入口付近に特設展示コーナーを設けます。
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図3. 化石の発見地点の位置図 |
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図4. 研究対象とした礫岩(1)とその研磨片(2)ならびに放散虫を発見した珪質岩礫(3)。 |
(1)の礫岩は現在、フォッサマグナミュージアムの第3展示室に展示されている。 |
今回の研究により、新潟県内最古の化石が発見されました。この礫岩から古生代シルル紀及びデボン紀の化石が見つかっていることから、より古い時代の化石が発見される可能性もあります。
今後も糸魚川市での調査・研究を継続し、この礫岩が露出する場所を探し、礫岩そのものの時代などについて解明していく予定です。