国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)と日本バイオプラスチック協会(以下「JBPA」という)との共同研究の成果を、経済産業省の国際標準化活動の支援を受けて、日本プラスチック工業連盟を通じて国際標準化機構(ISO)に提案し、国際規格ISO 16620シリーズとして発行された。
今回発行されたISO規格の番号をバイオプラスチック製品に明示することで、世界市場に通用するバイオベース度の指標となる。また、バイオマスプラスチック製品にバイオマス原料やバイオマスプラスチックがどの程度使用されているのかを規格化された計算法で明示できるため、バイオプラスチック製品の信頼性の向上が期待される。
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図1 バイオマスプラスチックの識別・判別法 |
環境負荷低減や、枯渇性資源である石油の消費量削減のために、石油由来ではなくバイオマス由来のプラスチック材料の開発が進んでいる。バイオマス由来の製品をバイオベース製品、バイオマス由来のプラスチックをバイオマスプラスチックと言い、バイオマスプラスチックの例としては、全部がバイオマス由来のポリ乳酸、微生物ポリエステル、ポリアミド-11、バイオポリエチレン、一部バイオマス由来のバイオポリエチレンテレフタレートなどがある。バイオマスプラスチックは、外観からは石油由来かバイオマス由来かがわからないため、識別・判別方法が必要であった(図1)。JBPAは、バイオマス由来であるバイオマスプラスチックの使用促進のために、バイオマスプラ識別表示制度を運営している(図2)。これは、バイオマスプラマークを表示することにより、その製品がバイオマス由来であることを示す制度である。この制度に用いるバイオマスプラスチック度の計算方法を世界市場で共通的に使用できるように国際規格化を計画した。
産総研とJBPAは、平成19年度から24年度まで共同研究によりバイオマスプラスチック度の計算方法を検討した。産総研は平成22年4月に、ISO専門委員会TC61(プラスチック)に「プラスチック製品のバイオベース度の求め方」の規格を提案した。JBPAは平成24年度から経済産業省委託事業の「バイオマスプラスチック製品中のバイオ由来度の測定方法に関する国際標準化」に関わる予算により、産総研とともに国際審議を行った。その結果、ISO 16620シリーズが発行されることになった。
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図2 JBPAによる「バイオマスプラ」識別表示制度 |
プラスチック製品中のバイオマス原料の使用率の計算方法は複数有り、方法によって得られる数値が異なる。今回発行されたISO規格の番号(表)を明示することにより、世界市場に通用するバイオベース度の指標となる。JBPAが運営するバイオマスプラ識別表示制度に用いられている「バイオマスプラスチック度」もISO規格のパート3に採用された。パート2に規格化された「バイオベース炭素含有率」は米国農務省のバイオベース製品優先調達プログラムなどに用いられている指標である。
今回の国際標準化により、消費者や流通業者などにバイオマスプラスチック製品に、どの程度バイオマス原料やバイオマスプラスチックが使用されているのかを規格化された計算法で明示できるようになり、バイオマスプラスチック製品の信頼性の向上が期待される。また、これらの計算方法を使った認証制度がより活用されることで、バイオマスプラスチック製品の市場導入促進が期待される。
表 ISO 16620シリーズ |
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産総研とJBPAでは、プラスチック製品中のバイオマスプラスチック、天然高分子、バイオベース化成品の質量割合の計算方法の規格もISO 16620シリーズのパート4として提案・国際審議中であり、これらのバイオベース度の使用方法としての、表示・報告方法のISO国際規格化もパート5として進めている。また、日本企業がこれらの国際規格を使いやすくするために、英文で記載されたISO国際規格を日本語訳した日本工業規格(JIS)の制定も行う予定である。
日本バイオプラスチック協会(Japan BioPlastics Association, JBPA)
http://www.jbpaweb.net/