国立大学法人筑波大学(以下、筑波大学) 生命環境系の蓑田歩助教らは、硫酸性温泉に生息する紅藻 ガルディエリア・スルフラリアGaldieria sulphurariaの細胞表層が、強酸性条件下でも高い効率で、金とパラジウムを吸着することを見いだしました。
金やパラジウムなどの貴金属は、装飾品としてだけでなく、先端産業でも高い需要がある一方、地球上における存在量はとても少なく、そのリサイクルは重要な課題です。我が国を含む先進国には、都市鉱山と呼ばれるほど多くの産業廃棄物が存在し、例えば、金メッキ工場の廃液1トンには、優良金山の金鉱石1トン分に匹敵する量の金が含まれています。現在、金などの回収・リサイクルは一部行われていますが、低濃度の貴金属廃液からの効率の良い回収は難しく、高効率で低コストな環境に優しい回収方法が求められています。
今回、蓑田助教らは、高温・酸性条件に生息する硫酸性温泉紅藻Galdieria sulphurariaに着目し、研究を進めた結果、この紅藻の細胞表層が、強酸性条件下においても高い効率で金とパラジウムを吸着することを見いだしました。さらに、王水ベースの実際の金属廃液の酸濃度を0.6 M程度にすることで、低濃度で含まれている金とパラジウムを90%以上の効率で、Galdieria sulphurariaの細胞表層に短時間で選択的に吸着させた後、溶出できることを見いだしました。
本研究成果は、低濃度の金とパラジウムを低コストで回収・リサイクルする技術の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、Bioresource Technologyのオンライン速報版でまもなく公開される予定です。
*本研究は、筑波大学Ju Xiaohui(ジュ シャオフィ)博士、五十嵐健輔博士、桑原朋彦准教授、産業技術総合研究所物質計測標準研究部門の宮下振一主任研究員、藤井紳一郎主任研究員、稲垣和三研究グループ長との共同研究です。
*JST戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)の一環として行われ、他に、(公益財団法人)徳山科学技術振興財団などの支援、田中貴金属工業(株)からの実金属廃液の提供を受けました。