NEDOと(株)SIJテクノロジ、(株)イオックス、日本特殊陶業(株)、(地独)大阪市立工業研究所、(独)産業技術総合研究所は、インクジェット方式による銅配線で世界最小線幅となる3μmの超微細配線形成技術を開発しました。今回開発した技術はインクと基板の十分な密着力によりICパッケージ基板に求められる信頼性を確保しつつ、低抵抗で微細な銅配線を形成でき、スマートフォンやICタグに利用される次世代IC基板や超小型プリント基板などへ展開が可能です。今後さらにこの技術を発展させ高精細な3次元実装への応用を目指します。
*NEDOプロジェクト「ナノ粒子と極低酸素技術による超微細銅配線樹脂基板のインクジェット形成技術の研究」(期間:2010年10月~2013年9月、事業総額:1.3億円)の成果によるもの
*上記成果は以下の期間一般公開予定
2013年10月31日~11月1日に産総研つくばセンターにて開催される産総研オープンラボ
2014年1月29日~1月31日に東京ビッグサイトにて開催されるnanotech 2014 NEDOブース
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図1:超微細インクジェット描画装置と描画例 |
現在、市場が大きく拡大しているスマートフォンに用いられるLSIでは高機能化が著しい速度で進んでいます。このようなLSIではICチップの小型化とICチップ端子数の増加が顕著であり、ICパッケージ用配線パターン描画のさらなる微細化が望まれています。ところが、従来のICパッケージ用配線パターン作製工程には、フォトリソグラフィー装置が用いられており、微細なパターン描画の限界を迎えています。本プロジェクトで研究された超微細インクジェット技術は、従来のICパッケージ基板用フォトリソグラフィー装置では実現が難しいマイクロメートルオーダーの配線パターン作製が可能であり、また従来のフォトリソグラフィーで発生する有機廃液、エッチング液廃液を大幅に削減できることから、環境にも非常にやさしい技術です。本技術は高機能化するスマートフォン市場を支え、また環境に配慮できる技術として注目されています。
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図2:ICパッケージ |
図3:微細配線 |
今回の成果として特に以下の3点があげられます。
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ナノ粒子製造技術により、インクジェットの吐出性に優れた銅ナノ粒子インクを開発
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超微細インクジェット技術により、デジタルデータに基づき配線幅3μmの銅配線を直接描画
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極低酸素還元技術を進化させ、銅の配線抵抗率4μΩ・cmを達成
ICパッケージ基板に求められる信頼性を達成するために、インクと基板との十分な密着力を実現しつつ、インクジェット方式に適合する銅ナノ粒子インクを開発しました。その銅ナノ粒子インクを用い、インクジェット適合性評価や吐出条件の最適化などにより、超微細インクジェット技術で線幅3μm、ピッチ6μmのラインをエポキシ基板上に直接形成することに成功しました(図4、5)。本手法では、版を作ることなく、パソコン上のデジタルデータのみに基づいて、微細配線が形成できます。銅インクで必須となる還元焼成については、極低酸素還元技術を進化させた新プロセスの開発に成功し、配線の抵抗率を4μΩ・cmまで低減させることができました。インクジェット技術による銅配線形成において、線幅3μmかつ配線抵抗率4μΩ・cmは、これまでで最も優れた値です。
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図4:本技術による成果(線幅3μm、ピッチ6μm) |
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図5:配線パターンサンプル(実物写真) |
本プロジェクトでは各要素技術の有効性、実用化に向けた問題点の洗い出しおよび方向性の検証を行いました。今回得られた成果を基に、今後は実用化に向けた開発フェーズに移行し、製品化を目指します。本成果は次世代ICパッケージ基板だけでなく、スマートフォンを初めとする小型情報通信端末向けの超小型プリント基板、ICタグなどのRFID用アンテナなどの新規産業へ展開していく予定です。