株式会社 SHINDO【代表取締役 新道 忠志】(以下「SHINDO」という)は、福井県工業技術センター【所長 勝木 一雄】(以下「福井県」という)、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)集積マイクロシステム研究センター【研究センター長 前田 龍太郎】伊藤 寿浩 副研究センター長、高松 誠一 研究員と共同で、電子テキスタイル製造技術を応用して、LEDの点灯により冬山や夜間でも視認性の高いLEDスポーツウエアを開発した。
今回、ひも状の織物であるリボン上にLEDを配線し、服に取り付けられるよう樹脂加工を行う電子テキスタイル製造技術を確立することで、薄くフレキシブルなLEDリボンを取り付けたスポーツウエアの開発に至った。このLEDリボンは衣服類に簡単に照明機能を付けられるため、スポーツ以外にも交通整理などさまざまな夜間作業の安全性向上につながるものと期待される。なお、この技術の詳細は、2014年1月26日(日)~29日(水)にドイツ ミュンヘンで開催されるISPO MUNICH 2014で発表され、SHINDOは2014年春からLEDリボンのサンプル出荷を行う予定である。
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冬山や夜間でも視認性の高いLEDスポーツウエア
(左)今回開発したスポーツウエア (右)背面の模式図 |
近年、スポーツウエア分野では、冬山や夜間での視認性を向上させるための照明機能への関心が高まっている。しかし、通常用いられる反射板では、反射するための外部からの光がないと機能せず、また、従来のLEDリボンは曲げによる断線を防ぐためにプラスチックの硬い基板上にLEDが配線されており、加えて硬い透明樹脂で保護されており、非常に硬くて重い。そのため、着用時に違和感があるという問題があった。
一方、電子デバイス、特にMEMS分野では硬い基板上にセンサーやLEDなどを配線する技術はあったが、衣服などに取り付けるには柔らかい布などの基板上へ配線する必要があり、これまでそのような技術はなかった。そのため、スポーツウエア分野で用いるには、リボンのような柔らかい布の上にLEDを配線する技術を開発する必要があった。
今回、リボン上にLEDを配線する技術と、衣服に取り付けるための熱融着性と防水性をもつ材料による樹脂加工技術からなる電子テキスタイル製造技術を開発した。この開発では、福井県がリボンに配線を織り込む技術を、産総研がリボン上の配線にLEDをハンダ付けする装置を、SHINDOがリボンを衣服に取り付けるための樹脂加工技術を担当した。図1にLEDリボンを製造する過程と産総研が開発したリボン上の配線にLEDをハンダ付けする装置を示す。従来は、配線が形成されているプリント基板上にLEDを実装する装置はあったが、非常に柔らかいリボン上の配線にLEDをハンダ付けする装置はなかった。今回、両側でリボンを送り、位置決めしながら、LEDをハンダ付けする装置を開発し、LEDリボンを製造できるようにした。
開発したLEDが点灯するスポーツウエアは、電子テキスタイル製造技術によるLEDリボンを使用していることが特徴である。LEDリボンは薄層で軽量かつフレキシブルな照明材料なので、ウエア着用時も違和感がなく、また、LEDリボンの取り付けは熱融着によるため縫い目がなく、ウエアの高い防水性および防寒(保温)性を維持できる。
なお、本研究開発は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の「BEANSプロジェクト(平成20~24年度)」において取得した知的財産を活用したものである。
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図1 LEDリボン製造過程とリボンにLEDをハンダ付けする装置 |
SHINDOは2014年春からLEDリボンのサンプル出荷を行う予定である。また、現在は電源としてボタン電池を使用しているが、用途などに応じて充電式バッテリーもそろえる予定である。産総研は、今回のLED以外に温度や湿度などのセンサーをリボン上にハンダ付けする技術を開発し、さまざまな機能を持つリボンの実現を目指す。